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オズマ戦記  作者: 葱龍
七章 転生者大戦 最終篇
108/168

第九十九話「デストラ動乱」

19/3/24追記

PV数が20000を突破しました!

マジ感謝!!

田島京蔵は死んだ。

勇者コウの手によって倒されたのだ。


「…ッハァ……ッ!ハァ…!ハァ・・・・・ッッ!?」


命を奪うのはこれが初めてではないにしろ、

京蔵の凄惨な死にざまを目の当たりにしコウは思わず嘔吐する。

初めてではないし、相手に明白な殺意があった。

殺らなければ確実にコウは彼の持っていた日本刀で頭を斬られ命を落としていただろう…。

だが初めてで無かったとしても慣れる事はできない。

命を奪ったと言う自覚と罪悪感だけはどうしても拭えないし、拭ってはいけないとコウは考える。

もし慣れてしまったらそれはもう勇者でも何でもない、ただの鬼になると言う事なのだから。


「…やったんですか?」


そう問いかけたきたのはシドだった。

肩を大きく上下させて荒い息をしている様子が京蔵との戦いの激しさを物語っている。

コウは横たわる京蔵の亡骸を一瞥し、


「これで生きてたら、それこそ化け物だよ。」


それは、生きているはずはないと言う核心であると同時に

彼が心をゆがめてしまっただけの人間であって欲しいという願いでもあった。


「終わったのか…?」


撃たれた肩を抑えながら族長が再びコウ達の前に現れた。

様子から察するに致命傷は避けられたらしい。


「あぁ…。アンタこそ怪我の方は?」


「少し痛むが、問題な……ん?」


族長が女エルマに、レミーに気が付くと、レミーも族長の方を振り向いた。


「…!?」


「…レミー。レミーか?」


「お…父様……?」


今のやり取りが全てを物語っていた。

レミーは族長の娘で、何らかの理由でエルマの里を離れ、

細かな経緯は不明だが途中正嗣と出会い彼に同行していた。

そして、


「…今更何をしに戻ってきた?」


2人は喧嘩別れして以来会っていないらしい。

族長は偉く憤慨した様子だ。


「そんなの…私が何処に行こうと勝手でしょう?」


「何を!?それが親に対する態度か!」


「……私の目的は果たした。」


ただ一言、そう言い残すとレミーはその場から走り去った。

速い。まるで風のような速さ。コウ達が追いかけようと考えるより早くその場からいなくなってしまった。


「…行っちまった」


かと思いきや、今度は女王の近衛に回っていた兵士がコウ達の下へ駆けつけてきた。

殆どレミーと入れ替わる形になる。


「た…大変です!!」


息を荒げ、肩を大きく上下させている様子から事態の深刻さは聞く以上に理解できた。

すぐにでも話を伺う必要がある様だ。


「どうした?」


「先ほど…ゼェ、ゼェ…報告が……!

 ル、ルプシカが………無血開城されたと…………!!!!」


「…何だってぇぇぇ!!!?」


予想を大きく覆す展開だった。

これから攻略、奪還しようとしていた王都ルプシカが、

まさかこちらが赴く前に明け渡される事になるとは。


「よ、よかったじゃない!戦う事無く奪われた物を取り返せるなんて」


ツバキは周囲を励ますつもりで言ったのだろうが、その意図とは裏腹に皆浮かない顔をしていた。


「…悪いですけど、そうも言ってられません。」


「ああ。今このタイミングで、それもつい最近制圧したばかりの拠点を

 こうもあっさりと手放すのはあまりに不自然だ。」


「それって…」


「ああ。そうしなきゃならないだけの事態がデストラで起こった。

 そしてこれは対抗する側である俺たちにとって、千載一遇のチャンス。」


「それってつまり…!」


「一気にデストラへ攻め込む。そして…全てにケリをつける!!」


「…勇ましい限りですが、それは一晩休んでからでも遅くはないでしょう?」


その声にコウが振り返る。

女王だった。


「女王…」


「確かにデストラの動向は気になりますが、

 事を急ぎすぎては元も子もありません。

 ここは一度ルプシカに戻り、英気を養ってからデストラ攻略の為の最終作戦を練りましょう

 それとエルマの族長さま」


女王は一度族長の方へ向き直ると、


「突然の訪問、大変失礼致しました。

 本来なら一国を奪回する為の協力を仰ぐ目的で参ったのに、

 まさかこの様な事態になるとは思わなくて………」


「いえ、あなた方が来なくてもいつかこの里は見つかり、

 あの男の様な悪しき者によって里は荒らされ多くの犠牲が生まれたかも知れません…。」


あの男、と言うのはおそらく田島京蔵の事だろう。

族長は右手を差し出すと、


「我々に協力できる事であれば何でもいたしましょう。」


女王は差し出された右手を握り返し、微笑みながら


「ご協力、感謝いたします」


固い握手を結ぶ2人。

それは人とエルマ、二つの種族が互いのわだかまりを捨て

新しい一歩を踏み出し始めた事を意味していた。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



あちらこちらで爆発音を上げながら吹き上がる黒煙、止む気配を見せない喧噪、

そこかしこに横たわる人々の死骸。

デストラは今、混迷の只中にあった。


「我等デストラに反旗を翻す逆賊どもに死を!!」


「今こそ諸悪の根源アルバスを討ち、デストラに真の自由をもたらすのだ!!」



きっかけはルトヴァーニャ攻略後、ミスターXを名乗る者の電波ジャックであった。

ミスターXはテレビ、ラジオなど様々な媒体を使い

国民にアルバスがマウザンディア前大統領を殺害した事、

アルバスが世界全土を掌握した場合デストラ国民をも処刑する可能性が非常に高い事、

そしてアルバスを倒さねばデストラに未来は無いと言う事を訴えた。


その結果、一部国民は瞬く間に暴徒化し、

軍内部においてもXの言葉を信じる者とそうではない者とで二分されている。

そして双方どちらの側にも自分の行動は本当に正しいのか?都合の良い様に踊らされてはいないか?と

懐疑的になっている者は少なからず存在している。

そこにいる誰しもが、迷い葛藤していた。

僅か数名を除いては…。


大統領府は執務室の巨大なガラス窓からアルバスは燃えるデストラを見下ろしていた。

その表情は怒りも悲しみも感じさせない無表情。

今起きている騒乱も想定していたのか、それともすぐに治まると楽観視しているのかは窺い知れない。


執務室の大きく重い扉が開かれる。

しかしアルバスは扉の方を振り返ろうとはしなかった。

アルバスには扉を開け入ってきた者が誰なのか、見当がついていたからだ。

今この状況下で、執務室を訪れる者は限られている。

軍の指揮官は「吉報をお待ちください」と言った以上事態が収束するまでここに来る事はまずない。

となれば考えられるのは、自分を殺しに来た者。

このクーデターの首謀者だった。


「…ミスターXと名義を偽り、国民を扇動し私を斃そうとは見上げた行動力だな」


「ただ何も知らない連中に真実を告げたまでだ。貴様が今までひた隠しにしていた真実をな」


「やれやれ。騙すのが簡単なら掌を返させるのも簡単と来たものだ。

 この国はとんだクズしかいないんだな」


「それでも、貴様に比べればまだ真っ当な方だ。

 この国の人々は、自分の利益の為だけに人を利用し続ける貴様とは違う」


「…記憶を戻してもらえないのがそんなに不服か?

 私の命を奪おうという考えに至るほどに」


「それもあるが、俺の記憶だけじゃない。

 今お前を斃さなければ、意味のない侵略、意味のない殺戮が延々と繰り返され、

 やがてこの世界は…滅びる」


「お前まさか、この世界に愛着が湧いてるわけではあるまいな?直江正嗣…。

 こんな…守る価値もない世界に…。」


「それは貴様の理屈、貴様の私怨だろう…。

 そんな者の為にこれ以上無関係な人間を殺させはしない。

 アルバス・ロア!覚悟しろ!!」


マサツグが右の拳を振りかぶりながらアルバス目掛け突進、

アルバスはそれを振り返りながら受け止めた。


「…本気で私に勝てると思っているのか?」


「勝つんじゃない…。お前は、ここで!殺す!!」



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