独身を貫く
絶望な目覚めを何度したら良いのか――私はまたテレーゼとして目覚めてしまった。
目覚めて思ったのはアドリスのことだった。
二度も「助ける。」と言ったアドリスのその後はどうなったのか分からない。
それが気になって仕方なかった。
家出した後のテレーゼの両親の嘆きを……。
家出してから我が娘のように愛してくれた夫婦の嘆きとその後のことも……。
今までのことを考慮したテレーゼは、⦅このまま、この家に居るわ。⦆と、このままシュタウフェンベルク伯邸で生涯暮らすと決めた。
「お嬢様、何と仰いました?」
「だ・か・ら、私はお嬢様じゃないわ。
私はアン・スミスよ。
ニューヨークでCEOの秘書をしていたの。」
「お嬢様!」
「アン・スミスなの。
ここは、何処なの?」
「お……じょうさま………。」
シュタウフェンベルク伯夫妻が聞いても「私はアン・スミス!」としか答えなかった。
このシュタウフェンベルク伯邸で見極めると決めた。
今度も12歳でテレーゼとして目覚めた。
すると、15歳で斬首刑が待っている。
それまでに、なんとしてもシュタウフェンベルク伯爵が陛下派に属するとされたのか、それとも殿下派に属するとされたのかを……知りたい。
それよりも大切なのは、どちらにも属していないと多くの貴族に印象付けなければなるまい。
それを行うには12歳の少女では荷が重すぎる。
社交界デビューをしても、重要なことを知ることは困難だと思われる。
ただ、父親であるシュタウフェンベルク伯爵には、注意して欲しいと伝えたい。
それを、どうしたら良いのか考えねば………。
それからも私はアン・スミスだと言い続けた。
「テレーゼ……どうして?
貴女は私の娘なのよ。」
「ごめんなさい。私はアン・スミスで、テレーゼではありません。」
「なんということだ。
テレーゼ、父のことも母のことさえも忘れたというのかい?」
「ごめんなさい。」
テレーゼの母は、泣いた。
「アン・スミス」という名前を私の口から聞く度に泣き崩れた。
母は精神的なショックから床に臥すようになってしまった。
私はテレーゼに謝った。
⦅テレーゼさん、何処かに居るテレーゼさん。
ごめんなさい。貴女のお母さん、ショックで寝込んでしまったわ。
私のせいで……。
でも、もう私は元に戻りたいの。
だから、好きにさせて頂戴。
貴女、もしかしたら、何故、斬首刑になったのかを知りたいの?
だから、私が呼ばれたの?
そして、何度も繰り返すの?
あぁ………でも、なんで私が選ばれたのか分からない。
どういう基準で選ばれたのかしら?
ドイツ人じゃない私が、どうして?
分からないわ。
テレーゼさん、もうこれっきりにして下さいね。
これで何も分からなくても終わりに……。
斬首刑を繰り返すのは精神的に大ダメージよ。
肉体的には貴女が大ダメージなんだろうけど………。
これで、最後! もう戻らせて!⦆
アン・スミスだと言い続けると、あのカールとは直ぐに婚約解消され、その次の結婚の話はなかった。
嫁ぐという話は、「頭が可笑しくなった」という理由でなくなった。




