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転生して聖女見習いになったと思ったら何故か毒手の親戚みたいなトンチキ拳法を極める流れになってるんですけど!?  作者: 悠戯


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87.お祭りを満喫するガール


 そして五日後。

 ほんの思いつきが現実となり、先日中止となったお祭りが改めて開催される運びとなりました。王都そのものが壊滅しかけてから僅か五日での開催が叶ったのは、関係者の皆様の日夜を問わぬ努力のおかげに違いありません。

 意外にも無事だった建物が多かったり、本来のお祭りに備えていた準備をある程度使い回せた幸運もあったことでしょう。



「それでは、只今より建国祭を……否、救国祭を始めよう! 王都の民よ、存分に楽しんでくれ!」



 ただし、単なるやり直しではなく少しばかり変わった部分も。

 伝統的な建国祭は厳密に日取りや付随して執り行われる儀式が定められており、いくら国王陛下とはいえ気軽に変更できるものではなかったそうで。そこで王様はなんと古くからのしきたりを気にする必要のない新しいお祭りを、その名も『救国祭』を新しく作ってしまったのです。


 わたしとしては王都に滞在している今年だけ楽しめれば良かったのですが、来年以降は一日目を建国祭、その翌日の二日目を救国祭という連日開催にすることも前向きに検討しているとかいないとか。まさか適当な思いつきが元で国の祝日が一日増えることになるとは、人生何があるか分からないにも程があるってものでしょう。


 それと流石にこれに関しては今年限りですが、先日の事件で壊れた建物の修理代のみならず諸々の準備費用も王家持ちとあってか、王都の皆さんの反応は非常に好意的。皆さん、やはり楽しみにしていたイベントが中止になったのを惜しむ気持ちが強かったようです。



「ええと……あ、いたいた! おーい、エリちゃーん!」


「そんなに大声出さなくても聞こえてるわよ。それで、その、こっちの皆が……」


「ああ、はいはい。一応、ほとんどの子は会うのは二度目ってことになるんですかね? この前は顔が隠れてたので誰が誰だか分かりませんでしたけど」



 王様がお城のバルコニーから開始の宣言をした頃、わたしとマー君とクーちゃんとレイさん、つまりはいつもの面々は王都内の公園入口あたりでエリーちゃん達と待ち合わせておりました。ちなみに『達』と複数形になっている理由は、



「あの、この前は本当にごめんなさい……」


「それから命まで助けてもらっちゃったみたいで……」


「いいのいいの、そんなの気にしないでくださいって! せっかくのお祭りに暗い顔は似合いませんよ」



 悪魔に憑りつかれて衰弱していたエリーちゃんの友人一同も、ようやく回復したのだとか。彼ら彼女らに憑依されていた時の記憶は残ってないそうですが、事件が終わってからエリーちゃんや国の調査担当者から顛末を聞いて随分と肝を冷やしたそうで。


 元凶はとっくの昔に亡くなっている『本』の作者さんですし、悪辣なトラップに引っ掛かった彼らは純然たる被害者なのですが、本人達としては責任を感じずにはいられないのでしょう。



「まあまあ、落ち込むのはそれくらいで。それより発案者特権で一番最初の順番を確保してもらってますから早く行きましょうよ。駄目元で王様に頼んでみましたけど、なんでも言ってみるものですねぇ」



 エリーちゃんの友人ということなら根は悪い子達ではないはずです。

 色々ありましたけど、これから仲良くなれるならそれに越したことはありません。


 それに普段は絶対できない遊びを楽しめば、次第に気持ちも上向いてくることでしょう。それが以前にマー君とボール遊びをした公園を、本日の待ち合わせ場所にした理由にも繋がってくるのですけれど。



「ええっと、この槍を握って念じればいいんですよね? おおっ、本当に出た! うん、右に左に……っと、動かすのも簡単ですね。それじゃ的を狙って……とうっ」



 この救国祭で間違いなく大きな人気を博すであろう催しが、広大な公園に木製の的を設置して聖槍が生み出した光の槍を飛ばして狙う的当てゲーム。


 一応、この五日の間にわたしも惰眠を貪っていたばかりではなく、駄目元で壊れた聖槍の修理を申し出てクーちゃんと二人で百発くらい殴ってみたら、聖なる槍は見事に本来の姿を取り戻したというわけです。発する光の強さからして、たぶん悪魔に曲げられた時より強い全盛期の威力を取り戻しているのではないでしょうか。


 そこから更なる駄目元で王様に頼んでみたら、国宝の聖なる武器をお祭りの出し物にする許可を出してくれたという寸法です。盗難防止の為に頑丈な鎖で繋いで持ち出せないようにしてありますが、聖槍本体を握って念じるだけで光の槍を生み出せて飛ばせるので特に支障はありません。すぐ近くに武装した騎士さん達がいる状況で、わざと人間や建物を狙う危険行為に出る人もいないでしょう。



「的に当たったのは……十発中三発かぁ。ゆっくり飛ばせば簡単だけど、ちゃんと速度を出そうとすると意外と難しいかも。それじゃ次は誰やります?」



 パーフェクトを達成するまで粘りたい気持ちもありましたが、ここは大人の対応で順番待ちをしている皆さんに譲るべきでしょう。

 なにしろ国宝の聖なる武器に触れられて、しかもゲームの範囲内とはいえ使う機会なんて普通は一生ありません。もしかしたら来年以降にも機会はあるかもしれませんが、このチャンスを逃したら二度目があるという保証も現時点ではないわけで。


 わたしが遊ぶのを見て興味を引かれたのでしょう。さっきまでは暗い表情をしていたエリーちゃんのお友達も、一斉に表情を輝かせて次々と手を挙げています。

 マー君やクーちゃん、レイさんも興味はあるようですし、何の出し物があるのかすら知らずに見物していた野次馬の方々もどんどんと我々グループの後ろに並び始めている様子。


 前の一人が終わる度に、壊れた的を新しいモノと取り換える係の騎士さんも大変です。縁の下で奮闘してくれる彼らには、王様が弾んでくれる予定の臨時ボーナスを励みに頑張っていただきましょう。



「うんうん、やっぱりお祭りってのはこうじゃないと」



 誰も彼もがワクワクと心が沸き立って、沈んだ気持ちも自然と楽しくなってしまう。どこの国でも、どこの世界でも、お祭りとはそういうものなのでしょう。その一助となれたのなら、まあ悪い気はしませんね。


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新概念、拳鍛冶。
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