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異世界リデザイン【完結】  作者: 忘却セミコロン


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9/18

動体干渉術式


暫定的な防壁の修復から二日。


城内は、ようやく落ち着きを取り戻していた。




「――では、ここは?」


「うーん……これは攻撃対象を指定しているな。この記述が“対象”で、条件が“生命力が無い”かつ“魔力を保有”」


「なるほど。だからアンデッドだけに影響するのか。神聖な意味はないんですね」


「そうだな。神官の魔法と王様の魔法も、構造的には大差なかった」




あの日以来、三人で食事を取るのが日課になっていた。




テオドールは暇さえあれば司たちの部屋を訪れ、司に古代魔法の解析を頼んでいる。


自身の魔法へ応用するためだ。




(古代魔法の“要素”だけ抜き出して使うのか……やっぱ賢いな、こいつ)


眉間に皺を寄せ、ぶつぶつと詠唱を繰り返すテオドール。




司は我慢できず、その頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。


「うわっ! いきなり何ですか!?」


「偉いな」




ぽかんと口を開けたまま、テオドールは固まる。


その言葉が、ゆっくりと胸に染み込んでいく。


顔に熱が集まり、どこか懐かしい感覚が胸の奥をくすぐった。




「……子ども扱い、しないでください」




ふくれたようにそっぽを向くテオドールに、司は思わず吹き出した。




その時――




「敵襲!! 敵襲!!」


寝静まった城内に、鐘の音が鋭く響き渡る。




司が顔を上げ、窓の外を一瞥した。




「やっぱ来たな」


「はい」


テオドールが、壁に立て掛けていた杖を掴む。




隣の寝室からバタバタと足音が響き、勢いよく扉が開いた。




「パパお待たせ!! あっ、テオく……テオ」


「あ……チユ、おはよう」




咄嗟に寝癖を気にする知結と、頬を染めながら微笑むテオドール。


昨日から知結の特訓にテオドールも同行しており、二人はずいぶん打ち解けていた。




甘さが混じり始めた空気に、司は苦々しさと微笑ましさを同時に覚え、頭を強引に振る。




「……もう行くぞ!」


「はい!」


「あ、待って! パパ!」




三人は監視塔へ向かって駆け出した。







塔の上から戦況を見下ろす。




まだ戦闘は始まっていない。


だが既に騎士団と魔導士団は城外に陣を構え、迎撃準備を終えていた。




遠くの山裾が揺れ、黒い影が波のように平野へ流れ込んでくる。




司が空を見上げると、二つある月の青白い光が、濁るように霞んでいた。




「また虫か……苦手なんだよな」


うんざりした顔で司が呟く。




「パパ、虫にだけは弱いよね」


「意外な弱点ですね。覚えておきます」


二人にくすくす笑われ、司は気まずそうに頬をかいた。




その時。




城門から騎乗したレグナードが現れ、ゆっくりと監視塔を見上げた。




司と――目が合う。




「テオドール」


「はい」




司の指示と同時に、テオドールが杖を掲げ、詠唱を開始する。




その背に、知結がそっと手を添えた。




知結に付け焼き刃の戦闘技術を覚えさせるより、膨大な魔力そのものをテオドールへ流用する。


初日の特訓で塞ぎ込んでいた知結に、テオドールが提案した方法だった。




そして、その許可を王から直接もぎ取ってきたのも彼自身だ。


知結は“魔力を渡すこと”だけに集中する。




体の奥から無尽蔵に溢れ出す力が、テオドールを通り、杖から伸びる光の帯へ編み込まれていく。




field_restrict_motion {

detect small_biological_vector

predict repetitive_movement

increase local_drag

}


小型生物の周期運動。


そこへ、“動いた瞬間だけ”局所的に抵抗を増加させる。




テオドールらしい、極めて低コストかつ高効率な干渉魔法だった。




レグナードが剣を掲げる。


そして、力強く振り下ろした。




その瞬間――


まるで朝日が差し込んだかのような光が、平野全体を覆い尽くす。




虫が墜ちる。


小型魔物の脚が止まり、後続に踏み潰されていく。




「えげつない」


「効率がいいんです」


司が苦笑し、テオドールが不満げに言い返した。




それでも尚、黒い群れは止まらない。


迫り来る魔物の軍勢を見据え、レグナードは再び剣を掲げた。




「全軍――前進!!!」


「「「おおおおおおお!!!!!!」」」




地響きが平野を震わせる。




ついに、戦況が動き始めた。




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