13話 対 蛭のマガツキ
ハジメが到着するころには、警察官によってクラブ周辺は立ち入りの規制がかけられていた。
国見が規制する警官と一言二言やり取りをすると、すぐに車ごと通る事が許可される。
国見はそのままクラブの入り口に車のトランクを向けるような形で停車し車を降り、ハジメも続いておりる。
「……ハジメさん。
ちょっと驚くかもしれませんが、あまり騒がないでくださいね。」
国見が意味深にトランクを開ける。そこには少しの荷物があるだけだった。
だが国見は乗っていた荷物を道路に捨てトランクの《《底》》を起こす。
「うぉう……」
2重底になっているトランクの下には、まるでアクション映画のように、スナイパーライフルやアサルトライフル、ショットガンにハンドガンといった銃や弾丸。タクティカルベストやヘッドセットといった『武装』の為の装備一式が詰まっていた。
手慣れた様子で、タクティカルベストを着、グローブを身に付けながら国見が言葉を発する。
「ちゃんと特別許可は得ていますが警官への説明は非常に面倒になりますので余り口外しないでくださいね。」
M11ハンドガンの残弾を確認し胸の前の収納に収め、M67破片手榴弾を2つ左胸に装備する。ハンドガンの取り出しの邪魔にならないよう自分に合わせた調整がされているように見える。MP7短機関銃をチェックしてから構える国見。
メガネをくいっと中指でなおし、ふーっと一息吐いてから口を開いた。
「……ではハジメさん。行きましょうか。
ハジメさんも念の為あの黒いので覆った方がいいと思います。」
「……お、あ。はい。」
国見のてきぱきと武装する様子に呆気にとられていたが、気を取り直し全身を髪が覆うようなイメージをする。
すると、ビュルルル。とどこからともなく髪が出現し全身をぴっちりと覆う。
全身すっぽり覆い終わると不思議な気配を感じるようになっていた。
『なんだ? なんていうか、ホタルみたいな弱弱しげな光みたいな気配っつーか……そんなもんが一箇所に集まってるのが見えるような気がするな…なんだこれ。』
ハジメがそんなことを考えていると、国見は電話を片手に次の行動に移っている。
「生天目さん。聞こえますか?」
『もぉー! サオリちゃん切らないでよっ! ……マジで今の状況はキモイことこの上無いんだからさ~!』
「到着したのでこれより作戦開始します。
クラブ内部突入後、速やかに手榴弾の投擲で良かったですか?」
『ちょっとは構ってよ……うん。僕の防御ならその程度どーってことないから遠慮なく投げちゃって。』
「はい。そして爆破後に要救助者を保護し引き揚げで間違いありませんか?」
『うん。隙間ができたらなんとか渡すよ。』
「了解です。
ではコチラは私とハジメさんという方で動きます。」
『さっきもなんか居たよね? 誰?』
「味方です。
……えっと…その…あの
……風貌はですね、今はですね…た、例えるなら……ゴリラのようになっていますが間違えて攻撃しないでください。」
『ゴリラ!?』
国見が申し訳なさそうに遠慮がちに伝えている。
ハジメはまったく平気な振りをしているが、やはり美人からゴリラとか言われると内心は多少傷ついているのだった。
「で、では、作戦開始します。」
『って、また切る――』
スマートフォンを切りハジメに向き直る国見。
「す、すみません。緊急事態なので、分かりやすい例えが良いかと思いましたので……その、他意はないんです。あの、あれです。私はそのお姿はカッコイイと思いますよ!」
物凄い適当なフォロー。
だが、ハジメはカッコイイの言葉一つで持ち直し、むしろ元気になるのだった。流石の国見。流石のハジメである。
「よぅし! じゃあ、行きましょうか国見さん!」
「はい! では、私の後方支援という事でついてきてください。」
--*--*--
しかし……なんだ……
国見さんの後ろ姿。
素敵じゃないか。
上半身がベストでもっさりした感はあるが、下がタイトスカートだから逆に足元が色っぽく見えるんだよな。
……良い足……そして太ももだ。
っていうかタイトスカートってスリットが絶妙にエロイ配置になってるよな? これ絶対狙ってるよな。
「ハジメさん」
「はいっ! すみません!」
国見が、なぜ謝られたのか不思議そうに首を捻りなら少しだけ振り向く。
「この先のホールにターゲットが居るようです。私はこれから中を確認し手榴弾を投擲しますが、その後生天目さんが要救助者の女性を抱えてここにくると思います。ソレを受け取り脱出する段取りですのでハジメさんには女性の運搬をお願いしたいのですが宜しいですか?」
「あぁ。そういった力仕事は任せといてください!」
「有難うございます。
……では行動開始します。」
国見はスマートフォンをとり、生天目への連絡だろうか、軽く操作した後、ホールの開いている入り口から一度中に目を通し、そして手榴弾を一つ手に取ってホールへ投げ入れて身を隠した。
ズドン
破裂音と共に開いている扉から爆風が吹き、破片が飛んできて壁に当たる。
国見がすぐに中に目をやる。
「な!?」
国見が驚愕したように固まる。
ハジメは黒色を纏って『ゴリラ化』して以降ずっと感じていたホタルの集合体のように感じていた気配が爆破後もまったく変わらぬ位置にあり、それどころかその内の数点が今にも国見に向かっているような感じがした。
その光は国見に一直線に向かっており、何かマズイ感じがし国見のベストを掴み引っ張る。
「うっ!」
突然引っ張られた衝撃に国見が小さく声をあげたが、その直後、国見の覗いた顔のあった位置から、大きなヒルのような生き物が通り過ぎ壁にベチャっと噛みついた。
国見を引かなければ、間違いなく国見の顔にヒルが噛みついていたのは間違いない。
ということは、この気配は……あのヒルの気配なのかっ!?
壁に当たったヒルが体勢を立て直し、またあとから2つ程の気配が近づいてきている。
俺の後ろにひっぱた国見さんをみると青ざめ混乱しているのか銃を撃つ気配が無い。
というよりも手榴弾で無傷なら、銃で撃っても攻撃が効かない可能性も高い。
噛まれたらミイラになるらしいと電話で話していたが、そんなこと言ってる場合じゃねぇっ!
「国見さんをミイラにさせるワケにはいかねぇんだよっ!」
俺は拳を握り、壁から動き始めたヒルに対してパンチを放つ。
ヒルは攻撃の気配を察したのか突如口を大きくあけ、俺のパンチを敢えて受け止めるような体勢をとった。
まずいっ!
そう思ったがパンチはもうヒルの口に入りかけている。
というか入った。
このまま噛みつかれたらミイラ化するかもしれない。
そうなれば国見さんと一緒に仲良くミイラか!?
んなこたぁ許すわけにはイカン!
美女は宝なんだよっ!
ヒルに噛みつかれる感触。
「っだらぁぁあああっ!!」
噛みつかれたまま拳を打ち付けた。




