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異世界リデザイン【完結】  作者: 忘却セミコロン


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13/18

還る場所


同士討ちがまばらになり、淡く光る平原に静けさが戻り始めていた。




司のすぐ近くでは、翼を失った飛竜が地面を掻きむしりながら、なおも濁った目で次の獲物を探している。




司は足元に転がっていた槍を拾い上げ、ゆっくりと飛竜へ歩み寄った。


両手にのしかかる重さに、胸が押し潰されそうになる。




「ガ……ァアア……ァ……ッ」


「今、送ってやるから……」




覚悟を決め、槍を振り上げた——


「触らないで。」




凍てつくような女性の声が背後から響き、司が振り返る。




そこに立っていたのは、黒い長髪を後ろで編み込んだ、一人の女性だった。




簡素な布のワンピース。


だが、その背に背負われた大剣だけが、この場に異質な威圧感を放っている。 




その瞳と柄にかけられた手に、明確な拒絶だけがあった。




「どいて」


女性は司の横を静かに通り過ぎ、飛竜へそっと手を添える。


life_support_release {

detach combat_protocol

dissolve mana_structure

return_to_world

}




「もういいよ。お疲れ様。」


飛竜は目を細めるように動きを止めた。




次の瞬間、その巨体は淡い光へと崩れ、大地へ溶けるように消えていく。




「……世界へ還すのか」


司の口から、確信を帯びた声が漏れた。




女性は目を見開き、初めて司を見た。


「あなたも……呼ばれてしまった人なのね」




司は息を呑む。




人外じみた空気に気を取られていた。


だが、改めて見るその顔立ちは、どこか故郷を思わせるものだった。




「頼む……教えてくれ。」


司は懇願するように声を絞り出す。




「この世界で、何が起きてる?」







監視塔の上で、テオドールは少しずつ光を失っていく平原を見つめていた。




本当なら、すぐにでも確認へ向かいたい。


だが、戦場に知結を連れていくことを、司はきっと望まない。




「チユ、お疲れ様。もう落ち着いたみたいだから、部屋へ——」


そこまで言って、テオドールは言葉を失った。




知結が小さく肩を震わせ、ぽろぽろと涙を流していたからだ。




『俺たちの世界じゃ、子どもが戦う前提で育ったりしない』


『文化が違いすぎるんだ。あの子に戦場で何かに対応できるとは、俺は思えない』


司の言葉が脳裏に蘇る。 




平和な世界で生きていた少女。




それを、自分たちが無理やり喚び出し——こんな地獄へ巻き込んでしまった。


胸の奥が締めつけられる。




「ごめん……チユ、ごめんね。」


テオドールは知結を強く抱きしめた。




知結の手が、おずおずと彼の背へ回される。




その温もりに、テオドールの目からも涙が零れ落ちた。


(二人を……帰そう。)


そう決意した瞬間。




戦場の奥で、黒い何かがゆらめいた。


テオドールは反射的に顔を上げる。




黒い馬とその背に跨る、黒髪の女性。


そして、背負われた巨大な剣。




王の私室に大切に飾られた肖像画の、勝気な笑顔の女性。




「ユーリ様……」


テオドールが息を呑む。




なぜ、歴史の彼方に消えた英雄がここにいるのか。


そして——なぜ彼女は、平原にぽつんと佇む司へ向けて、あの巨大な剣の柄に手をかけているのか。




知結も戦場の奥を見つめ、震える手をぎゅっと握りしめた。


「パパが、まだ残ってる。」


小さな声だった。




けれど、まっすぐテオドールを見上げる瞳には、確かな意志が宿っていた。




「行こう、テオ!」


二人は手を繋ぎ、監視塔を駆け下りた。


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