光の沈む先
魔族たちが一斉に停止し、その場で立ち尽くす。
まるで時間そのものが凍りついたかのように。
戦場に異様な静寂が降りた。
「な……なんだ?」
「どうなってる……?」
騎士達が構えた剣をわずかに下げ、困惑の声を漏らす。
魔族たちはピクリとも動かない。
ただ、その濁った眼球だけが不気味に左右へと蠢いている。
司は流れ落ちる汗を気にもせず、不規則に明滅する魔法陣を凝視していた。
『人間の神経パターンを検知し、魔族因子を除外する』
その“人間“と“魔族“を入れ替えた。
ただ、それだけだった。
hostile_signature {
detect demon_factor
detect mana_resonance
exclude neural_pattern
}
カチリ。
そんな音がするかのように、明滅していた魔法の光が⸻ハマった。
次の瞬間、地獄が再び動き出す。
オークの斧が、隣のオークの肩口を叩き割り、咆哮があがる。
猛獣型の魔物が味方だった群れへ飛びかかり、飛竜が地上の魔族ごと焼き払う。
理性の欠片もない純粋な殺戮が、戦場を埋め尽くした。
戦況は呆気なく反転した。
騎士たちは剣を構えたまま、顔面を蒼白にして言葉を失っていた。
何人かは膝をつき、肩を震わせている。
レグナードは馬上でその光景を呆然と見つめ、戦慄しながらも口の端を歪めた。
(これが……この男の力)
魔族たちは互いを敵と認識し潰し合いながら、色とりどりの光となって崩れ落ち、大地へと還っていく。
勝利を確信したレグナードが、剣を掲げて叫んだ。
「全軍、撤退!!!!」
号令と共に、城門がゆっくりと開かれた。
安堵の空気が広がる中、司はただ呆然と平野を見つめていた。
無数の光が次々と、根の張り巡らされた大地へ吸い込まれていく。
その景色はまるで——
世界そのものが、飢えに喘ぎながら命を貪っているように見えた。
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