近衛兵
それは突然、やって来た。
朝、騒々しい足音で目が覚めた。
「まさか………。」
ドアが荒々しく開けられて近衛兵が入って来た。
「テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルク!
其方を反逆罪で捕らえる。」
「反逆罪? 私が……でございますか?」
「申し開きは聞かぬ!」
「………そうですね。何を言っても無理……。」
「若奥様………。」
「大丈夫よ。貴女達は誰も罪を犯していないから、罪を問う人も居ません。」
「テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルク!」
「はい。参りましょう。」
アドリスが声を潜めて伝えてくれていたことがあった。
「テ、テレーゼ様、へ、陛下派と、で、殿下派の間が
キ、キナ臭く……な、なっているそうです。」
「そうなのね。殿下派は皇帝陛下のご退位を?」
「は、はい。」
「アドリス、貴方は大丈夫なのですか?」
「わ、私は……ど、どちらにも……つ、ついておりませんから……。」
「そうなのね、良かった。」
「エ、エディットの……い、家も……う、うちと、お、同じですから。」
「そう、良かったわ。」
「本当に美しい庭園ですわね。」
「そう言って頂けると嬉しいですわ。」
アドリスが薔薇の花を1本手折らせて欲しいと懇願した。
了解すると、アドリスはその薔薇の棘を全て取り除いて、エディットに渡した。
「アドリス様、薔薇を髪に刺して差し上げられませ。」との私の言葉通りにエディットの髪に刺した。
見る見るうちにエディットの頬は赤く染まっていった。
そう、あの日、私はアドリスから聞いたのだ。
陛下派と殿下派との間の諍いを……。
そして、それが何故だか、どちらにも属さない只の女まで巻き込んだ。
そして、何故巻き込まれたか分からない。
恐怖が私の身体を襲う。
また、あの痛みを経験するという恐怖が襲った。




