三度目の結婚
テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルクが15歳になった日。
シュタウフェンベルク伯爵位を弟・ファビアンに譲った。
譲って半年後、テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルクとアドリス・フォン・リートベルクの婚礼が行われた。
アドリスは廃嫡を望んだが、父は許さなかった。
テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルクは、次期リートベルク伯爵であるアドリスに嫁いだのだ。
婚礼の前日――私はテレーゼに話し掛けた。
「ねぇ、何処かに居るテレーゼさん。
貴女の想いは叶ったのね。
何時からなの?
何時からアドリスを愛したの?
私は何時まで貴女の身体に居るのかしらね。
もう帰りたいの。
帰して下さらない?
…………ふふふっ………無理よね。
無理………居るかどうか分からないのに何を言ってるのかしら?
………生きてるわよ。
テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルクは生きてるわ。
15歳になって直ぐに斬首刑だったはずが、今も生きてるわ。
もう無いわよね。斬首刑は………。」
婚礼の朝は素晴らしく晴れた。
教会のステンドグラスを通して優しい光が二人に降り注いだ。
神の前で愛を誓い合った。
アドリスがリートベルク伯爵になってからも、新婚の時と変わらぬ愛で結ばれている。
子どもを5人も恵まれた。
夭逝した子を含めれば、テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルクが産んだ子は8人である。
⦅まるで、マリア・テレジアみたいな子沢山だわ。⦆と私は思った。
そして⦅アドリスって本当に、いい男よね。優しくて頼もしくて……そして一途に愛してくれている。本当にいい男よ。見た目は……なんだけど……。見た目を重視しないなんて、テレーゼさんもなかなか見る目があるんじゃない。⦆と思った。
年を重ねたある春の優しい日差しに溢れた日。
私はベッドで横になっている。
周囲にはアドリス、それから5人の子ども達が居る。
アドリスの目には涙が溢れている。
子ども達の目にも……涙が見える。
「テレーゼ、私を置いて逝かないでくれ。」
⦅アドリス、吃音が治って素敵だわ。⦆
「母上! 声をお聞かせ下さい。」
「お母様………お傍に居りますわ。」
「皆、母上のお傍に居ります。」
「テレーゼ………愛している。
いつまでも一緒では無いのか?」
⦅そんな約束したかしら? 覚えてないわ。⦆
「テレーゼ!」
「母上!」
「お母様!」
それから何も聞こえなくなった。
真っ暗だった。
⦅あぁ………死んだのね。私……。⦆と思い、次に⦅これから、どうなるの?………まさか……戻ったりしないわよね。もう、嫌よ! もうテレーゼ・フォン・シュタウフェンベルクには戻りたくないわ。あぁ、神よ。我が願い叶え給え。⦆と祈った。
次の瞬間、何故だかほんのり明るくなった。




