9, パンケーキ屋、頑張ってます!
「はーい、フルーツ盛り1つと、チョコソースがけ1つですね!」
パンケーキ屋台出店初日を無事迎えた。
仕込みは、宿の休憩時間に調理場をお借りして、昨日のうちに100個焼いておいて,私の亜空間ボックスに収納。これならいつでも焼きたてだ。なんせ一人で切り盛りしなきゃいけないし、私のパンケーキはメレンゲを加えたフワフワ命だから、焼き時間に10分くらいかかる。なので、特別に作ってもらった大きな鉄板に10個くらい一気に作れるようにしてもらった。
トッピングもレルの大好きな季節のフルーツ盛りとチョコソース・生クリーム・ハチミツ各々から選べる。前世では、私はメイプルシロップが大好きだったのだが、この世界ではまだ見たことがない。この大陸中を回ったのに出会えないってことは、きっとカエデの木が存在しないのだろう。残念。
肝心の味は、宿のザック・メリサ夫妻のお墨付きをもらってはいたけど、本当に買ってもらえるか若干の不安があった。そう、まだトラウマは完全払拭できていないのだ。ちょっとでも批判されようものなら、私はきっとまた落ち込みまくるに違いない。
そんな私の心配は店のオープンと共に杞憂で終わった。
屋台の準備している時から、すでに人がちらほら並び始め、オープンには20人くらい並んでいたのだ。
後でわかったことだが、ザック達が同じ飲食関係の仲間やご近所さんにパンケーキの美味しさを広めてくれていたり、すでにパンケーキの熱狂的ファンであるユノも街の学校友達にパンケーキの素晴らしさをとくと語ってくれていたらしい。
本当にありがとう!!
屋台は、私の店を中心に人だからができていたが、この世界の人も甘いものを食べると、どうやらしょっぱいものが食べたくなるらしく、周辺の肉系・スープ系の店もつられて繁盛していた。
パンケーキは昼過ぎには完売となり、屋台を締め際に今日の恩恵を受けた店主達から感謝された。
うん、良かった、良かった。これで一人勝ちみたいなのだったら、やっかみなどの余計なトラブルの種を生むとこだったわ。
最近のパンケーキの屋台は、3日開店して1日休みというなんとも他の店主からは羨ましがられる形態での営業をしている。それには訳があって、パンケーキが売れに売れて、今では200枚を完売している。
地元の人のみならず、噂を聞いた商人や旅人・冒険者など幅広く認知され、お昼前には売れ切れることもしばしば。もっと営業してほしいと要望もあるが、なにぶん一人で仕入れや仕込みをしているので、200枚が限界だった。最初の頃は、あまりの私の余裕のなさを見かねたメリサやユノが買い出し、仕込みを手伝ってくれていたが、ただでさえ宿の主人であるザックが怪我の療養中で宿の人手が足りないのに申し訳なくて、休日を作り買い出し・仕込みをするようになったのだ。なにせこだわりのパンケーキだからね。仕込みや焼きの手間を省きたくないのだ。
そういう事情もあって、周辺の店から見たら奇妙な営業スタイルだが、それでも通ってくれるファンは着実に増えてくれて嬉しい限りだ。
「おお、ミズ!頑張ってるな!」
「ジャン。なんか久しぶりだね。同じ宿で暮らしてるはずなのに全然会わないから。どうしてたの?」
「いや、父さんの代理で組合の会合で隣町まで行ってったんだよ。母さん達から聞いたけど、最近ますます売り上げ伸ばしるらいじゃん。そういえば、会合先でも噂を聞いたよ。なんでも『幸せになれるパンケーキ』って異名がついてるらしいよ。」
なにそれ、初耳なんですけど!?
それにちょっと恥ずかしいわぁ…。
「それよか、守護の木のこと聞いたか?」
「守護の木って、あのシンボルの大樹のこと?特に何も聞いてないけど、なんかあった?」
って、あれ、守護の木って言われてるのね。
「いやぁ、会合の報告に組合長に会いに行ったらさ、他の組合の人達と「守護神さまが喜ばれて私達に祝福を下さっている!」って大騒ぎでさぁ。」
えっっ、そっちも初耳なんですけ!?
「守護の木がどうやらいつもと違うらしいんだよなぁ。俺も直接見てないからよくはわからないんだけどさ。」
いつもと違うってやっぱり私のせいだよね。
ジャンは、じゃっがんばれよっと言って、仕事に帰っていった。
「ミズ。これは一回様子を見に行った方がいいね。私もなんか大樹の気が騒がしい感じは受けていたんだけど、別に悪い兆候でもないからほっといたんだけど、普段気の感知ができない住人達が騒ぐくらいだからよっぽど何か起きてるんだよ。」
「えぇ、レル、気づいてたんなら早く言ってよ!また昔みたいに私の力がバレちゃたらどうするのよぉー。」
「別にミズのせいだなんて誰も気づかないでしょう。以前とは違って人口や 人の出入りも多いし。
気にしすぎ。」
「うぅ〜。わかった。店が終わったらその後寄ってみよう。」
なんとも憂鬱な気分になり、なんか学校で子供がなにかやらかし、先生から呼び出しをもらった保護者の気持ちってこんなかしらと、一刻も早く大樹のところへ行きたいのを抑えながら仕事をした。




