地下駐輪場の神隠し(3)
小さな地下駐輪場の入り口。
草臥れたスーツの男が少し離れた場所の花壇に腰を下ろしている。
その横には制服をまとった警察官が立っている。
「だーかーら!こんな所で何してるんだ?」
怪訝な表情で男を見ながら詰め寄る少しふっくら体型の警察官。
それに対して、男はうんざりした表情を浮かべている。
「だからはこっちの台詞だぜ、悟大の坊っちゃん」
その台詞に、警察官が何を言ってるんだと怪訝な表情を浮かべる。
「えーっと、ほらいつも持ってる深緑の手帳あんだろ?」
確かに、ある。
前任の自分の先輩から引き継いだ手帳。
しかし、それをなぜ初対面の怪しげな男が知っているのか。
足を組み肘を膝につきながら言う男に警戒をしながらも、自分の懐から手帳を取り出す。
「お、それそれ」
「それの21ページ目見てみろ」
もしかして、自分が知らないだけで先輩の知り合いか…?と思いながらも、パラパラとめくり、該当ページを開く。
そこには、
――…
城賀根町特記事項
草臥れたスーツの男は白ヶ根神社の協力者である。
何度会っても1日で存在を忘れるため注意、深入り厳禁。
そう、黄ばんだ紙には書かれていた。
それを見て静止してあたお巡りさんが、キッと男を見る。
「協力者だなんて聞いた事もないぞ!」
――プルルッ
声を荒げる警察官の言葉を遮るように携帯の着信が鳴る。
警察官が慌てたようにそれに出た。
そうして、耳元に携帯をあて何度か頷いた後「え?」と首を傾げた。
しばらく小声でやり取りをしていくとピタリと動きが止まった。
その目が見開かれ、ギギギと音がするような動きで男の方を向く。
電話を切った警察官は顔がひきつっていた。
そんな警察官をニヤッと笑い男が見上げる。
「だろ?大悟の坊っちゃん?」
「うぐっ…す、すまない…」
目を泳がせつつも謝る辺り、誠実な人物なのだろう。
しかし、ハッと気付いたように目を向ける。
「だ、だが!何なんだ?その、悟大の坊っちゃんって…確かに、俺の名前は悟大だか…」
何故自分を知っているのか、と問う。
「書いてあっただろ?会っても忘れるんだよ、悟大の坊っちゃん」
その返答に再び訝しげな表情をする悟大。
「そんなこと…あるわけないだろ。次会っても覚えている!」
鼻息荒く言う悟大を見ながらニヤッと男は、「そうかそうか」と笑い立ち上がると悟大の方を見た。
「じゃぁ、次を楽しみにしてるよ」
「お、おう…」
男が大悟から地下駐輪場の入り口に目を向ける。
「まぁ…大悟の坊っちゃんとのお話はこんなもんで、俺は協力者としてあそこを調べに来たって訳だ」




