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元に戻りたい  作者: yukko
15/28

三度目の斬首刑

テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルク――また、その名を聞くとは思わなかった。


玄関の扉を荒々しく叩く音がして、大きな声で言ったのだ。


「テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルク!

 出て来なさい!」


私が恐怖に震えたのを見たベルタが私を抱き締めた。

イザークが玄関に出て言った。


「うちにはテレーゼという貴族のお方は居られません。」

「否! 居るはず! 探せっ!」

「お待ち下さい! 娘が怖がります。」


恐怖で震え、顔をベルタの胸で隠した。

いいや、違う。ベルタが懸命に顔を隠そうとしてくれたのだ。

女の子を抱き締めているベルタを見て、「この子に間違いない! ブロンドだ!」と叫んでいる。


「違います! この子は私の娘です。

 テレーゼとかいう名前ではございません。

 アンナです。娘の名はアンナです!」

「お前たちの娘は随分前に死んでいる。」

「この子は、私の子です!」

「問答無用! テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルクを連れて行け!」

「はっ!」

「お止め下さいまし!」

「どうか、お止め下さい!」

「お父さん! お母さん!」

「アンナ!」

「アンナぁ―――っ!」

「嫌ぁ―――っ! お父さん―――っ! お母さん―――っ!」

「アンナぁ―――っ!」


悲鳴に近い声が……3人の声が響いた。



連れられた私は、又もやテレーゼ・フォン・シュタウフェンベルクとしての人生が待っていた。

それは牢に入ることから始まった。

又もや裁判も無く斬首刑が決まった。

否、違う。

決まっていたのだ。


「どうしてよ……。何もしてないのに……。

 どうして、斬首刑なの。」

「それは、お前が貴族だからさ。」

「貴族だから?」

「知らねぇのかよ。貴族様は名誉刑を受けるのさ。」

「名誉刑?」

「平民は斬首刑を受けられねぇのよ。

 斬首刑は名誉刑だぞ。」

「何……それ……。」

「平民は絞首刑さ。苦痛が続くのさ。

 直ぐに死ねないんだぜ。 ゆ~っくり殺すんだ。」

「………………うっ………。」

「おいっ! 吐くなよ。」

「………………………。」

「お前ぇはよぉ……貴族様だからよぉ。

 斬首刑なんだぞ。」

「………殺されるようなことしてないのに……。」

「そんなこと、知らねぇよ。

 子どもまで殺すんだから……大きなことあったんだろうよ。」

「……子どもまで?

 私の他にも斬首刑になったって言うの?」

「お喋りはお終めぇよ。

 ……あんた、幾つだ?」

「15歳。」

「15歳……いいなぁ……。

 俺の子は生まれて直ぐに死んじまった。

 一番長く生きた子も15歳で死んだんだ。」

「………………。」

「貴族様の子どもは平民より生きられるんだな。」

「………………。」

「静かにしとけよ。

 あまり騒ぐと罪を重ねることになっちまう。

 いいな。大人しく、な。」


看守の子どものことが辛かった。


「そういえば、一番最初も何歳だった?

 分からないわ。

 二番目は15歳だった。

 そして、今のテレーゼも15歳。

 15歳で斬首刑を受けるの?

 それは、もう、どう足掻いても変えられないの?

 ……それに、私以外の人も斬首刑になったの?

 じゃあ、シュタウフェンベルク伯爵夫妻は?

 あの愛らしい弟達は?

 ……分からない。家を出たから分からない。

 もし、また時間が戻るようなことが起きたら……

 その時は、家を出ないわ。

 ずっとシュタウフェンベルク伯爵家に居て何が起きるのかを見定めるわ。」


そして、呼ばれて行った。

行った先に待ち構えるのは、斧を手にした処刑人だった。

三度目の全身を貫く激しい痛みで断末魔の声を上げて、テレーゼ・フォン・シュタウフェンベルクはこの世を去った。

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