牢の中
冷たく湿気が多い牢の中で私は恐怖に包まれていた。
逃げられない。
また、あの断末魔の叫びを……私の死が待っている。
「おい! 面会だ。」
「えっ? 私に?」
「そうだ。」
⦅誰? 誰なの?⦆
「御機嫌よう。テレーゼ。」
「!………クラウディアさま………。」
「うふふっ……そうね。
罪人の貴女の名を呼ぶときに様は要らないわ。
でも、貴女は私をちゃんとクラウディア様って呼ばないといけないわ。
言葉遣いも正しくしなくっちゃ、ねぇ。」
「何を言う為に来られたのでしょうか?
こんな牢獄に……。」
「笑いに来たに決まってるじゃないの!」
「笑う為にだけでございますか? わざわざ?」
「ええ、わざわざ来てあげたのよっ!
死ぬ前に知ることがあるわ。貴女には……。」
「何を……死ぬ前に知らねばならないんですか?」
「カールはね、私の言いなりなのよ。」
「それは教えて頂かなくとも知っております。」
「貴女の処刑も私が閨で囁いたのよ。」
「えっ?」
「貴女のご実家……何処にも属さない……何度も誘ったのに、ね。
誘ったから知られたわ。
事を起こす前に家門を………失くしてしまわなきゃ。」
「!………私の実家?」
「ええ、そうよ。
斬首刑は貴女だけじゃないの。
貴女の両親と弟も一緒よ。
先にご両親からなのよ。斬首刑は……。
最後が貴女って決まったのよ。
ご家族皆さん、ご一緒で宜しいわね。
あはは……ははは………。」
「そんな……何もしてないのに………。
………お父様……お母様………アルバート……クラウス……。
あ………ああ………ああああ……!」
「では、御機嫌よう。カールが待ってるわ。私を………。」
涙で霞んだ視界の中からクラウディアの姿が消えていく。
憎い!それしかない。
「別嬪だなぁ……お前と違って。
むしゃぶりつきたくなるぜ。」
看守の下品な言葉が私にはクラウディアに合っていると思った。
失意の底に落ちたように僅かな食事すら喉を通らなかった。
両親と弟達の処刑が何時なのかも分からない。
何時、自分の処刑が執行されるかも分からない。
ただ、分かったことは……テレーゼとテレーゼの家族が斬首刑になる事実。
そして、罪なくして命を絶たれるということだった。
⦅罪を着せたのはクラウディア。
だが、そうさせたのは、どっち?
陛下派? それとも殿下派?
クラウディアは男爵の娘。
男爵が後ろで糸を引いている?
クラウディア・フォン・ブラウン……ブラウン男爵?⦆
考えても、考えたことが正解でも、もう何も出来ない。
テレーゼの家族を助けられない。
私もここから出られない。
それだけは変わらない。




