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第四話

「う、うわわわあぁぁ~~~!!!!」


ボクは、迫って来る大量の下痢便を避けようとして飛び上がった。

しかし、飛び上がった先にも下痢便が見えた。

もうダメだ、コレは浴びるしかない運命だ。

そう思った時━━。


ー「ブラック・リフレクション!!」ー



突然黒い光がパッと放たれたかと思うと、下痢便が消えていた。


見るとそこには、黒い衣装を身に纏った、カレンとは違うけれど

似たような魔法少女風の女の子が立っていた。



挿絵(By みてみん)

下痢便男と新たな魔法少女とオタポン



「あなた、大丈夫だった?

 もう私が来たからにはこれ以上ヒワイダーの好きにはさせないわ。」


「あ、ありがとうポン・・・。

 キミも、魔法少女なの?カレンとお友達、仲間なのかな?」


「カレン?あぁ、この町の魔法少女かしら。

 ごめんだけど知らないわ。私、これまでも魔法少女はたくさん見て来た。

 だけどその多くは戦いに疲れて魔法少女を辞めてしまうか、

 敵にやられて存在そのものが無かった事になったり。

 とにかく、魔法少女を続ける事はとても大変なのよ。

 さぁ、そこを退いて。まずはこのヒワイダーをやっつけるわよ。」


「ヒワイダー!!お前も俺様の下痢便の香りの虜になれ~!!」


「誰があんたなんかの下痢便の匂いを好きになると思うの!?

 ちょっとこじらせ過ぎていて、さすがにヒワイダーと言えど、

 かなりのカウンセリングが必要なレベルね。」


するとヒワイダーは突然回転を始めた。

そして、360度に向けて下痢便を飛ばし始めた。

一体体のどこにそれほどの便が溜まっていたのだろう。

ボクは空中からそれを眺めていた。


「ブラック・シールド!!

 クッ、肥大化されたフェチ願望が無から下痢便を作り出しているのね。

 厄介だわ。だけど、その厄介を倒すのが私の使命だから!!」


少女はシールドを張りながらも次の呪文を唱えた。


「ブラック・プリフィケーション!!」


突然、男から飛んで来る下痢便が泡に変わった。

そこら中に巻き散らかされた下痢便も泡となり消えて行く。


「す、凄いポン・・・。一気に下痢便が、消えたポン。」


「あら、あなたマスコットでしょう?

 こんなの魔法少女なら当然だと思うけど、知らないの?」


下痢便男は急にハッと我に返った顔になったが、

遠巻きに眺めていた警察達に捕まえられて連行されて行った。


「ボ、ボク、実は人間から転生したマスコットで・・・。

 マスコットとしての知識も魔法少女の事も何も知らなくて。

 それで昨日突然、一人の魔法少女と出会って、もう一人、

 まだ魔法少女じゃないんだけど、この子だ!って子に会って。

 それで昨晩はその子の家に泊って・・・。」


「へぇ、そんな事もあるのね。

 あ、言い忘れていたわね。私は黒鋼亜子くろがね あこ

 ここから少し離れた町に住む中学三年生よ。あなたは?」


「ボクは、一応マスコットネームはオタポンと名乗ってるポン。

 さっきも言ったけれど元人間で、工場で働いていたら事故に遭って、

 気が付いたらこの体だったポン。」


「ふぅん、じゃあまだマスコットになりたてなんだね。

 昨日の魔法少女からは色々と聞いたのかしら?

 そのまま何も知らないままで死ぬのも可哀そうだし、

 私が知っている事なら教えてあげようか?」


「是非だポン!

 ボクはそのまだ魔法少女じゃない子を魔法少女にしてあげて、

 願いを叶えるサポートをする事が目標だポン!!」


「へぇ、そんな風に『プログラム』されているのね。

 だけど、そんなまだ魔法少女になっていない子なら、

 これから新人として魔法少女になった所で生き残る確率は稀よ。

 それよりも小学5年生の頃からもう5年間も魔法少女をやっている、

 長年この世界で生き残っている私をサポートした方が

 あなたのためにもなると思うけど?」


「え、そんな事が出来るポン?

 いや、そもそもさくらの専属マスコットかどうかも分からないし、

 とにかくその辺りを教えて欲しいポン。」


「良いわ。私の部屋に来なさい。

 ちょうどテスト休み中だし、色々と教えてあげるわ。」


ボクは亜子に連れられるまま、少し遠い彼女の自宅へと向かった。



電車を乗り継ぎ向かった亜子の家。

そして彼女の部屋は落ち着いた雰囲気でどこか大人びた印象だった。


挿絵(By みてみん)


画像

亜子の部屋に招かれたオタポン

「さぁ、まずは何から話そうかしら。

 魔法少女の事は、もう一人の魔法少女から聞いたかしら?」


「ヨクボーンに立ち向かう為に存在していて、

 ヨクボーンを倒せば願いが一つ叶う、って所までは聞いたポン。」


「まぁ、短時間だとそんな説明になるわよね。

 良いわ、まずはそこから教えてあげる。

 私達魔法少女はね、ヨクボーンと同時に生まれた。

 つまりは人の欲望がモンスター化する時、

 それに対抗する力として魔法少女という存在も現れたの。

 こうやって自然と力のバランスを取っているのね。

 だから、ヨクボーンが増えればその分、魔法少女も生まれる。

 だけど、人の欲望は果てしなく深く大きい。

 だから、多くの魔法少女は人の善の心の象徴として生まれるけど

 その多くは途中で辞めたり消されたり死んだり、その結末は散々よ。」


「そんな事をしていたら、町から女の子がいなくなっちゃわないポンか?」


「うーん、そこがこの世界の不思議な所ね。

 どうやら人々の記憶や世界が丸ごと書き換わる瞬間があるみたいなの。

 もちろん元々いた子が魔法少女になる時もあるけれど、

 突然ある家族がこの世界に生まれて、その家の娘が魔法少女で。

 だけど誰もそれを疑わない。友人だっているし、

 小学校の卒業アルバムや思い出もあるわ。

 たまに書き換わる前の世界を覚えている人がいて、

 その人からしたら不思議に思ってしまうの。

 だって居なかったはずの家族が突然現れるのだから当然よね。

 だけど今この町、いやこの国はそんな風にして成り立っているの。」


「え、それってボクが生前生きていた時からそうだったポンか?」


「それはわからないわ。

 だってあなたが生きていた世界が今と同じかどうかわからないもの。

 だけど少なくともこの世界はそんな風にして動いてる。

 そして魔法少女の存在は確かにその瞬間誰もが見ているけれど、

 ヨクボーンを倒した瞬間に皆、その事を忘れてしまうの。

 今日のヨクボーンだって、おそらくは突然町で下痢便をした犯人として

 警察が現場に向かって逮捕した、と言う記憶として処理されるわ。」


「つまりは、魔法少女は社会からは認知されていないという事ポン?」


「大まかにはね。だけど社会の中で魔法少女が活躍するほどに

 気付き始めてる人達もいるの。

 どうやら記憶の改ざんが追い付いていないのかしらね。」


「何て世界だ・・・。多分、ボクが元々生きていた世界とは、

 まるで違う世界みたいだね。」


「あなたが元いた世界がどんな所だったかはわからないけれど、

 きっと似たようなものだったんじゃないかしら?

 誰も知りようが無いのなら、あってもなくてもそれを証明しようが無い。

 それって、あなたが知らずに生きていただけかもよ?」


ボクはふと考えた。

童貞のまま終わった前の人生。

そして女の子の柔らかさも温かさも知らないままだった。

だけどきっとそれは確かに存在していた。

ただボクが知らなかっただけ。

だったら、同じように魔法少女だって僕が知らなかっただけで、

どこかで存在していたのかも知れない。

そうすると、ここはボクが生きていた世界なのかも知れない。

ボクは亜子の話を聞きながら、そんな事を考えた。


「あと、魔法少女には確かに素質と言うものがあるわ。

 それは魔法少女になる段階では無垢な心を持っている事ね。

 だから、その多くは小中学生の事が多いわね。

 一度魔法少女になってしまえば、後は変な話、心がスレても良いわ。

 と言うより、ヨクボーンと戦ううちに心がスレる方が普通よ。

 そしてマスコット。コレは私が知る限りは、元々そういう存在よ。

 だからあなたみたいに転生してなるものでは無い、と思う。

 だけどコレはさっきの話と同じで、私が知らないだけで、

 もしかしたら実は転生してなるものがマスコットなのかも知れないわ。」


━マスコットは転生してなるものかも知れない。━


そう思うとやはり、カレンのマスコットが殺されたのは、

彼自身が選んでそうしたのかも知れない。

きっとマスコットになる条件は魔法少女のそれと同じで、

こちらは童貞なのだろうと思う。

美少女と一緒に生活を共にしながら暮らす。

こうした中で童貞にとってはあまりに刺激が多い事もあるだろう。

だけどその度に、このぬいぐるみのようなガワが呪わしくなる。

そうして、やがてはこの存在としての生涯を終えたくなるのでは無いか。


「コレは多分、私が思う事なのだけれど。

 多くのマスコットは何も知らないのだと思うわ。

 だけど、自分がマスコットとして生まれた事の意味を考えて、

 この世界の成り立ちや起こっている事を知るうちに、

 自分には何が出来るかを考えて行く。

 そうした中で、思わぬ力が自分に備わっていた事に気付く。

 多分、どのマスコットもそうやって、

 自分の存在に意味を作っている、のだと思う。

 何の根拠も無いけれど、そう思うの。」


亜子は聡明な子だ。ボクは直感的にそう思った。

カレンもクールそうではあったけれど、この子は魔法少女歴も長い。

厳しい魔法少女をこれだけ長年やれていると言う事は、

やはりこの子自身にそれだけの素質があると言う事だ。

そしておそらくマスコットと同じく魔法少女達も、

自分で魔法少女とは何かを問いかけ続けながら成長し続けていくのだろう。

そうした中で共に苦楽を分け合うのがマスコットという存在だとしたら。

ボクはこれからのさくらを本当に支えて行けるのだろうか。


「それとね、マスコットは別に特定の魔法少女に付くわけじゃない。

 複数に付いている事もあれば、野良として誰にも付かない判断もある。

 だけど色々と考えた上で、特定の魔法少女の専属パートナーになり、

 その最後の瞬間までを共に過ごすパターンが多いみたいね。」


「えっと、亜子ちゃんのマスコットは?」


「私が殺したわ。彼にはこの世界はあまりに辛過ぎたみたいだったから。」


ボクはギョッとした。

今日の戦いを見ていて、ヒワイダーを殺しはしなかった。

あくまで戦いはお仕置きをするだけ。

だけどその中で不運にも死んでしまう魔法少女やマスコットがいる。

そういった認識をしていただけに、彼女が自らの意思によって

マスコットを殺めたという言葉は、とても恐ろしかった。


「良いわ。本当はここまで話すつもりでは無かったのだけど、

 その話もしてあげましょうか。

 マスコットは究極の所、魔法少女のためにいる。

 そしてその上で、魔法少女にとって必要ないマスコットは

 居る意味が無いのよ。」


彼女の一段暗く、そして鋭くなった会話のトーンに恐怖しつつ、

ボクはその話の内容から耳が離せなくなってしまっていた。

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