もう一人の守護神⑧
『主様、主様、起きて下さい。』
ああ、誰かが呼んでいる。分身仏だ。そうか、ローラー作戦の結果報告だ。
『ごめん、お前たちに働かせて、俺は寝てしまった。ほんと、すまん。』
『それは全く問題なしです。主様が疲れてしまうと、我々にもそれが伝わりますから。』
『それで、結果はどうだ?』
『はい、強いテレパシーの発生場所が判明致しました。神奈川県の相模原市です。広大な森の中にひっそりと佇む二階建てのロッジ風の建物から、強いテレパシーが発生しています。我らの仲間が3体、近くで待機しています。』
『それでいい。俺が行くまで、行動は起こさぬように連絡してくれ。俺も準備が整い次第、そっちに向かう。』
本当は、すぐに瞬間移動したいのだが、ベビーの姿で、しかも、おねしょをしている。とりあえず、ちひろの姿に戻り、シャワーを浴びて、着替えて、それから出発だ。
シャワーを浴びながら、別の分身仏にコンタクトを取った。桃太郎を見張らせている分身仏だ。
『桃太郎は、どこにいるか分かったか。』
反応がない。それは彩先生と合流したということ。敵のテリトリーの中に入った証拠だ。相模原に彩先生は監禁されている。準備は出来た。俺は相模原の分身仏と合流すべく、瞬間移動した。
現場に到着。俺は待機していた分身仏を呼び戻した。色々と作戦を考えたが、正々堂々で勝負を挑むことにした。正面玄関から入ることにしたのだ。
ピンポーン!
俺は玄関のインターフォンを鳴らした。反応がない。中に人がいるのは分かる。強烈な気が流れているのが分かるからだ。俺は、もう一度、インターフォンを鳴らした。
ピンポン、ピンポン、ピンポーン!
『はい、どなたですか。』
聞き覚えのある声だ。桃太郎だ。やはり、合流していたのだ。ならば、強い気を出している者、強いテレパシーの持ち主。それは、さる、キジ、犬の3人だろう。
『私、赤ずきんよ。ここを開けて。』
『何?赤ずきん?』
反応ありだ。桃太郎は赤ずきんちゃんに会ったことはないのだろう。ドアが開いた。
『君が赤ずきん?子供だとは知らなかった。ちひろ暗殺で、大活躍だったと聞いているよ。どうぞ、入って。』
思った通り、桃太郎以外に、3人の男が座っていた。テレパシーを妨害していたのは、この3人が、それぞれ別のテレパシーを出していたからだ。3人のうち、1人でも倒せば、妨害は阻止出来る。
『桃太郎様、この子は?』
『赤ずきんちゃんだよ。ちひろを暗殺した功労者さ。この子のおかげで、我々が動きやすくなったんだ。』
『ほお、この子が。』
ひとりの男が俺に近づき、目を見つめてきた。この男の力量が試される。
『なかなかの度胸だ。目が座っている。ここの気にも動じることがない。普通の子供ではないな。』
俺はここにいる4人の心を読んだ。彩先生は、二階に拉致されている。
『おじちゃん、喉が渇いた。何か飲み物ちょうだい。』
『アハハハ、おじちゃんだってよ。猿橋は、老けた顔してるもんなあ。』
『うるさい。顔のことはお互い様だろう、鳥居じいさんよ。』
なるほど、目の前の男がサル。左の男がキジか。奥で黙って、こっちを眺めているのが犬だな。リーダーは、犬のようだ。
猿橋と呼ばれた男が、冷蔵庫からオレンジジュースのボトルを取り出し、グラスに注いでくれた。
『お嬢ちゃん、これ飲みなさい。ただし、もう、おじちゃんとは呼ばないでくれ。』
僅かだが、匂いがする。このジュース、睡眠薬が盛られている。
『いただきまーす。』
俺は、一気に飲み干した。今の俺に睡眠薬は効かない。眠ったふりをするつもりだ。
『はああ、美味しかった。』
俺は意味もなく、フロアでダンスを踊った。男4人がニヤニヤしながら見ている。5分ほど踊り、そして、足をふらつかせ、床に倒れこんだ。もちろん、演技だ。
『小娘が、我らを騙せると思ったのか。赤ずきんが、この場所を知るはずがない。この子は、赤崎彩を助けるために送り込まれた敵のスパイだ。可愛い子だか仕方ない。始末するしかないな。まあ、せめてもの温情だ。残りの人生、赤崎彩と居させてやる。こいつを二階の部屋にぶち込んでおけ。』
猿橋が、鳥居に命令した。
『まったく人使いが荒い。おい、犬飼、手伝ってくれ。』
俺はキジと犬に運ばれ、二階の部屋に監禁された。




