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オズマ戦記  作者: 葱龍
七章 転生者大戦 最終篇
110/168

第百一話「堕ちたる賢者、覚悟の勇者」

今回か、次回のどちらかが平成最後の投降になると思います。

令和になっても本作をどうぞよろしくお願いいたします!

力なく崩れ落ちるリヴィアに慌てた様子で駆け寄るマサツグ。

彼女の背が地に着くより早く抱きかかえるが、リヴィアの四肢は力無く投げ出され、

その表情からも徐々に生気が抜け出ているのが解った。


「リヴィア!すぐ傷の手当てを!!」


「無理です‥‥もう…ダメなんです……私…」


「馬鹿!諦めんな!!諦めたらそこで…」


「いえ、解るんです…。もう助からないって……。私の命も、ここで終わりなんだっ‥‥ゴホッゴホッ!!」


「急所に当て致死量と言えるだけ出血したと言うのによく喋る」


死の間際、マサツグに何かを言い遺そうとするリヴィアをアルバスは煽ったが、

リヴィアは構わず続け、マサツグもアルバスの嘲笑を無視した。


「マサツグ様、貴方は勇者では無いのかもしれません。しかし…私は見ました……。

 貴方が勇者と共に…世界の命運をかけた戦いに……挑む…未来…」


「未来視の…力……」


リヴィアには人の未来を見通す力があった。

見通す未来は集中すればするほど遠くまで見通す事が出来るが、

未来視を行うにはかなり意識を集中させる必要があり、

戦闘で相手の動きを予測すると言った使い方が出来ないと言う問題点もあった。


アルバスはかつて、マサツグに命じ自身の未来を見通させたのだが、

その未来が余程気に入らない物だったのか酷く憤慨し、二度と未来視を命じる事は無かった。


彼女が今言った事が本当だとして、マサツグと共に戦う勇者がアルバスだとすれば、

彼女がかつてアルバスに見た未来と食い違う。

となれば考えられるのは…あああ!


「俺が共に戦うべきは…アルバスじゃなくてコウの方‥‥‥!

 俺が戦うべきは、コウじゃなかった…!なのに…俺は‥‥‥‥!!」


マサツグの思考を後悔の念が支配しようとしていた。

もしかしたらコウと自分は本当に親友で、本来なら戦うのではなく力を合わせるべき関係だったのでは?

なのに、戦ってしまった。

悔恨溢れてかマサツグの頬を涙が伝う。

リヴィアはマサツグの涙を拭い、


「泣かないで…下さい。もう一人の勇者は……きっと、貴方を許してくれる…はず。

 マサツグ様、生きて…ください……」


そう言い遺すと、マサツグの頬にあてられていたリヴィアの手が力無く、パタリと地に落ちる。

リヴィアは、そのままピクリとも動かなくなった。


「やっと死んだか。さもお涙頂戴的な雰囲気で死んでるが、

 彼女の願いが叶う事は決してない。何故なら直江正嗣は…もうすぐ死ぬ」


マサツグはリヴィアの亡骸を床にそっと寝かせると静かに立ち上がり、アルバスを睨みつける。


「なんだその顔は?まさか君にも残っているとは言うまいな?怒りや、哀しみと言った感情が」


「あぁ。俺自身も驚いている。俺がまだ、他人の死を哀しむ事が出来る事に。

 そして、この感情はもう捨てない。俺はこの怒りと哀しみを胸に戦う…!」


言ってマサツグは右手を大きく払い、火炎を巻き起こす。


「フン、何をするかと思えば馬鹿の一つ覚えの火炎魔法か。

 怒りと悲しみを胸にと言っておきながら、いざ見せつけるのがそんな物とは嘗められたもの…」


瞬間、マサツグは火炎の勢いも止まぬ内に火球、電撃、氷塊、旋風、土塊を同時に放った。

標的は、全てアルバス!


「ッ!!?」


アルバスは驚きながらもマサツグの魔法攻撃を全て打ち払う。


「一瞬の内に五属性以上の魔法攻撃…貴様まさか!賢者の力に目覚めたと言うのか…!?」


「賢者がどうとかなんて今はどうだって良い。お前をこの手で倒せるならな」


マサツグはこう言っているが、何も知らされていない読者諸君の為賢者の力について説明しなければならない。


賢者も勇者同様転生者の中から稀に現れる存在で、

純粋な力こそ勇者に及ばないものの知性と魔力においては右に出る者は無く、

アーサレナで生み出された魔法全てを知り、扱う事が出来ると言われている。

無詠唱での魔法の発動はもちろん、三つ以上の魔法を同時に発動する事も賢者にとっては容易く、

一個人で戦術兵器クラスの戦闘力を有するという点では勇者と同等と言っても過言ではない。


激しい魔法攻撃の応酬に大統領府が耐え切れなくなり、崩壊を始める。

マサツグたちもアルバスも崩れる足場を上手く跳び回り落下を防いでいくが、

それでもなおマサツグの猛攻は止まらず、アルバスもマサツグの攻撃を絶妙にいなしていく。


「やはり、その力使いこなせていない様だな」


「なに?」


「功を焦るあまり相手の動きを見ずひたすら弾幕を張るばかり。

 多数相手にするならともかく一人相手にしたうえでこれではな」


「ッ!黙れ!!」


激昂しながら跳躍し、アルバスに肉薄するマサツグ。

だが!


「やはり使いこなせてないし、何より詰めが甘い。

 君の攻撃を今までただの一度も受けていないのは何故だと思う?

 私は何の為に魔剣を呼び寄せた?まさかただ単に、あの魚人を斬る為だけに魔剣を使ったとは思うまい」


「まさか…」


マサツグの行く手を遮るように突き立てられる魔剣の刃。

これがマサツグの身体を切り裂くための物でない事はすぐに理解できた。


「この魔剣も、聖剣と同様魔法を吸収する性質を持っている。

 しかし聖剣とは違い吸収する魔力に制限と言う物が存在しない。

 君が発動した魔法は計7421。うち魔剣が吸収したのは6784。どういう意味か解るな?」


マサツグは改めて理解した。

アルバスは戦闘能力がどうとかどの才能に秀でているとかそういう次元ではなく、

全ての能力が突出している、いささか稚拙な表現ではあるが強いのだと。


瞬間、マサツグの身体は閃光と共に空高く弾き飛ばされ、数刻遅れて地面に激突した。



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アルバスは両手を広げ地面に横たわるマサツグにゆっくりと近づくと、

その髪を乱暴につかみ上げ、


「君が賢者に覚醒したのは少し驚かされたが、覚醒したての力で私を倒せると思ったのは甘かったな。

 私をクドーの様な粋がっているだけの阿呆と同程度とでも考えていたか?」


「グッ…!」


「本来なら君を逆賊として大衆の面前で処刑せねばならないのだろうがな…」


「殺すなら…一思いに今殺したらどうなんだ…ッ!!」


「だが君は世にも珍しいものを見せてくれた。デストラは多くの転生者を要してはいるが…

 賢者に覚醒したのは君が初めてだ。ただ死刑台に連れていくのでは面白くない。

 君には最高のステージに立って死んでもらう事にしよう」



そう言うとアルバスはマサツグを突き放し、左手をマサツグの額に押し当て何かを唱え始めた。

詠唱が進むにつれ、マサツグの双眼から徐々に輝きが失われていく。

アルバスの詠唱が終わると、マサツグの眼は完全に光を失った。


「…お前の名はなんだ?」


「私は、直江正嗣、です」


抑揚なく答えるマサツグ。


「お前の主は誰だ?」


「それは、アルバス・ロア様、です」


「お前が倒すべき相手は誰だ?」


「勇者、オヅマコウ、です」


「ならばお前に命ずる…。小妻コウを殺せ。お前の命に代えてでも」


冷酷なアルバスの命令に躊躇する素振りすら見せずに頷くマサツグ。

その姿を目の当たりにしたリゼルは無意識のうちに涙を流していた。


それはリゼルに残されていた本能が、はるか彼方のコウに訴えかけていたのかもしれない。

助けて、と…。



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助けて、と言うリゼルの声が聞こえた気がしてコウはふと目が覚めた。

幻聴にしては妙に生々しい。

辺りは既に明るく、窓の外も子供たちのはしゃぐ声などで賑わいを見せ始めている。


コウはベッドから起き上がり、窓を開ける。

すると何でも屋オズマの前に男がいる事に気が付いた。

ミヤモトだ。


「…何の用だ?」


「せっかく会いに来てやったのに何の用だは無いだろ。

 これ、必要なんだろ?」


そう言ってミヤモトは懐から腕輪の様な物を、いや腕輪そのものを取り出した。

リゼルからプレゼントされ、飲み比べで負けミヤモトの手に渡った、あの腕輪だ。


ミヤモトが腕輪をコウへ向け投げ、コウがそれを掴み取る。


「話は聞いた!大事なモン奪い取るような真似してホントにすまないと思ってる!」


「いや…あれは俺が悪い訳でもあるし。…話聞いたんなら、俺がこれから何をしに行くかも知ってるんだろ?」


「ああ。今回の作戦、俺も参加する」


予想の斜め上を行く言葉が飛び出た。

コウは慌てて身支度を整えるとすぐに階段を降り外に出てミヤモトの前まで駆け寄る。


「本気で言ってるのか!?」


「冗談で命賭けられるかよ」


「危険だ!俺が行って帰ってくるまで家の中にいろ!!」


「俺の役割は後方支援だから何も心配…」


「デストラの攻撃は無差別だ!前衛だろうが後方支援だろうが安全でいられる保証はない!!」


「そんな事は解ってる!!」


「!?……」


「死ぬかもしれないって事は解ってる…。俺だって死ぬのは怖い。

 けどよ、それ以上にダチが必死こいて世界の為に戦ってると言うのに

 何もできずにただ見てるだけなのはもっと耐えられないんだ………。

 俺だって転生者だ。何か出来る筈なんだ…。

 炭酸売るだけでなく、もっと大勢の命を守る事が…」


コウはミヤモトの肩を軽く叩くと、


「…無理して役に立つ必要はないんだぞ」


「コウ…」


「お前の気持ちは良く解った。だがお前は勇者どころかまともに戦った事があるか?」


「…荷馬車を襲ってきたシルバーベアーを追い払った事なら」


「その程度じゃデストラの兵士にも転生者にも後れを取るのは確実だ。」


「知ってる。向こうじゃ俺はエース言われてたが、卓球部じゃ限界がある事くらいは」


「だからこそ!だからこそ言わせてくれ!!敵を倒して武勲を上げる事より生き残る事を第一に考えろ。

 人の命は、漫画の登場人物ほど軽くは無い。死んだらそこでお終いなんだぞ………」


「………」


「マサツグが俺の事忘れてて、しかも俺の敵になった時、凄くショックだった……。

 ごっこ遊びとかでなく、友達と戦う羽目になったのが…辛かった」


「…お前最近闇の勇者になったって聞いたが、マサツグの事どうしたいんだ?」


「…解らない。あいつの事、憎いのか憎くないのかさえも…」


「目ェ覚まさせてやりゃ良いんじゃないか」


「え…」


「相手の事をどう思っているのか解らない、けど何もしないと言う選択をする訳にもいかないんだろ?

 だったら、命奪うのでも話合うのでもなく、バシッと一発、キツいのぶちかましてやりゃあいい。

 ショックでお前の事思い出すかもしんないだろ?」


「んな乱暴な…。話し合いは最初から選択肢に入らないのかよ」


「話し合いに応じてくんない可能性だってあるだろ」


「そうかもしんないが…」


「それに王女様だって待ってるだろうし、立ち止まったりぐずついたりしてる暇はないだろ」


言いたい事を一通り言い終えたのか、ミヤモトは右の拳をコウの胸に軽く打ちつけ、


「2人を救い、世界も救う…。これが出来るのはお前だけだ。

 そして俺はお前が世界を救うのを全力で手伝ってやる。」


「ミヤモト…生きて、お互い生きてここに戻ってこような」


そう言ってコウはミヤモトと固い握手を交わし微笑んだ。

覚悟は決まった。後は使命を果たすだけだ。

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