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第五話

「ふふ、怖がらせてしまったかしら?ごめんなさいね。

 だけどね、別にあなたを困らせたいわけじゃないの。

 ただ、私の願い、それを知ればあなたは、私に協力した方が

 結果的にはそのまだ魔法少女では無い子を救えるかも知れないの。」


亜子はそんな風に言った。

だけどボクには話が見えず、頭に?マークの疑問符が浮かんだ。


「あのね、私の願い、それは━━━

 『この世から、全ての魔法少女とマスコットを消し去ってしまう事』」


「えぇえ!?ソレってヒドくない!?

 せっかく、ヨクボーン達を倒す為に頑張って来た魔法少女とマスコットを

 消し去るって・・・どうしてそんな事を!?」


「だって、きっとね。ヨクボーンを倒したとして、魔法少女とマスコットは

 残り続けると思うの。だって彼女達にとってはアイデンティティだから。

 そうすると、またその反対概念としてヨクボーンが生まれる。

 だったら、ヨクボーンを倒した時点で全ての魔法少女とマスコットを

 消してしまえば良いと思うの。そうすればもう悲しみは生まれない。」


「だけど、それは頑張って来た皆にあまりにヒド過ぎるよ・・・。」


「私ね、お姉ちゃんを亡くしてるの。

 彼女も魔法少女だったわ。それはもう、無残な死でね。

 パパもママももう忘れてしまっているけれど、私は覚えてる。

 もう、あんな悲劇を繰り返したくない。あんなの・・・地獄よ。」


「亜子ちゃん・・・。」


「そしてね、以前私に付いていたマスコット。

 彼はとても純粋で頑張り屋だったわ。

 だけどある時ね、ヨクボーンを倒す事に躊躇したのよ。

 このヨクボーンは、あまりにこれまでの人生が報われなかった。

 今回は見逃してやれないか、って。だけどね、例外は無いの。

 ヨクボーンを全て倒さないと、私達は救われない。

 だってヨクボーンは増殖するし、魔法少女も生まれ続ける。

 悲劇の連鎖を断ち切るには、誰かがババを引かなきゃなのよ。」


「だからって、その役を亜子ちゃんがやる必要は・・


「あのねぇ!!あなたって、前世では良い大人だったのよね!?

 その割に、子供っぽくないかしら!?

 私がやらなきゃ、じゃあ一体、誰がやるって言うのよ!?

 適当に倒したいヨクボーンだけ倒して、非情な誰かを待ち望んで、

 その誰かに全てを覆いかぶせて、それで良いと思うの!?

 あなた・・・そうやって嫌な事から逃げて来たんでしょう。

 結局こうやって転生してもその甘々な考えで結局は身を亡ぼすのよ。

 あなたが私の考えを理解してくれるなら、一緒に頑張ろうって、

 そう思っていたけれど、残念ながら無理なようね。

 その、まだ魔法少女じゃない子の所へお帰りなさい。

 だけどこれだけは言っておくけど、今のあなたじゃあ、

 その子が魔法少女になれたとしても守る事なんて出来ない。

 目の前でただ何も出来ずにその子が死んでしまうその時も、

 そうやって何もしないままで、ただ後悔を増やすだけなんだわ!

 さぁ、もう大体は話したでしょう、帰って頂戴。」


亜子ちゃんのとても取り乱した様は、見ていて痛々しかった。

だけどそれ以上に、彼女の言葉がボクの心に深く突き刺さった。

『ー何もしないままー』

そう、ボクは確かに前の人生で、何もしないままに生きて来た。

そうして痛みの少ない道を選びながらも、何か満たされなかった。

だけど、だけどだよ、だからと言って彼女が選んでいる道は、

それは本当に正しいのか?

ボクはそれを考えるだけの深い思考を持たず、

ただ人目に隠れながらさくらの家へと帰った。




「あ~、オタポン遅かったねぇ。

 どこに行ってたの、小旅行?」


さくらが昨日よりも少し打ち解けた顔で話しかける。


ボクは「まぁ、そんな所」と答えて、そのままベッドで横になる。

さくらがボクの為に作ってくれた小さめの簡易ベッド。

段ボールを組み合わせたものだけど、何よりもボクだけの場所がある事。

この事実がとても嬉しかった。


亜子から言われた事はあまりに重くのしかかり過ぎて、

ボクは考えたくなかった。

だけど彼女の言っていた事、最後には全ての魔法少女とマスコットが

消えなければまた新たなヨクボーンは出現し続ける。

もしこの仮説が正しいのなら、終わらせるには最悪の選択肢しか無い。

と言う事は、さくらを魔法少女にしてしまえば、この子はいずれ消える。

ボクはその引き金を引くのは怖い。

モヤモヤした感情を抱えたまま、いつの間にかボクは眠っていた。




「おはよう、オタポン!今日はお休みだよ。」


さくらが元気に朝の挨拶をして来た。

そうか、休みなら彼女と一日ゆっくり一緒にいられる。

さくらと話し合って、彼女が魔法少女になるべきかどうか、

シッカリと考えよう。そう思っていた。

朝食を食べる為にリビングへと向かう。

TVが付いていて、何やらニュースが流れていた。


『駅前で10人刺殺。犯人は謎の言葉を繰り返す。』


━━直感でわかった。

  これはヒワイダーみたいな迷惑な話を通り越している。

  ヨクボーンの中でも破壊衝動を持った人達に憑りつく悪意、

  『ハッカイ』だ。カレンや亜子は来るのだろうか。

  それとも、また別の魔法少女が?

  とにかく、野次馬かも知れないけれど、ボクはさくらを誘った。


「行こう。何かのキッカケで、魔法少女になれるかも知れない。」


もはや、魔法少女になるならないを聞く段階では無かった。

とにかく現場に行かなければ。

事件の大きさがこれまでとは大違いだ。

ボクは心から湧き上がる衝動に突き動かされた。

そしてそれは、さくらも同じようだった。

あぁ、そうか、魔法少女とマスコットって、

どうしようもなく世界を救いたいんだ。

ボクは魔法少女とマスコットの事が、少しだけ理解出来た気がした。


現場に着くと多くの人が倒れていた。

犯人はどうやら刃物以外に銃も持っていて、警察は来ていたが、

ヨクボーンの力によるものなのか、それらを寄せ付けなかった。


一部は救急車に運ばれていたが、その中に魔法少女の姿もあった。

魔法少女でも勝てなかったのか?

ボクはゾッとした。

そんな危険な現場に、今ボクはさくらと一緒にいる。

もしかしたら、さくらが魔法少女に覚醒するとか、

そんなの関係なく、今ここで殺されてしまうかも知れない。

それでも、何とかしたいという気持ちに嘘は付けず、ジッと様子を伺う。


そこへ、カレンがやって来た。

既に魔法少女に変身している。


「さくらさん、オタポン!

 こんな所にいたら危ないわ、後ろの方へ下がっていて!」


勇敢に犯人に立ち向かうカレンの姿は、本当にカッコいい。

だけど、脳裏に先ほどの魔法少女の姿が浮かぶ。

もし、カレンがあの少女のように傷付いてしまったら━━


「ホワイト・バリケード!!」


カレンはまず、防御障壁のようなものを作った。

おそらく、戦略・戦術としては正しいのだろう。

シッカリと守りを固めてから、ジックリと長期戦の構えなのか。


しかし、そこへ犯人の銃弾が撃ち込まれた時、

銃弾はアッサリと防御壁を通過して、カレンに命中した。








「あ・・・・・・・・」








ボクとさくらは呆気に取られた。

カレンは驚いた顔のまま、被弾した胸から血をながしながら後ろに倒れた。

すぐに荒く『ドサッ』と言う音が聞こえた。


ボクは何も出来ずにいた。

犯人は喜んでいた。


「ハッカイ、ハッカイ!!

 魔法少女を二匹もやっつけたゾ。

 今日は魔法少女の血のワインで乾杯だゾ~!!」


そのあまりの狂気ぶりに背筋がゾクッとして、身動きが出来ない。

しかしその時、さくらが前に出た。


「オタポン、周りの人に助けを求めて。

 もうこんな時だから、あなたの存在がバレたって構わない。

 そして、カレンさんを撃ったあの犯人を・・・私は、許さない!!」


さくらのこれまでに見せた事の無い、心の底から怒りが沸き上がった顔。

彼女はそのまま、犯人の方へと向かって行った。


「さくら!魔法少女になるとかじゃないのか!?

 生身のまま行くなんて、殺されに行くようなものだポン!


 ・・・せめて、魔法少女に、・・・魔法少女になってよ!!」



その瞬間、まるでその言葉がトリガーになったかのように、

さくらの体が光に包まれた。


「え、コレって・・・!!」


次の瞬間、さくらの体にはカレンや亜子のそれと同じような、

独特なデザインのいわゆる魔法少女衣装とでも呼ぶべき、

可愛らしさの中にどこかカッコ良さも備わったドレスが着られていた。


「私・・・魔法少女になったんだ・・・」


とうとう、さくらが魔法少女になってしまった。

それは願ったり期待していたものでもあったのだけど、

亜子の話を聞いてからだと少し複雑な気持ちもあった。

それでも、今この状況を何とか出来るとしたら、彼女しか居ない。

しかし、魔法少女になりたての彼女が、カレンを倒した男に勝てるのか?

だけどもう、選択肢なんて無い。

ボクは自分の中から何か言葉が湧き上がらないか、深く意識を集中した。

こんな状況ではあるけれど、だからこそ急いで何か、

さくらの助けになるような事をしなければ。


「・・・・そうだ!魔法の武器だ!」


ボクはその辺りに落ちていた建設資材の鉄の棒を触った。

するとそれはみるみるうちに魔法のステッキに変わった。


「そうか、やっぱり!

 マスコットには、触れたものを魔法のアイテムに

 変えてしまう力があるんだ!」


これは皮肉にも、さくらの部屋に来た時に頭にパンツを被った時に

見つけた法則だった。


「さくら、コレを!

 使い方はわからないけれど、一つ言える事があるとしたら、

 とにかく自分を信じるんだ!!

 ボクが好きだった魔法少女アニメではいつも、皆言っていた。

 『自分を信じる力』って。

 だから、本気で信じて。キミは絶対に勝てる!

 カレンちゃんの仇を討つんだ、って!!」


「オタポン、わかったよ。

 やってみるね!!」


挿絵(By みてみん)

画像

ついに魔法少女になったさくら


さくらはステッキを構えると、男の前に突き出した。


「悪い事を止めないんだったら、本当に撃っちゃうよ?」


しかし男は聞く耳を持たない。


「ハッカイ、ハッカイ!!

 三人目♪今日は三人の魔法少女の血のスープ♪」


諦めたようにさくらが言う。


「ハァ、わからないみたいだね。

 だったら、もうコレ以上皆に悪い事が出来ないよう、

 攻撃するからね。

 ハアァァァァァァーーーーーー!!!!!」


さくらの魔法のステッキから波動砲?が放たれた。

それはカレンや亜子の攻撃よりも大分強力に見えた。

まだ魔法少女になったばかりのさくらが、何故?

しかしボクはそこで、大好きだった魔法少女アニメを思い出した。


『信じる力が強いほど、パワーは無限大!!』


そう、さくらは誰よりも純粋だったんだ。

魔法少女として上手く立ち回り、カレンや亜子のように

長く続ける事ももちろん大切だろう。

しかし、魔法少女として強くあるために最も大切なのは、

この信じる力なのだと思った。

それは、目の前のさくらが誰よりも証明していた。


「グワァァァァァァァーーー、

 ハ、ハッカイを・・・もっと楽しみた・・カッタァ~!!」


男はその場に倒れ込み、すぐに警察によって取り押さえられた。


さくらは信じられないという顔で自身の服装と、ステッキを見た。

しかし数秒すると明るい笑顔で言った。


「私、なれたんだね、魔法少女に!!

 やったぁ、コレでお兄ちゃんを見つけるための願いを叶える

 スタート地点に立てたんだね。オタポン、ありがとう!!」


ボクは正直、微妙な気持ちだった。

さくらの願いは純粋なものだし、叶えてあげたい。

だけど、亜子の願いがもし叶えられてしまったら、

さくらの願いはどうなるのだろう。

全ての魔法少女の願いが叶うのか?

それとも、誰か一人、最初に願った魔法少女だけ?

もしそうだとしたら、亜子が願った瞬間に他の魔法少女達は━━。

ボクは割り切れない感情を抱えながらも、さくらに微笑んだ。


「おめでとう、さくら。これでキミも魔法少女だね。」


そこへ、遅れて亜子がやって来た。


「あら、もうハッカイは倒したのね。その子が・・・。

 あぁ、その子があなたの言っていた、新米魔法少女かしら?

 先ほど遠くから見ていると物凄い力だったけれど、

 大き過ぎる力は代償も大きいわよ。

 そんなんじゃあ、ヨクボーン達を倒す前にあなたが壊れるわ。」


「亜子、遅れて来ておいてそんな言い方・・・。

 キミが来るまでに本当ならもっとたくさんの人達が犠牲になっていた。

 それを防いだだけで、さくらは十分に頑張ったと思わないポンか?」


「甘いわね。こういうのは最初が肝心よ。

 調子に乗って最初から全出力で行けば、今後のエネルギー不足になる。

 そういった所まで気を回せないのなら、あなたが一緒にいる意味は?」


「ええと、それは、その、ボクだって新米マスコットだから・・・。」


「またそうやって言い訳をするのね、あなたは。

 良いわ、さくらさん。私と勝負をしましょう。

 中途半端な力ならあなた自身が不幸になってしまうわ。

 本当にこれから一緒に戦う魔法少女として相応しいかどうか、

 私が見極めてあげる。」


「えぇえー!?

 同じ魔法少女同士で戦うとか・・・亜子ちゃん、本当に君はちょっと、

 ストイック過ぎるポン・・・。」


しかし、さくらが言う。


「亜子さん、って言うんですね。さくらです、よろしくお願いします。

 亜子さんの言う事、私には何となくわかります。

 長年魔法少女をされているのだと雰囲気からわかりますから、

 私の力を試して頂けませんか?」


「ふふ、良いわね。そこの意気地なしの獣とは大違いね。」


「ムキー!!ボクの事を意気地なしって、それはヒドいポン!!

 慎重って言って欲しいポンー!!」


どうやら魔法少女というのは、戦うために生まれているからか、

少し好戦的になってしまうのだろうか。

魔法少女になる前のさくらからは少し想像出来ないその前のめりに

ボクは少し不安になりながらも、二人の戦いを見守る事にした。

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