また……テレーゼ
目が覚めた。
「お嬢様、お目覚めでございますか?」
「え……………。」⦅また……同じなの?⦆
「まぁ、まだ夢の中のようなお顔でいらっしゃいますこと……ホホホ…。
さぁ、お着替えなさいませ。テレーゼお嬢様。」
「テレーゼ!」⦅……もう……嫌っ!⦆
「如何なさいました?」
「………ううん、何でもないわ………何でもないわ。
今日は、何かある日?」
「今日は刺繍を教えて頂くと伺っております。」
「そう……私、婚約しているの?」
「ええ、ご婚約が決まったばかりでございますわ。」
「そうなの……それで、何方?」
「あらっ? お忘れになられましたの?
昨日はあんなにお喜びでございましたのに……。」
「そう……だった?」
「まぁ、もう一度お知りになりたいのでございますね。
それはご確認なさるということでございますね。」
「ええ……そうよ。」
「もう一度、お名前をお聞きになりたいのではありませんか?」
「え?」
「お嬢様が憧れておられたお方でございますものね。」
「そうなの?」
「はい、左様でございますよ。
……お嬢様! 如何なさいました!
お忘れになられるなんて………。」
「寝ぼけたのかしら?」
「まぁ……ご婚約者は……。
ウージンゲン公爵のご嫡男であるカール・フォン・ウージンゲン様。
カール様は15歳であらせられます。」
「テレーゼは12歳?」
「はい。左様でございますよ。」
「そう…………。」⦅アドリスじゃなかった。⦆
再び、目覚めた時もアン・スミスではなかった。
落胆が大きかった。
もう本当に二度と再びリアムに会えないのだと思うと心は深い闇の底に落ちるようだった。
そして、二度も経験した斬首刑のことが忘れられなかった。
⦅逃げよう! それしかない!⦆と心に秘めて、そのチャンスを伺った。
もうアン・スミスだ!と言わなかった。
幾ら言っても誰も信じなかった前の人生。
三度目の今度は、テレーゼとして最初から過ごして家を出るチャンスを逃さないと決めた。




