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オズマ戦記  作者: 葱龍
七章 転生者大戦 最終篇
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第九十八話「鮮血の決着」

京蔵が斬りかかり、コウが京蔵の斬撃を剣で受け止める。

するとどうだろう。

京蔵の身体から紫色のオーラが抜け出てコウの持つ剣に吸われていく。

吸っているのは京蔵の纏っていた怨念で、それを吸うこの剣は魔剣であると言う事を

何となくではあるがコウは理解した。


「これなら…いける!」


怨念のバリアを無効化する手段が確立され勝機が見出せた。

一つ問題があるとすれば、


『ダメ…こんなんじゃないィィィ……私が欲しいのは生き血ィィ…

 生き血を頂戴ィィィィィィ!!!』


この魔剣だ。

手にした瞬間からマトモじゃない事をのたうち回って使うこっちの神経を逆撫でしてくる。

正直言って、ウザい。

アルバス達なら平然とした態度で魔剣を使えるだろうけどきっとロクな結果にはならない。

自分に託されたのは幸か不幸か…。


『…うるっせぇぞクソ剣。溶鉱炉にブチ込まれたいか』


『…ごめんなさい』


意外とすんなり黙ってくれたのは意外だった。

とにかくこれで戦いに集中する事が出来る。


「はぁぁぁっ!!」


「つぁあぁりゃ!!」


怨念のバリアを失い無防備となった京蔵の背中と脇腹にシドが突きを、ツバキが居合切りを食らわせる。

背中から血を噴き出しながら真横に吹っ飛ぶが、京蔵は即座に身を翻し体勢を整える。


「ちぃっ…」


ここに来て初めて京蔵が舌打ちをするのをコウは確かに見た。

状況の変化に動揺している証拠だ。


「勝機などと言うものは万に一つどころか京に一つもない…さっきそう言っていたな。

 訂正してもらおうかその言葉」


「一矢報いた程度でいい気になるなよ。ワシの方が有利なことに変わりはない。そしてぇ!!」


京蔵の一喝と共に彼の全身から剣の様に紫色のオーラが伸びる。

コウとシドは紙一重でこれを避け、ツバキが刀でオーラを弾き返す。

全員直撃は免れたが攻撃速度はかなり早く、避けるのも弾くのも殆どギリギリ。

0コンマ単位で反応が遅れていたら間違いなく全員心臓を貫かれていた事だろう。


「さっきその剣で吸った怨念が全部だと思うな」


「クッ…!お前、そこまで力をつけるのにどれだけの命を奪ってきた!?」


「数えるのはとうにやめたよ。」


京蔵の残忍さ、冷酷さ、命を奪う事への躊躇のなさにコウは思わず歯噛みした。

こいつだけは、生かしてはおけない!!



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「すぐ戻れってどういう事だ!?」


「知らん!本部からそれ以上の連絡はない!!」


「今戻ればここの護りが手薄になる一方だろ!!」


デストラの占領下となったルプシカは混乱の只中にあった。

本来なら至急追撃隊を編成し、難民とそれを護衛する騎士たちへ攻撃を加える手はずとなっていたのだが、

そこへ機密回線でデストラ本国から電報が入ってきた。


電報は暗号化されていたものの解読自体にはさほど時間はかからなかったが、問題はその内容だった。

「全員本国へ帰還せよ」。

その一文は遠方の兵たちの不安と混乱を招くには十分だった。

何故戻らなくてはならないのか。領地の警護はどうするのか。

本国で何が起こったのか。

それらに関する説明が一切無く、説明を求めても本国から返信が送られる事が無かったからだ。


この混乱が不安と不信を呼び、兵士たちにはやがてある疑念が芽生え始めた。

自分たちは一体誰の為、何の為に戦っていたのか。と。

そして、その疑念が一人の兵士に行動を起こさせた。


「私はデストラの戦士ウォルス・ヴァンスタイン!貴公らの最高の指揮権を持つ者と話がしたくて参った!!」


ウォルス、と名乗った兵士はルプシカの城門を抜け平原に出ると森の方まで聞こえるほどの大声でそう叫んだ。

これに気付いたカイルが彼の下へ近寄る。


「ウォルス・ヴァンスタインと言う者は君だな?」


「はい」


「私はカイル・ドミナンテ。女王がある者たちとの交渉に向かった今私が最高責任者と言う事になるがよろしいかな?」


「構いません。私の話を聞いていただけるなら」


「話とは…」


「…私は、もう貴方がたと戦う気にはなれません。いや、そもそもデストラの為に戦う事が出来ません」


「それはつまり、我々に投降すると言う事なのか?」


「どう解釈していただいても構いません。

 もう戦わずに済むというのなら、この場で切り捨てられたとしても、私はそれを受け入れます……。」


遠慮なく斬り殺せ、と言わんばかりに片膝をつき、(こうべ)を垂れるウォルス。

だがカイルは、ウォルスを斬る事は出来なかった。


「…お前たちに、いやデストラに何があった。

 自らの命をその様に粗雑に扱おうとするのは、マトモじゃない…」


「色々と、納得のいかない事があってな。一言でまとめるなら…『疲れた』。」


疲れた、と言うウォルスにデストラの抱える闇を感じていると、カイルはある事に気が付いた。

ウォルスの真後ろに、彼に銃を向ける兵士がいる事を。


「ウォルス、敵対勢力への投降は重罪だと教わらなかったのか?」


「自国の国民を雑巾の様に酷使する今のデストラのやり方に、

 盲目的に従うのが国の為だと言うのですか?」


「今は辛く苦しいかもしれないが、いつか我々の心労が報われる日が…」


ウォルスは眉をひそめながら踵を返し、


「そのいつかっていつ来るんですか!!?

 その内国が良くなるかも知れないから黙って死ねと言われて、アンタははいそうですかと死ねるのか!!?

 だいたい、あのアルバスって男はデストラの人間じゃないと言うのに何故信用できる!!

 あいつが今まで俺たちに労いの言葉を一つでもかけてくれた事があったか!?」


「それは…!」


「止めたって無駄だ…。俺はデストラ人である事を捨てる!!

 アンタはどうなんだ!?他所から来た大統領の為に俺を殺すのか、それとも俺と同じように国を捨ててでも生きるのか、

 どっちを取るつもりだ!!?」


兵士は、何も言わず構えていた銃を下ろした。


「…勝手にしろ……!」


兵士は、涙を流していた。

ウォルスの言葉に感銘を受けたのか、それとも彼自身も苦しんでいたのかはカイルには解らない。

何より気がかりなのは彼らデストラ兵が混乱する原因が何なのかだ。

本国で何かあったらしいのだが、それを知る術もまたカイルは持ち合わせていなかった。



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コウ達と京蔵の戦いは依然京蔵が有利な状況が続いていた。

魔剣により有効打を与えられるようにはなったがそれでも京蔵の猛攻が止まる事は無く、

自らの異能を攻撃にも転用する様になり猛攻は更に激しさを増していった。


「お前たちはさも勝ち目がある様な事を言っていたが現実はこの有様!

 所詮ワシに戦いを挑んだのが間違いだったのだ!!」


腹立たしい物言いだが凡庸な言葉以外に返す言葉が見当たらないのもまた事実。

決めの一手を欠いているばかりに状況は一向に良くならないのだ。

何か一つ、一発逆転を可能とする『何か』があれば…。

糸の異能(デス・ストリングス)で拘束してもすぐにふりほどき、

スマホの異能(スマート・マジック)の命令も寄せ付けない、

ともなればもう天からの恵みに頼るしかない。


そもそも何故この世界はこの男にここまで強大な力を与えたのかが理解できない。

ネット小説の世界なら敵は皆風吹けば吹っ飛ぶ程度のクソ雑魚なのが基本ではないのか?

コウは胸中で何度も今の状況に苦言した。


刃のように鋭くとがった紫のオーラがコウの右ふくらはぎを切り裂き、コウはバランスを崩し転倒。

そこへ猟銃を投げ捨て、日本刀を逆手に構えた京蔵が迫る。


「!?」


「もらったァ!!」


「コウ!」


「コウさんっ!!!」


とそこへ、矢が三本飛来し京蔵の右肩に一本、左わき腹に二本突き刺さる。

突然の不意打ちに京蔵は思わずよろめいた。


何事かと思ってか京蔵が、いや京蔵だけでなくコウ達も辺りを見回す。

そして、コウ達の真後ろに弓を手にした女エルマが立っている事に気が付いた。

里で見たことのない顔。いや、コウ達は里以外の場所でそのエルマを見た事がある。


「お前は、確か正嗣の…」


「レミー。勇者コウ、只今より貴方を援護します」


「お前、それって…」


「勘違いなさらないで。力を貸すのは今回限り。

 次に会うときは…敵同士としてです。悪しからず」


「そうかい」


レミーが弓を構え、コウが横薙ぎに剣を振るう。

京蔵はコウの斬撃を後ろに飛んで回避し、それと同時にレミーが矢を放つ。

矢は大きく蛇行する様な軌道を描きながら京蔵の左腕に突き刺さった。


「なんだと!?」


「矢が曲がった…!?」


「これが、サイドワインダーです」


サイドワインダー。

その名を冠する技や武器はあまりに多いが、

この場合は弓矢を用いた技となる。

弓の弾き方、放つ際の力加減を調整することで

先程の様に矢が不規則な軌道を描くのだ。

その軌道がまるでヘビが蛇行しているかの様に見える事からこの名が付いたとされている。


そして、射られた京蔵の左腕が生気のない紫色へと変色していく。

放たれたのは毒矢だった!


「!?うぅぅぅ・・・・ッッ!!」


左腕から徐々に全身を伝う毒気に苦悶の表情を浮かべる京蔵。

レミーは投降を呼びかけようとするが、それよりも早く京蔵が驚くべき行動に出た!


なんと、手にしていた日本刀を自分の左腕に突き刺し、肉も骨もえぐり斬り落としたのだ!!


「ッ!!!!??自分の腕を……」


「何という執念!!」


「貴様らとは覚悟が違う…!終わりだぁぁぁ!!!」


残った右腕で日本刀を振りかぶりコウに襲い掛かる京蔵。

鬼気迫るその様にコウは思わず戦慄する。


「コウ!」


「コウさん!!」


「勇者コウ!!!」


瞬間、コウは視界の端に京蔵が捨てた猟銃を見据えると

決死の判断で前転しながら猟銃を取り、銃口を開かれた京蔵の口に押し付けた。


「お前の言うとおりだ…終わらせてやる!!」


コウは躊躇いを捨て引き金を引く。

放たれた弾丸は京蔵の喉を抉り、京蔵の真後ろに血しぶきをまき散らす。

京蔵は一瞬うめき声をあげたかと思うと、そのまま仰向けに倒れ、ピクリとも動かなくなった。


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