第十九話 魔物大行進
連続投稿です。
俺は村の中に入ると、駆け足で村長の家へ向かう。
そして、その戸を叩く。
その扉に罅が入る程。
すると、走って近づいて来る音が聞こえる。
「何だい? そんなに叩いて」
ガチャリッとその扉が開かれると、村長が眉を八の字にして顔を出す。
そんな村長に俺は、森の中で見た事を伝える。
すると村長は、ずっと瞑っていた眼を、スッと開けて鋭い目線で俺を見てくる。
「それは本当かい?」
「はい。」
「、、、一度中へ入ってくれ。」
そう言いながら踵を返す村長に、俺は付いて行く。
そして、昨日と同じ場所にやってくる。
と、椅子に座った村長は俺に対し、こう言ってくる。
「今夜から明日の朝にかけて、魔物が大量にこの村にやってくるだろう。」
「、、、どういうことですか?」
「【魔物大行進】だ。」
【魔物大行進】――漫画の中で聞いた事がある。
その内容は村長が言った事と同じだ。
「今夜って、どれくらいですか?」
「うーん、星が奇麗に見えるとき、かな?」
マジかよ、、、。
既に空は茜色に染まってきている。
星が奇麗に見える様になるのも遅くは無いだろう。
俺は村長に問う。
「どうするんですか?」
「それは勿論、この村を守るさ。」
俺の問いに村長は迷うことなく答える。
だが――
「、、、どうやってですか?」
「この村の戦える者を集めて、かな」
「魔物の数は?」
「ざっと、1万位かな?」
「1万、、、」
極大殲滅魔法でもあるならば話は別だが、俺はこの村にそんなものを持っている人間がいるとは思えない。
ならどうするんだ?
「そんな数、倒せるんですか?」
「、、、たぶん無理だろうね。」
「じゃあ、どうするんですか?」
「、、、無理、だけど出来ないとは言っていないだろう?」
「どういう意味です?」
怪しい笑みで俺を見てくる村長。
「君が力を貸してくれれば、勝率がぐんと上がる、、、どうかな? 君も手伝ってくれないかい?」
「俺は元々その積もりですけど?」
「そ、そうなのかい?」
「はい。だって、放っておけばいずれ逃げた先に現れるかもしれないですし」
後のやつは今考えた適当な理由だが、此処にはまだ二日とは言えお世話になったしな。
それくらいするさ。
「、、、作戦は?」
「その前にまず、村の者たちに知らせてくるとしよう」
「どうやってです?」
「、、、こうさ。」
そう言うと窓を開け、片腕を外に出して、指を弾く。
途端、村中にパチンッという音が鳴り響く。
俺がその音に首を傾げていると、周囲から音が消える。
その次に数人が走って来る音が聞こえてくる。
その足音が止むと、村長の家の戸が叩かれる。
「村長。何事ですか?」
「いやぁ、対応が早くてありがたいね」
そう呑気な声で言うと、戸を開く。
すると其処には、羅夢と、似た格好をする十数人の男女がたっていた。
あれはきっと緊急連絡の合図だったのだろう。
「じゃあ、単刀直入に言うけど、これから【魔物大行進】が起こる。それを阻止するのを手伝ってほしい。」
「【魔物大行進】ですか、、、。解りました。作戦は?」
「うむ。とりあえず中に入ってくれ。」
「解りました。」
――村長の家の中では作戦会議が行われた。
そして、時は既に晩刻。
それは今起きようとしていた。
「――! 来るぞ! 全員戦闘準備!」
全員の緊張が重なり合った頃、森の一点から光の柱が立ち上り、それと同時に村長の声が響き渡る。
場の空気が張り詰める。
次の瞬間、ドドドドドドドドドッという重たい音と共に地面が揺れる。
森の奥を見ると、そこには無数に光る赤色の眼光が蠢き近付いて来ていた。
作戦通り、俺以外の全員は武器を構え、魔物たちに備える。
一方俺はというと――
――「ここら辺でいいか。」
村の凡そ中心。
俺は辺りを見渡して屈みこむ。
そして、地面に手を付けると一つのスキルを唱える。
「――《結界魔法》」
途端、村を黄緑がかった薄い幕の様な物が包む。
これで全ての準備が整った。
後は、殲滅を執行するだけだ。
地面が震える。
それに、森の方から蠢く赤色の光が迫ってくる。
俺はそれを見て、天を仰ぐと地面に屈みこみ、力いっぱいに地面を蹴る。
そして、結界を超えるとその上に立ち、魔物たちを睨み据える。
その傍ら、とあるスキルを確認して嗜虐的にほくそ笑む。
――《ピピ――スキル《叡智の神眼》発動》
―――――――――――――――――――――――――――
スキル:《無限攻撃》――与えた攻撃を1秒の間に無限に繰り返す。
―――――――――――――――――――――――――――
「さて、始めるとするか」
俺はそれだけ呟くと《神威の魔剣》を取り出し、軽く飛び足元に結界を作り出すと、それを思いきり蹴り粉砕し、目にも留まらぬ速度で魔物たちの群れへ突っ込んで行く。
――村の全勢力による蹂躙が始まった。
この村は意外と有能です。




