大脱走②
どうやら商人の店に着いたようだ。
馬車の揺れが無くなり、しばらくして箱を持ちあげられた。
「それにしても……。」
「うん?」
「この箱は重いよな。」
「そうか?」
「うん、中は空だと思ってたけど……。」
「少しくらい入ってるんだろうよ。」
「まぁ……そうだな。」
生きた心地がしなかった。
⦅いつバレるか…。⦆と思うと、動悸が激しくなった。
それに、どうやってここを出るかが問題だった。
⦅どうしよう……取り敢えず……誰も居なくなったら箱から出よう。
蓋は……立ち上がったら……上がるはずだわ。
それにしても、箱の中を見ずに蓋をしてくれてラッキーだったわ。⦆
人の話し声がしなくなってから、ゆっくりと立ち上がろうとすると、頭に箱の蓋が当たった。
頭と両手で箱を押し上げた。
⦅上がった!
音を立てずに……この蓋……どうしよう。⦆
全身の力が自ずと集まったようだ。
蓋を両手で持てるようになるまで、少しずつずらした。
少しずらしてから、ゆっくり蓋を箱に立てかけるような形で音を立てないように下ろした。
そして、箱から出た。
もう、そこまでで全身の力を使い果たしてしまって身動きが出来なかった。
やはり貴族の子どもには蓋が重かった。
⦅はぁ……疲れたぁ~。体力をつけとくべきだったわ。⦆
疲れた身体を⦅頑張るのよ!⦆と励ましながら、私は箱の後ろに隠れた。
蓋は勿論、箱の上に戻した。
真っ暗な部屋の外から声がした。
「もう、今日は遅いから終わりにしましょう。」
「はい。」
「じゃあ、片付けて帰ってね。」
「はい。」
外からの物音が止まって、箱の後ろに隠れていた私は、少し開いているドアの隙間から部屋の外を見た。
私が居る部屋は倉庫のようだった。
部屋の外は店舗。
⦅何時、ここを、どのようにして、出ようか?⦆と考えていると空腹に気が付いた。
⦅お腹が空いたわ。
でも、住み込みの仕事を探さないと……。
この時代なら12歳でも働けるわ。⦆
汗だくになって、空腹を感じながらも、齢12歳のテレーゼの身体。
眠くなって、そのままドアの傍で寝てしまった。
寝ている私に気付く者が居た。
「まぁ……何処から入ったの?
この子………。」
「誰だろう? 知らないな。」
「このままお店には置いておかれないな。」
「連れて帰ろうよ。」
「そうだな。このままにしておけないからな。」
「このこと内緒にしないといけないわね。」
「そうだな。内緒に……。」
二人は、毎日、店に来ていない人だった。
依頼された物を仕上げて納品した後のことだった。
店員は店に一人残って居ただけだった。
その店員に挨拶は終えていた。
私が居た倉庫には外に出る為の「従業員用出入口」があったのだ。
二人のうちの男性が私を抱いて店を出た。
私は寝ている間に店を出ていたのだ。




