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異世界リデザイン【完結】  作者: 忘却セミコロン


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11/18

敵性識別


知結の瞳から大粒の涙がこぼれ落ち、テオドールへの魔力供給がぷつりと途切れた。




「……っゴメン! 今言うべき話じゃなかった!」




combat_assist_layer {

identify allied_unit

predict movement_vector

compensate reaction_delay

stabilize mana_circulation

}


テオドールが慌てて魔力を立て直すが、膝がガクンと落ちる。


「……くっ!」




反応速度を補正し、騎士らの体を軽くする魔法。


高効率とはいえ軍全体への展開は、さすがに負荷が大きい。




「知結、集中」


「あっ……そうだね、ごめん!!」


司に指摘され、知結は袖で乱暴に涙を拭う。




そしてテオドールの杖に自分の手を重ねる。




「えっ!?」


距離の近さに、テオドールが思わず目を見開く。




「この方が“効率”いいかなと思って」


知結は得意げな顔で、自分の魔力を杖に直接送り込み始めた。




「……確かに!」




わずかに照れ笑いを交わす二人。




戦場を睨みつけるように見ていた司は、微かに漂い出した血の匂いに顔を顰めた。




「少し向こうを見てくる……!」


「あ、はい!」


「パパ、気をつけてね!」





監視塔を駆け下りながら、司は外を見た。




また一体、魔物が光となって崩れ落ちる。




淡い粒子は大地へ吸い込まれ、薄く戦場全体へ広がっていく。




まるで大地が死を喰っているみたいだった




(死の検知、高密度粒子、世界の核……)


頭の中で嫌な仮説が積み上がっていく。




(もし……この世界が召喚のたびに壊れているとしたら)




そして、その不具合をさらに召喚で補ってきたのだとしたら——




魔族がやっているのは、戦争ではない。




(……その場合、八方塞がりだ)




仮説が外れることを祈りながら、司は足を速めた。





重厚な城門脇の潜り戸を抜けた瞬間、司は息を詰めた。




生温かい血の臭い。糞尿が混じった臓物。焼け焦げた肉塊。


それらが混じり合い、濃厚な死の臭いとなって波のように襲いかかってくる。




足元は血と臓物でぬかるみ、靴がぐちゃりと沈みこむ。




至る所に引き裂かれた肉片、折られた骨、歯、指、眼球——人間のあらゆる“もの“が散らばり、生々しく転がっている。




断末魔の叫びが至る所から響き、すぐ近くでは鎧ごと潰され歪んだ“人の塊“が、苦悶の声をあげている。




肉を裂き骨が滑る剣の音。骨が砕ける鈍い響き。血が噴き出す破裂音。


遠くの音のはずなのに、すべて耳元で鳴っている気さえする。




初めて間近で見る生の戦場。


それはまさに“地獄絵図“だった。




「……ぅ、ぷ……」


込み上げる吐き気に、司は自分の頬を思い切り叩きつけた。




(しっかりしろ、俺……!!)




司は口元を押さえ、吐き気を必死に堪えながら、地面に広がる薄い魔法陣へ視線を落とす。


(この陣は、どこで維持している?)




周囲を見渡しても術者らしき姿はない。




ならば——


(直接、埋め込んであるのか?)




膝をつき土を掻き分けると、細い木の根のようなものが張り巡らされていた。




そこから微かな魔力が放出されている。




combat_behavior_protocol {

identify hostile_signature

prioritize target

execute attack_pattern

}


hostile_signature {

detect neural_pattern

detect mana_resonance

exclude demon_factor

}


(これは……さっき見た術式とは別か)




「“敵”として認識してるんじゃない。条件一致した対象を、機械的に攻撃してるだけか……」




この条件を書き換えれば——


少なくとも、この戦場は止められる。




ただ、それが世界にとって正しい選択なのかは……わからない。




それでも、知結とテオドールがいる以上、司に選択肢はなかった。




前線から一時下がってきていたレグナードが、地面へ食い入るように視線を向ける司に気づく。


(……何かを解析しているのか?)




魔法を読み解き、干渉する力。




レグナードは司の行動から目を離すことができないでいた。


自身が震えていることにも気づかずに。




司は祈るように目を伏せ、意を決するように光へ両手を差し込む。




“neural_pattern”

“demon_factor”


二つの記述へ触れ——




ゆっくりと、その位置を入れ替える。




魔法陣の淡い光が、鈍く揺れ出した。




その瞬間。


最前線で騎士を貪り食っていたオークの巨体が




——不自然に静止した。




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