名代
カール・フォン・ウージンゲンは、愛妾クラウディア・フォン・ブラウンより5歳年下だ。
年上の愛妾は経験豊富な成人女性、夫はまだ少年。
色香に惑わされて当然と言える。
夜の帳が下りてから夫は夫婦の部屋に一度も来なかった。
愛妾と二人きりの夜を過ごしている。
クラウディアは公爵嫡男の愛を一身に受けて、宝飾品やドレスなどを与えられている。
カールは妻であるはずのテレーゼに一つも贈り物をしないと徹底している。
そんなある日、妻としての役目である伯爵嫡男の婚礼に招かれた公爵は、嫡男であるカールとその妻に名代として行くように言った。
嫡男夫婦の社交界デビューとして……。
その日の為のドレスを購入したのはウージンゲン公夫人だ。
嫡男の妻に……長男の嫁に姑からの贈り物である。
「どう? カール、テレーゼに似合ってるわよね。」
「……はぁ……母上が選ばれたドレスですから、似合うでしょう。」
「ちゃんと御覧なさい。
愛妾ばかり見ていてはいけませんよ。
其方の子を産むのは妻ですよ。」
「……母上、結婚したばかりです。」
「そうね、でも、今のままでは孫は見れないわね。」
「母上!」
「テレーゼを妻として敬いなさい。いいですね。
急にその場だけの夫婦は見れば分かります。
自分の立場と役目を忘れないようになさい。」
「……………………。」
「テレーゼには返事をさせるのに、貴方は返事しないのですか?
返事を聞いていませんよ。」
「………はい、母上。」
「テレーゼ、とっても似合うわ。
貴女は私の名代ですからね。」
「はい、しっかり務めさせて頂きます。」
「お願いしますね。」
カールの目に怒りの炎が見えた。




