社交界デビュー
シュタウフェンベルク伯爵夫妻は、どこか嬉し気に社交界デビューの日を迎えるべく用意した。
テレーゼの母・ヘンリエッタはドレスや宝飾品を購入し、その際に本当に嬉しそうだった。
アン・スミスの私を着せ替え人形のように次から次へとドレスを着せた。
パンプスも……宝飾品も……同じように楽しんでいた。
「いつか……いつか、私はテレーゼの社交界デビューをこのように……。
このように娘と二人で……迎えたかったのよ。
貴女に似合う菫色のドレス、選べて嬉しいわ。
もう、ずっと前のことです。
テレーゼは……菫色のドレスを欲しがっていました。
そのドレスを着て舞踏会に行くと言っていましたのよ。
これで宜しいかしら?
ねぇ……アン。」
「え……………。」
「何を驚いていらっしゃるの?
貴女のお名前はアン……なのでしょう?」
「はい………ありがとうございます。」
「こうして二人だけの時だけアンと呼びますね。
でも、それ以外は……テレーゼと……テレーゼと呼ばせて下さいね。」
「はい。」
舞踏会の日、シュタウフェンベルク伯爵は私を見て涙を流した。
伯爵夫人は、微笑みながらも泣いていた。嬉し泣きだった。
もう見ることが叶わないと諦めていたテレーゼのデビュタント。
シュタウフェンベルク伯爵は「今日はエスコートさせて貰うよ。」と言い、私は「お願い致します。お父様。」と答えた。
すると、シュタウフェンベルク伯爵は、もっと泣いてしまった。
私は伯爵夫人に「今日はありがとうございます。このドレス、大好きです。お母様。」と礼を言った。
すると、伯爵夫人は泣いてしまって言葉も出ないようだ。
舞踏会の場所は、あのカール・フォン・ウージンゲンの屋敷だった。
ウージンゲン公爵邸での舞踏会だった。
私は怖くなった。
馬車で震えている私をシュタウフェンベルク伯爵夫妻は優しく言った。
「大丈夫だよ。私が傍に居るからね。」
「はい。」
伯爵夫人はそっと抱き締めてくれた。
私はまるで敵陣へ乗り込むような心持ちだった。




