相談
「うん………」
いつものあの元気な顔がうなだれる。よほど辛いことでもあったのか、はたまた、迷惑ごとに巻き込まれたか。どちらにせよ、康太には関係のないことだ。康太は
「帰れ。今日は店終いだ」
「おじさん!」
「だいたい、変なことに首突っ込むからいけないんだろうが」
「…っ、」
康太の言葉に、下を向いて春希は握り拳をつくった。こいつはかなりのお人好しだ。困っている人を見ると助けてあげたくなるらしい。特に老人や怪我人がそうだ。
「そう……だよね……。ごめんなさい……」
「分かったら帰れ」
「………、ねぇ、ホントに助けてくれないの?」
「帰れと言ったら帰れ。自分のことは自分で解決しろ」
「………人でなし!野蛮人!おじさんの馬鹿!」
「あぁ馬鹿で結構だ」
「…………。おじさん。妖怪関係かもしれない、って言ったら、相談にのってくれる?」
「……っ、何?」
今度は春希の言葉に、康太が眉間にシワを寄せた。"妖怪関係"……。と言うことは、康太の出番。だが、こいつの周りにそんなやついただろうか?
「……。仕方がない。今回だけだからな」
「やったー!ありがと!おじさん!」
「抱き付くな!暑苦しい!」
抱き着いてきた春希をはがす。康太は春希を店の中に入れ、居間に通した。
「タオル。そこの使え」
「ありがと」
普段はあまり人には見せない居間には囲炉裏があった。囲炉裏の横にタオル掛けがあり、春希はそこから一枚タオルをはずした。
「で、"妖怪関係"の相談ってなんだ」
「………。実はね?私の学校、夜になると変な音がするの」
「変な音?」
「うん………。浅輪先生……あ、私の担任なんだけど、その、浅輪先生がこの前見回りをしてた時にね?誰もいない廊下のはずなのに、ギシギシ音が鳴るんだって。みんな"そんなのあるわけない"って言ってたんだけど、武山君だけが一人凍り付いちゃって……」
「誰だ武山って」
「クラスメイト!……でね?武山君は"視た"って言うんだ」
「………何を」
「仮面を被った幽霊」
仮面を被った幽霊………。聞いたことないな。康太は腕を組んだ。
「そいつは今学校に来てるのか」
「ううん。急に具合悪くなっちゃって、今は休んでる」
「よし。明日その武山ん家に行くぞ。場所分かるか?」
「あ、うん。確か二丁目の花屋さんの隣………」
「明日また16時頃ここに来い」
「え、引き受けてくれるの?」
いつもなら「来るな」と言ってくる康太。春希は康太の顔をじっとみつめる。メガネでタバコ吸っててだらしないのに、"妖怪関係"のことになると格好良くなる。
「(いつもこんな感じだったらお店にも人が来るのに、もったいない)」
「………。おい、俺の顔になにかついてるか」
じっとみていたら、康太に怒られた。
「あ、ううん!なんでもない!明日16時頃ね!」
"またね!"と言って、春希は店を出ていく。康太は深いため息をついた。外に出ると、雨はあがっていた。
「………。姉さん、なんであんなことを言ったんだ………。姉さんの方が強いのに。俺は今でも弱いままだ………」




