地下駐輪場の神隠し(4)
喚く大悟を追い返し、男は地下駐輪場へ降りて行く。
自分も行く、と言って聞かない大悟を追い返すのは大変だった。
とてもじゃないが、同行はさせられない。
男がカツン…と最初の階段を降り終える。
この先には通路と、更に小さなカーブミラー。
薄暗い先に男が歩みを進める。
カツン…カツン…
男の足音だけが響く中、通路の曲がり角にたどり着く。
その先にはまた通路が続いている。
その時だった。
ぞわり…
急な寒気が背筋を走る。
さも、自分の背後に何かがあるような気配。
お風呂場で気配を感じるような。
背中を伝う汗が腰に落ちた。
その瞬間――…
「きゃあぁぁぁ!!」
つんざくような悲鳴が響いた。
その瞬間、男が振り返る。
今、自分が来た通路をセーラー服を着た少女が走ってくる。
「ひっ…あっ!あっ!たす、助けて!」
引きつったように、声を詰まらせながら泣きながら少女が言う。
「誰も来ていないぞ」
男は少女の来た方向に目を向けたが、なにもいない。
そこには先程までと同じ薄暗い通路があった。
その言葉に少女が恐る恐る目を動かし、バッと後ろを振り返る。
そして、男に向き直ると引きつった表情で喋り出す。
「い、今…後ろに!誰かがいた!本当なのっ!」
「そいつを見たのか?」
「えっと…何か、赤い…服?を着た男…だった気が、する」
少女は自身の曖昧な言葉に、言い訳のように続ける。
「だっ、だって!」
「気付いて、直ぐに走ってきちゃったから…」
パニックを起こす少女を落ち着かせようと男が口を開く。
「大丈夫だから落ち着け」
男の言葉に少女はひゅぅひゅぅと肩で息をしながら、自分の腕で強ばったままの体身体を抱く。
「もう一度、何があったか言えるか?」
男が少女の目線に合わせて屈み尋ねる。
涙目の少女が小さく頷く。
「部活が終わって…帰ってきて、自転車を取りにここに入って…」
少女が瞳を揺らしながら、思い出しながら言葉を紡ぐ。
「階段を降り終るとこで、何か、後ろに気配?がして…」
大きく開かれた瞳から涙が溢れてくる。
「そしたら、そこに、赤い…多分、合羽を来た男が、いた」
そこまで聞いた男は、改めて通路に視線を向ける。
そして、少女に尋ねた。
「お前を外に連れていきたいが…向こうに戻るか、出口に向かうかどちらが良い?」
問われた少女はビクリと身体を震わせ、目を泳がせる
そうして、通路の奥…入り口とは反対側を指差した。




