婚約解消
鏡に映し出された私は、ニューヨークの私とは程遠かった。
髪はブロンドで、青い瞳の伯爵令嬢テレーゼ。
髪がブルネットで、茶色い瞳のCEO秘書アン・スミス。
一番違うのは年齢だった。
テレーゼは12歳。
アン・スミスは28歳。
愛らしいお姫様と成人した女性。
身体が小さいテレーゼと身長180㎝あるアン・スミス。
⦅これから、私は学ばねば!
この家のこと、この国のこと……。
あ! そういえば……ドイツ語よね。
こんなことで秘書としての能力が生かせるなんて……。
ドイツ語もフランス語も通訳してたから……。
そして、斬首刑を回避するのよ。絶対に!⦆
ベッドからようやく起きられたテレーゼを父親も母親も喜んだ。
母親に至っては涙を流して喜んでいる。
その姿を見て、私は⦅斬首刑だけは、この人達の為にも回避よ!⦆と決意を新たにした。
そして、国の名前などを父親から聞いた。
「テレーゼ、何もかも忘れてしまった其方に、私が今出来ることは教えることだ。
これから、色々教える故、しっかり覚えるように。いいね。」
「はい。」
私は多くのことを父親である伯爵から学んだ。
国の名前は、フランク帝国。⦅フランク? 帝国? 王国の間違いじゃ?⦆
父親の名前は、ベルンハルト・フォン・シュタウフェンベルク。
⦅父親は、シュタウフェンベルク伯爵なんだ。⦆
母親の名前は、ヘンリエッタ・フォン・アルトドルフ。
そして、この世界の私の名前は、テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルク。
テレーゼには婚約者が居る。
ウージンゲン公爵の嫡男であるカール・フォン・ウージンゲン。
カールは15歳。
婚約者だったが、テレーゼの記憶が可笑しくなったこと、快癒まで待たねばならないことを理由に婚約は解消された。
皇帝が婚約を決め、皇帝が解消したのだ。
「テレーゼ、案ずるでない。
必ずや、其方の嫁ぎ先は決まろう。
心穏やかに待っておれば良い。」
父ベルンハルト・フォン・シュタウフェンベルク伯爵は言った。




