陛下と殿下
ウージンゲン公爵家での実験で、少なからず炭が毒に対して有効だとの結果が出た。
それも、わざわざカールが出向いて知らせてくれた。
⦅来なくてもいいのに……。⦆と思うが、貴族の家柄で伯爵家より上位である公爵家。
――「来るな!」とは言えない――そう思いつつ、「来ることは拒んでいないのに、結婚は拒んだんだ私……身分を無視しちゃったなぁ……。」と呟いた。
「カール様、クラウディア嬢はお健やかでお暮しでしょうか?」
「クラウディア? 健やかだと思うが、何故、私に聞く。」
「親しくしてらしたものですから……。
こんなにお会いしたら良くないのではありませんか?」
「その言葉、焼いてくれていると思うことにした。」
⦅え……………違うのに!⦆「焼く?」
「そうであろう。」
「何を焼くのでございますか?」
「其方という令嬢は……こんなにも私を惹きつけておきながら知らぬ振りをする。
少しは私自身を見てくれても良かろう。」
「カール様は次期公爵閣下でございます。
見ております。」
「其方は誠……食えぬな。」
「まぁ、私などを食されるのでございますか?
お腹を壊されますわ。」
「だが、面白い。
つい先ほどまで何故か知らぬが、あんなに怯えておったのに……。
今や私に酷いことを言う。
この変わり身が面白い、飽きぬ。」
「クラウディア嬢と御一緒なさりましたなら、きっと一層楽しい時間を持たれるこ
とでございましょう。」
「そんなに其方は私とクラウディア嬢を結び付けたいのか?」
「……それは、私には関係ございません。
お話しは、これで終わりでしょうか?
私が伺うことは、もうありません。」
「連れないことよ。
……まぁ、そこが気に入っているのだが……そろそろお暇しよう。」
炭が毒に有効だと分かったことで、公爵はその結果を皇帝陛下に伝え、毒を飲んでしまった時には粉末の炭が入ったエールを飲むよう進言したのだ。
再び、皇帝陛下との謁見に向かうシュタウフェンベルク伯爵夫妻と私だった。
宮殿の謁見の間で、皇帝陛下並びに皇后陛下、そして公務に復帰された皇弟殿下の前に進み出た。
「テレーゼ、其方は何と知恵があるのかと皇后と驚いておる。」
「誠に、私も皇帝陛下より伺った時、驚きました。」
「勿体ないお言葉でございます。」
「テレーゼ、今日はその炭の粉を持参しておるのだな。」
「はい。」
宮殿に到着した時に炭の粉末は侍従長に渡している。
侍従長が皇帝陛下に恭しく炭の粉末が入った箱を渡した。
「おお! これか………。」
「まぁ……これなのですね。」
「これが……毒に効くとは……。」
「未だ……未だ曾て有らず……毒に効く物は……。
テレーゼ、でかした!」
「誠に身に余るありがたきお言葉でございます。」
「陛下、このような聡明な令嬢こそ、我が皇族に必要な女性でございます。
何卒、第三王子殿下にテレーゼ嬢を妃としてお迎えになられますよう御高慮を賜
りますようお願い致します。」
⦅皇弟殿下ぁ~~! 何、言って!⦆
「うむ、其方の言う通りぞ。
テレーゼ嬢、其方を陛下の第三王子の妃に迎えることとする。」
「え……………。」⦅なんでぇ~~~~!⦆
「これより、其方には学んで貰わねばならぬ。
だが、私は案じては居らぬのよ。
皇帝陛下も、皇后陛下も、同じお気持ちである。
これよりは皇帝陛下の娘になる身。
帝国の為、学んだことを活かしてくれ。」
何も言えず、宮殿を後にした。
もうシュタウフェンベルク伯爵は断ることさえ出来なかった。
そう、これは皇帝陛下の裁可が下りた証。
もう決まったことだからだ。




