夜闇⑦
◆ジョージ十三世三十年 一月一日 〇時二五分
頬が痛い。
やけに寒い。広間にいたはずでは……いや、違う。ここは旧王城、私がいるのは屋上。そうだ、毒を飲みきれなかったんだ。
うっすら目を開ける。平手が迫る。ばちん。
「痛いです……メアリ様」
「あら、おはよう。ウィリアム」
私を抱きとめて、頬を張っていたのは、メアリだ。なんだか悪い夢を見ていた気がする。
「目を離した隙にこれとは。殿はなぜこうなのです」
聞きなれた声。少し遅かったんじゃないか。
「練兵場はどうした、オークレイ」
「近衛の皆様方に制圧されておりますよ、殿」
どちらにせよ砲兵など使えなかったわけだ。ばかばかしくて笑える。
「総長!」
「ウィル様、お目覚めで!」
「おお……コーヴァン、エドワードも。無事降伏できたか……よかった」
「彼らがわたくしを、あなたのもとへ案内しましたのよ」
よくなかった。貴官らのせいだぞ。恨みがましく部下たちを見る。怪我人を労わってほしいものだ。折角いい夢の中で死ねるところだったのに。
エドとコーヴァンが目を逸らす。
「……捕まってしまっては仕方ありませんな」
「ええ。放しませんわ」
「四つ裂きは嫌なので、せめて、斬首をお許しください……」
「許しませんわ」
ひどい。化けて出てやる。
「あなたにはまだまだ役立ってもらわないといけませんの。そんな暇はなくってよ」
どうやら、雲行きが違う。
「ね。あなた」
なにか、違う響きを少し、感じた。
この投稿の10分後、21時10分にエピローグを投稿します。
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