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元に戻りたい  作者: yukko
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親の愛

⦅夢よ。現実じゃないわ。

 そうよ、あんな悪夢……斬首刑など、もう見たくない。

 妙に生々しく、激しい痛みまで感じた恐ろし過ぎる夢など見たくないわ。⦆


⦅うん?

 夢って痛みを感じるんだった?

 …………え……………えええ……………。

 かんじ………ない?⦆


私は頬を叩いてみた。


「お嬢様! 何をなさるのでございますか。」

「痛い………。」

「当たり前でございますよ。

 頬が腫れてはいけません。

 冷やしましょう。」

「………痛い……。」

「冷やしましたら、痛みは少のうなりましょう。」


頬を叩いて痛みを感じた。

そのことが恐怖を呼び起こした。


「嫌ぁ―――っ。」


ちょうど頬を冷やそうと湿らせた布を若い女性が頬に当てようとした時だった。


「其方、お嬢様に何をしたのです!」

「いいえ……私は何も……頬を冷やそうと……。」


誰かの声がした。


「お嬢様の御様子が………。」

「何?……………お嬢様………いったい、何が………。」


身体の震えが止まらない。

両腕で自分の身体を抱え込んでも震えは酷くなる一方だ。


「お嬢様! お嬢様っ!

 旦那様にお伝えを……早う。」

「はい。」


誰か一人が震えている身体に何かを掛けてくれた。


⦅あれは……あれは…………。

 今は……夢の中じゃない。

 痛く感じた。

 ……だったら……あれは……あれは……私の身に起こったことなの?

 そうだったら……テレーゼって斬首刑になるわ。

 あの恐ろし過ぎる出来事が、テレーゼの身にこれから起こること。

 嫌よ! もう二度とあんな恐怖と激し過ぎる痛みを味わいたくないわ。

 ………考えるのよ。

 あの出来事が未来なら……変えないと……。

 考えるのよ。

 その為に、出来る限りの情報を得なければ……。⦆


部屋の扉が開いた。

父親と名乗った人と母親だと名乗った人が入って来た。


「テレーゼ!」


急に抱き締められた。


「こんなに震えて……。

 何があったのですかっ!」

「旦那様、奥様………申し訳ございません。

 お嬢様のお傍に仕えておりましたのに……。」

「ヘンリエッタ、それは後で良い。」

「でも、旦那様………。」

「テレーゼに話を聞きたい。」

「はい。」

「テレーゼ……。」

「……………。」

「テレーゼ、お父様が呼んでおられますよ。

 お返事なさい。」

⦅優しい話し方……抱き締められて震えが少なくなったわ。⦆

「………信じて下さらないでしょうけれど……。」

「テレーゼ、信じるかどうかも先ずは話を聞かせてくれまいか。」


私は頷いた。


「では、お話致します。

 私はアン・スミスです。

 テレーゼではありません。」

「テレーゼ。何を言うの。貴女は伯爵と私の娘です。」

「ヘンリエッタ、テレーゼの話を遮ってはいけないよ。」

「でも………。」

「テレーゼは震えているのだからね。ゆっくり話を聞きたい。」

「はい。」

「其方はアン・スミスだと言うのだな。」

「はい。」

「では、そのアン・スミスが如何にして怯えておる?」

「怖いのです。」

「怖い原因を話してくれまいか。」

「テレーゼは斬首刑になります。」

「何っ!」

「ざんしゅけい!」

「何故、私の娘が斬首刑になど!」

「分かりません。

 ニューヨークに居た私が目覚めたら、牢に居ました。

 そして引き出されて首を………。」


震えが酷くなった止まらない。

恐怖が身体を……貫いていく。


「この怯え方……誠ではないでしょうか。」


恐怖が襲う。


「嫌………嫌……帰らせて………ニューヨークへ………。」


誰の耳のも届いていないであろう私の心からの叫び。


「……テレーゼ……其方を愛している。

 我が大切な娘ぞ。」

「テレーゼ……可哀想に……こんなに震えて……。」


私の顔を優しく包み視線を合わせた伯爵。

私の目にテレーゼの両親の涙が見えた。

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