第九話
魔法少女達に話をする男の子
ボクはさくらと一緒に、亜子・カレン・謎の男の子とカフェへ向かった。
男の子が切り出す。
「皆さん、昨日は本当に大変でしたね。
僕は魔法少女管理委員会で働いている春川薫と言います。
今朝魔法少女を探していた所、偶然カレンさんをお見掛けして、
顔を覚えていたので、この人は魔法少女だと思い、
声を掛けさせて頂きました。
今日は皆さんにどうしても伝えたい事がありまして。」
亜子
「ちょうど良かったわ。
私もあなた達の活動について、知りたい事だらけよ。
そもそも魔法少女管理委員会なんてものがあった事自体、
五年間魔法少女をやって来て、知らなかったのだもの。」
春川
「はい、本来僕達は裏方に徹して、魔法少女のサポートをして来ました。
ですから、その存在を知らないのは自然な事です。
多くの一般職員は自分達の働きが魔法少女のためになると思い、
純粋な善意から活動しています。かつての僕もそうでした。」
カレン
「でした。と言う事は、今は違う何かを知ってしまったと言う事?」
春川
「はい。この組織には、4つの顔があります。
一つ目は、先ほど言った善意の派閥。
そして二つめは、魔法少女のエネルギーを資源として管理し、
それを搾取する派閥です。」
亜子
「何となく予想はしていたけれど・・・。
『管理委員会』の名前に偽りは無い。皮肉な話ね。」
春川
「えぇ、魔法少女の力の核は
『人の無垢な願いから生まれる特殊エネルギー』です。
組織の中の一定の人々はここに着目し、
『完全なる魔法エネルギー制御技術』を研究しています。
最終的にこれが完成すれば魔法少女そのものが必要無くなり、
彼らが世界を管理出来るようになってしまいます。」
さくら
「そんな・・・魔法少女狩りは、それが目的だったの?」
春川
「研究に必要なエネルギーの抽出は、実はそこらで行われています。
ですから今回の件にこの派閥は関連していません。
突然魔法少女が失踪したりする事例に心当たりはありませんか?」
亜子
「えぇ、とてもよくある事よ。
私は、その存在そのものが消されてしまっているのだと思っていたわ。」
春川
「この派閥はまだ、自分達の純粋な研究欲に支配されているだけです。
これよりも厄介なのが、ヨクボーンと繋がった派閥です。」
さくら
「えぇ!?
ヨクボーンと魔法少女管理委員会に繋がりがあるの!?」
春川
「はい。彼らはヨクボーンの幹部と繋がりがあり、戦いの度に
魔法少女の力の残滓を吸い上げて『人間の欲望を完全制御する技術』を
魔法少女の力を通じて実現しようとしています。
あの矯正施設での注射は、魔法少女の力をヨクボーン側に変換する実験、
と言う側面がありました・・・。」
ボクは次から次へと語られるとんでもない話に、理解が追い付かなかった。
そもそも、魔法少女管理委員会って何の事?
そして注射?さくら達はあの矯正施設で、一体どれだけ酷い目に遭った?
話が何も見えて来ない中で、とにかく春川の話を聞くしか無かった。
春川
「そして最後の派閥、これは僕も直接では無く噂としてだけですが、
神の代理人として、この世界の秩序を維持する高等存在の代理機関。
彼らからすれば魔法少女もヨクボーンも、
世界のバランスを維持する為の『自然現象』のようなものです。
しかし近年、魔法少女の中に圧倒的な力を持つ者が現れ始めた。
それにより世界の崩壊リスクが出てきた。
彼らから見ればこうなってしまえば魔法少女もヨクボーンも
『自然の害虫』に過ぎません。
だから、問題のある魔法少女を矯正・排除し、
秩序を保とうとしている、というものです。
コレは僕の直感ですが、他の3つの派閥はこの派閥の目的達成の為に
手足となって動いているだけ、なのだと思います。」
ボクが発言する。
「え、だけど第二の派閥は魔法エネルギーの制御技術、
第三の派閥は人の欲望の制御技術でしょ?
どちらかに偏ってしまえば、バランスは失われてしまうんじゃあ?」
春川
「そこで、です。
その両者が互いの研究を完成させた時、とんでも無いエネルギーの
ぶつかりあいになると思います。
とても大きな力同士が衝突した時、何が起こると思いますか?」
亜子
「対消滅・・・。」
春川
「それぞれの力はお互いにぶつかり合い、消滅する。
そして対消滅は、最後に別種の粒子を生成します。
これこそが、神の代理人たる第四の派閥が求める、
完全に安定した秩序を持った概念物質なのでは無いか、
と思うのです。」
カレン
「世界を壊して、そこから小さな秩序を作り出そうとしているの?」
春川
「僕がこれまでに組織の中で見聞きして来たあらゆる活動や、
感じていた違和感を総括した所、おそらく間違いないと思います。」
ボクが口を挟む。
「ちょ、ちょ、ちょっとぉ~、話が壮大過ぎて、と言うよりもう、
地球、宇宙スケールの話じゃないポンか~?
大体、そんな事をこの3人に話して、何になるポン?
3人がどうにか出来るレベルの話だとは思えないポン。」
春川
「多くの魔法少女が信じ込まされている、
ヨクボーンを消せば願いが叶うというのは嘘です。
人の欲望がある限りヨクボーンは存在し続け、
その戦いに終わりはありません。
では何故そのような話が広まったかと言うと、
魔法少女には願いを具現化する力があるからです。
純粋で無垢な願いは、総量が閾値を超えると
本当に叶ってしまうのです。
しかし、願いが難しかったり、大きかったりすると
それが叶う為には大きなエネルギーが必要です。」
さくら
「わかった!!
魔法少女皆で、管理委員会が無くなった世界を願うって事!?」
春川
「管理委員会に限りません。
ヨクボーンも、そして魔法少女そのものも、
全てを消してこの世界に平穏を取り戻して欲しいのです。
もう、あんな魔法少女を搾取するような活動はごめんだ。」
カレン
「それって、あなたがただ楽になりたいだけじゃないの?
生きたいと願う魔法少女だっているのに、それは無視して、
全てを消して欲しいだなんて、ムシが良すぎない!?」
春川
「だったら、このままで良いんですか・・・。」
場の全員が、黙ってしまった。
魔法少女は、戦い続けるか消えるかしか無い。
そんな残酷な運命を背負わされた彼女達の人生は、
一体何の意味があると言うのか。
そして願いが叶うというささやかな希望さえ砕かれて。
ボクは、恐る恐る口を開いた。
「マスコットには?
マスコットには何か、出来る事は、無いのかな?」
春川
「残念ながら、マスコットは単なるコンパニオンでしょう。
魔法少女が存在しているからオマケでくっ付いている、
あなた達マスコットが単体で出来る事なんて、おどけて
魔法少女の心を軽くする事くらいでしょう。」
さくら
「それは違うよ!
オタポンはオタポンとして、ちゃんと生きて、昨日だって
不安な中でずっと待っていてくれて、ちゃんと真剣に生きてる。
それを魔法少女のおまけだなんて、おかしいよ!!」
ボクは感情が高ぶったさくらをなだめる為、彼女の肩に手を置いた。
『ポンッ』
さくらの肩にチューリップの花が咲いてしまった。
こんなシリアスな場面に不釣り合いな、このコミカルな体を呪った。
「さくら、ごめんポン、雰囲気ブチ壊して・・・・。」
さくら
「そうだ!コレだよ!!
マスコットは触れたり関わるものをファンシーに楽しくしちゃう、
この力を使えば何か、もっと世界を良く出来るんじゃない!?」
カレンと亜子が驚いた顔を見せた。
春川は少し目を丸くする。
さくら
「魔法少女はヨクボーンと対抗して生まれるのだとしても、
マスコットはそんなのお構いなしに存在してるじゃない!!
オタポンは自分の事を何も出来ない、必然性が無いって思ってるけど
その何にも縛られていないっていうポジションが、
とても大切な役割なんじゃないかな?」
「ボ、ボク・・・そんなに大切な役目・・・なのかな?
だけど、ボク、そんな世界を平和にするだとか、大それた役割・・・。」
さくら
「大丈夫だよ、オタポン!
そのために私達魔法少女がいるんだよ。
本当は逆だったんだ!
魔法少女のためにマスコットがいるんじゃない。
マスコットがその力で世界を良くするために、
魔法少女がマスコットを守ってあげるために存在してるんだ!」
その場に居た全員が、顔からくらいものが消えた。
カレン
「さくらさん・・・それ、素敵過ぎる発想だわ。
今までずっと魔法少女として、真面目で大人ぶっていたけど、
私だって中学生の女の子として、可愛いもの大好きだし、
マスコットが作り出す夢の国みたいな世界、素敵だと思うの。」
亜子
「わ、私だってそういうの、嫌いじゃない、いやむしろ好きだし、
何て言うかその、ふかふかでふわふわなものに囲まれたいって言うか、
あ”-もう、さくらがそんな事言うから、期待しちゃうじゃないの!」
春川がフフッと笑った。
春川
「凄いですね。何て言うか、この発想力も魔法少女だからなのかな。
その話、本当に素敵です。マスコット・・・か。
最近は戦いの中で殺されたり、意義が見いだせずに失踪したり、
あまり見なくなりましたが、マスコットを探すのなら、
僕も協力出来ますよ!!」
亜子
「そ、そうと決まれば、マスコット探し、してみる・・・の?
っわ、私は別に、何も期待なんてしていなんだから、ね?」
カレンがニヤニヤしながら亜子に詰め寄る。
「亜子ちゃん~、もしかして実は物凄くファンシー好きだとか?」
尊い。美少女が美少女に詰め寄り、顔が近い。
もう、ここにペンライトがあれば全力で振ってる。
それくらいに、ボクの中のオタクセンサーがビンビンだった。
カレン
「さぁ、それじゃあ、そうと決まればまずは、
オタポンのお仲間、探しに行こっか!
私のマスコットは、ホラ、死んじゃったからさ。
新しい子、見つかるかな?次はもう、死なせないからね。」
カレンの顔が一瞬、後悔に染まる。
しかし、さくらが言った。
「だいじょーぶだよ!!
カレンちゃん、過去は過去、これからは私達も一緒にいるからさ、
今度はちゃんとマスコットと一緒に魔法少女、やろっ?」
場の空気はここに来た時からすると信じられないくらい明るくなっていた。
そしていよいよ、前代未聞の『マスコット探し』が始まった。




