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オズマ戦記  作者: 葱龍
七章 転生者大戦 最終篇
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第百二話「蒼き海原に誓う」

これが正真正銘、平成最後の更新となります。

令和になっても異世界から来た勇者の何でも屋をよろしくお願いします。

夜明けと共に港を発った軍艦「オホーツク」内部の渡り廊下の中にコウの姿はあった。

話によれば、目的地であるデストラまで丸一日かかるらしい。

ここに来てモアザ・バルバと言う協力者がいなくなった事はコウ達にもルトヴァーニャにとっても痛手であった。

空間転移の魔法があればこの様な人員輸送の為の軍艦を用意する必要もないし

もっと時間を削減する事も出来た。

それに転移の魔法を使えば奇襲も容易となり作戦の成功率も大幅に上がる。

考えれば考えるほど失われた利点の事ばかり浮かんでしまう。


「クッ…モアザさんさえいればもっと…」


「そうやって自分を責めるの、カッコいいと思ってる?」


一瞬すれ違った男にそう言われ、コウは立ち止まって振り返る。

ミハイルだった。


「お前確か……」


「ミハイル・デルタクロス。あんた、モアザ・バルバが死んだのは自分の責任…だと思ってるだろ」


「それは…そうだろ。俺達がもっと早く駆けつけて、もっと上手く戦えてれば…」


「違うな。あの人は自分がやれる事を精一杯やって死んだ。

 誰の責任でもない。それを理解した上でもなお自分を責めるつもりなら…

 それは死んだモアザ・バルバに対する冒涜だ」


「…解ったよ。もうこの事に関してあーだこーだ言うのは…やめる」


「……リゼル王女を助けに行くのか?」


「だけじゃない。友人も…マサツグも助けないと」


「2人助けなきゃならないってのは手間がかかるな。」


「だが、やらなきゃならない」


「たとえその2人がお前の敵となり、戦いが避けられなくてもか?」


「…随分と棘のある物言いだな。そういうアンタは、そんな状況に立たされても戦えるのか?」


「戦う。俺はルトヴァーニャを護る騎士団だ。私情を挟むつもりは無いしそう言った迷いはとうに捨ててきた」


ハッキリとした返答にコウは思わず返す言葉を失った。

迷いが無い。この男、ミハイルはやるべきと判断したら一切の躊躇もなくそれを実行する覚悟と行動力がある。

そして、ミハイルが強者たる所以はその覚悟と行動力の二点にある。


「それと、質問には質問で返すべきではないだろ」


「…俺には、リゼルとマサツグが心の底から俺を敵視している様には見えない。

 リゼルは操られている訳だし、マサツグにしたって何か事情があるはずだ。

 俺は信じる。リゼルとマサツグにはまだ良心が残っている事を。」


「トンだお人よしだな。その良心信じ込んだ挙句に真正面からバッサリ。

 名誉の二階級特進を果たし土ン中行きがオチだ」


相も変わらず棘のある言い方。

たとえ正論だったとしてもコウはこの無神経で物事をハッキリと言いすぎるミハイルと言う男がどうにも好きになれなかった。

だから、


「誰も信用せずただただ機械的に立ちはだかる相手を切り捨てていくだけのアンタに比べればまだマシさ」


返す言葉も、攻撃的になる。


「…」


「血も涙もとっくに捨ててきたアンタの事だ。

 どうせ砂漠で仲間に死なれた時も、上っ面だけ哀しんでるフリして誤魔化しただけ―」


瞬間、コウの頬を重たい衝撃が走った。

殴られたのだ。ミハイルに。


「お前に何が解る…。部下が嬲り殺されるのを何もできず黙って見ているだけしかできなかった俺の何が解る…!

 失った事のないお前に何が解る!!」


「失った者なら俺にだって…」


「リゼル姫とマサツグとかの事を言っているのならそれは違う!!お前がさっきそう言ってただろうが!!

だが俺の場合は違う!!俺の友だった女は騎士団を、ルトヴァーニャを一方的に見限りアルバスの軍門に下ったんだぞ!!

操られたからじゃない!奴は本心から裏切り者になる事を選んだんだ!!」


それがミハイルの本心である事は疑う余地もなかった。

コウが初めて垣間見る、感情的になったミハイルの姿がそこにはあった。


「…お前の事、ロボット人間かと思っていたが…そうやって怒ったりする事も出来るんだな。

 冷たい事を言ってすまなかった」


「解れば良い。俺もそれ以上言うつもりはない。

 夜が明けたら、作戦が始まり俺もお前も戦地の只中だ。

 今日俺に言った事、自分で言った以上成し遂げる瞬間まで貫き通せ。

 不言実行にするのは、他でもないお前自身を裏切るだけだからな」


そう言うとミハイルは軽く会釈した後自室へと戻っていった。

窓の外を見るともう陽は沈み夜になっている。

ツバキ達ももう明日に備え眠っているだろうし無理矢理起こしたところで話す事は特にない。

激励だったら作戦開始直前でも十分間に合うだろう。

そう自分に言い聞かせコウは自室に戻り、ベッドに横になった。


考える事は多々あったが、疲れていたのか意外とぐっすり眠る事が出来た。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



夜が明けた。

雲一つない青空、矢尻状に隊列を組みながら海原を進むルトヴァーニャの艦隊の中にオホーツクの姿もあった。

戦車四台を積んでもなお余裕ができるほど広いオホーツクの格納庫に兵士たちは集められ、その中にコウ達リゼル騎士団の姿もあった。


規則正しく整列する兵士たちの前に立ったカイルは兵士一人一人を一瞥しながら、


「我々ルトヴァーニャとデストラの戦いは短いながらも熾烈を極めた。

 ある者は友を、またある者は愛する人を、そしてまたある者は忠誠を誓った主君を失った…。

 悲しい事だ。だが、それもこの作戦で全て終わる。

 たとえ作戦の成否がどうなろうと、これがこの戦争の最終作戦となるであろう。

 そして勇者コウ!!」


何の前置きもなくカイルが指名してきた為コウはいささか動揺した。


「え…!?俺ですか?」


「この作戦の主力はお前達リゼル騎士団。その代表にして勇者たるお前が、兵士達を鼓舞してやるんだ」


そう促されるがままコウは兵士たちの前に立たされる。


参ったな。

人前に立って主張するなんて一度も経験無いのに。

そんなコウの不平不満など本人以外には関係のない話であった。

やる。それ以外の選択肢は、すでに消去されている…!

覚悟を決めるとコウは一度咳払いをした後、


「…えと、もうご存知の方もいるとは思いますが初めまして。俺は小妻コウ。一応勇者…って呼ばれてます。

 今回の作戦、概要書にはデストラ現大統領アルバス・ロアの身柄確保、不可能な場合は抹殺が主目的となっていますが、

 結論から言わせてください。アルバスの事は俺に任せて貰えませんか」


どよめく兵士達。

当然か。彼らにしてみればおいしい所を勇者に持っていかせ

自分達はその引き立て役に甘んじろと言っているように感じられなくもないのだから。

なのでコウは兵士たちをなだめる意味も込めて話を続けた。


「不満を感じるのは、解ります。引き立て役やかませ犬なんて、誰も望んでやりたくはない…。

 けど俺がアルバスの事を任せろと言ったのはそう言った意味からではありません。

 一度奴と戦った事があるからこそ言います。アルバスは強い。おそらくはこの場にいる誰よりも……。

 無策で挑めば全滅は必至。しかもデストラには単体で一個師団に匹敵する力を有する戦士『転生者』が

 最低でも4、5人…」


再びどよめく兵士達。

だがコウは気に留める事無く続けた。


「戦力差を鑑みれば、その様な反応をするのも無理はないでしょう…。

 しかし彼らは青い血を流し、無数の首を持ち、聞いただけで人間を狂わせる雄叫びをあげる化け物ではありません。

 俺や、貴方達と同じ様に赤い血の流れる人間なんです。

 血が流れる限り戦いようはあるのです。」


「相手も人間‥‥?」「戦いようはあるって言われても」

「要は倒せない相手じゃないって事か!」


四方から賛否両論の声が飛び交う。

その中で、一人の兵士が挙手しコウに質問を投げかけてきた。


「戦いようがあるのなら、アルバス・ロアも1人でどうにかしようとせず我々と共に対処すべきではないでしょうか?」


「…いえ。彼は数ある転生者の中でも特別、特異な存在『勇者』であり、

 並の転生者と同じ物差しで実力を測る事は出来ません。

 もし勇者たるアルバスを倒せる者がいるのなら……いや、訂正しましょう。

 己が野望の為数多の人々を利用し、傷つけるアルバスはもはや勇者ではない…。

 もしこの世界に魔王と言う概念が存在するのなら…

 それは紛れもなくアルバス・ロアの事!!

 そして魔王と化したアルバスを討つのは、勇者の二つ名を与えられた俺に課せられた使命!

 転生者の犯した罪は、転生者が討ちとる事でしか償えない!!

 戦って死ねとは言わない、指くわえて見てろともいわない…!

 あえて一言言うならば、アルバスを討ち!世界に平和を勝ち取る為!!みんなの命と力を俺達リゼル騎士団に貸していただきたい!!」


湧き上がる軍衆、もとい群衆。

その歓声にコウは確かな手ごたえを感じていた。

この人達とならこの戦いを、アルバスとの因縁を終わらせられる。いや終わらせてみせる。

そして…必ずやリゼルとマサツグを取り戻す。

コウは改めて己の胸に誓うのだった。


時刻は陽の牙狼の刻(午前11時)。

最後の決戦の舞台たるデストラの大地は既に目と鼻の先まで迫っていた。

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