アドリスの婚礼
初めて夫と夫婦で向かった先は、アドリス・フォン・リートベルクの婚礼だった。
⦅アドリス………懐かしい………お相手は何方かしら?⦆
あの時のままのアドリスだった。
緊張がこちらにも伝わってきた。
あの時――テレーゼとの婚礼――と同じである。
⦅うふふっ……緊張してるわ。アドリス、頑張れ!⦆
「何故、微笑んでいる?」
「えっ? 微笑んでおりましたか?」
「作り笑顔ではなかった。」
「婚礼ですもの……愛らしい花嫁を目にすれば自ずと笑みも零れると言うものでご
ざいますわ。」
「ほほぉ―――っ、1歳下の花嫁なのに、か。」
「はい、大変愛らしいお方でございますわ。」
「ふぅ~~ん、そうか。愛らしい、ね。」
「クラウディアさまは大人の魅力でございますね。」
「え!」
「お美しくて何事にも余裕がおありでございますわ。
教えて頂くことが多いと思いますの。」
「何を学ぶというのだ。」
「社交界での立ち居振る舞いなど……をお教えいただきたいですわ。」
「其方にクラウディアと接することを禁じた。忘れたのか。」
「あ………左様でございました。
申し訳ございません。」
「……覚えておけ。しっかりと、な。」
「はい。」
ほとんど夫と会話したことが無かった。
初めての会話と言える。
それだけで会話は終わった。
それからは貴族達との挨拶をしただけだった。
その時も夫は一瞥したくらいで、視線すら合わせなかった。
私の頭の中は、夫との仲などどうでも良かった。
アドリスへのお祝いをしたいと思って、そればかり考えていた。
帰りの馬車の中でも重苦しい空気だったが、気にもならなかった。
⦅アドリスに結婚のお祝いをするのは許されるのかしら?
否、アドリスではなく新婦のエディット様に渡したいわ。
アドリスと仲良くして頂きたいもの。
………貴族の方達から政治的なことなど聞きたかったけど……
無理だったわ。
でも、派閥はありそうね。
もっと知りたい……けど、無理ね。
屋敷から出して貰えそうにないもの。はぁ~っ。お手上げよ。⦆
目の前の夫は怪訝な顔をして私を見ている。
⦅あっ、顔に出てたのかな?
もう、考えるのは止めよう。
それは、自分の部屋に戻ってからだわ。⦆
「あの………お伺いしても宜しいでしょうか?」
「なんだ?」
「新婦のエディット様にご結婚のお祝いの品をお送りしたいのでございます。
如何でございましょう。」
「公爵家として贈っている。」
「私からお贈りするのは許されませんか?」
「したかったら、勝手にすればいい。
ただ、母上にはお伺いを立てろ。いいな。」
睨みつけながら夫は、そう言った。
そして、顔を背けた。




