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桃太郎③

『ウォー!』

阿修羅大王が雄叫びを上げた。

『ダメじゃ。全く動かない。噂は本当だったのだな。この大きさで、100トンを超える重さ。選ばれし者だけが操れる。ちひろ殿のような、幼き女子が指先だけで、自由に持ち上げられるとは、摩訶不思議な道具なり。ちひろ殿、この如意棒には、とてつもないエネルギーが込められている。無闇矢鱈と使用してはならぬぞ。必要な時は、如意棒の方から教えてくれるはずじゃ。』

阿修羅大王でさえ、持ち上げることが出来ないのか。

『斉天大聖孫悟空も如意棒を持っていたと聞いていますが、それは本当なのですか。』

『ああ、実話じゃ。ただし、伝説だと、孫悟空が竜宮から盗み出したとされているが、それは違がう。そんなことすれば、龍の大群が襲ってくるわ。龍一体を倒すのでさえ、困難だ。わしでも勝てる気がしない。ちひろ殿と同じじゃよ。如意棒の方が、孫悟空を選んだのじゃ。あのサルも中々、強かったが、わしが見る限り、ちひろ殿の方が上じゃな。』

サル?もしや、桃太郎の守護神ではないだろうか。そんなことになれば、守護神3人は相当な奴らだ。迂闊に手は出せない。

『しかし、ちひろ殿が竜宮の正統継承者乙姫と判明した以上、もう誰も、ちひろ殿に手出しは出来んぞ。もしも、ちひろ殿が危険と分かれば、竜宮から龍の大群が押し寄せてくるわい。史上最強の援軍だ。』

『話を元に戻しますね。黒のオーラは、魔界、あるいは魔界に準ずる世界の者ということですね。その者の名は分かっています。まあ、本名とは思えませんが、「かぐや姫」と呼ばれています。』

『かぐや姫とは、竹林の妖精じゃ。黒のオーラとはかけ離れている。』

『私の情報によると、竹槍の名手らしいです。』

『だから、かぐや姫と呼ばれているのだな。竹槍で人を何人も倒すのは無理じゃ。刃物ではないからの、おそらく、槍先に毒を仕掛けてある。刺すのではなく、触れるだけで敵を倒せるようにな。御安心なされ。ちひろ殿に毒など効かぬわ。神に与えられし聖水を貰うているわけだから、体内に入った毒など、忽ち浄化される。さらに言えば、どんな竹槍の名手とて、ちひろ殿の体に当てることなど無理だ。勝負は一瞬で決まる。ただし、これはあくまでも、ちひろ殿に限ったこと。レイ姫には当てはまらぬ。』

『やはり、阿修羅大王様のお知恵を拝借して良かったです。』

『なんのなんの。わしは、これから、黒のオーラについて、シェリーに聞いてくるわ。会いに行く口実が出来た。感謝だ、ちひろ殿。』

『私にも同行させて下さい。』

『それはならぬ。今、魔界に入れば、敵の思う壺。残って、レイ姫を守りなされ。それに、シェリーと2人になりたいしな。ガハハハは。』

阿修羅大王は、魔界に消えた。


 新宿のアジトに飛んだ。 ベッドで、白雪姫が眠っている。すやすやと静かに眠っている姿は、まさに白雪姫である。俺は、声をかけるのをためらった。各部屋に異変がないかを確認したが、怪しい侵入の跡は見つからない。俺はとりあえずホッとした。護衛の分身仏が俺の肩に乗ってきた。

『主様。白雪姫様は、問題なしです。竹田電機の竹田室長とは上手く付き合ってます。というより、完全に手玉に取っています。』

『疲れただろう。戻って休め。他の者を護衛につける。』

分身仏は、俺の体に戻ってきた。

部屋は一見すると、代わり映えがないように見えるが、明らかに女性物の衣服が増えている。なるほどね。竹田におねだりしたということか。

キッチンに向かい、コーヒーを入れようと、ガスレンジの火をつけた音で、白雪姫が起きてきた。

『おはよう。白雪姫。』

『ちひろ様。』

白雪姫は、その場で、ひざまづいた。

『ちひろ様、本当に色々とありがとうございました。私、生まれ変わったようで、毎日が楽しいです。』

『竹田室長とも、仲良くしてるようね。こんなに沢山、お洋服買ってもらって。どうやって、おねだりしたの?』

白雪姫は、優しく微笑み、答えた。

『おねだりとは、ちょっと違うの。多分、すでにお分かりだと思うのですが、竹田は本物のMなのよ。 』

『もちろん、知ってるわ。うふふ、だから、あなたに紹介したのよ。』

『ありがとうございます。すでに、竹田と私の間では、主従関係が結ばれてるのよ。竹田は、完全に私の奴隷なの。竹田は絶対服従を誓ったのよ。いかなる時も、私に対しては敬語を使わせてるの。私の機嫌を損ねたら、もちろん、お仕置きよ。だから、おねだりはしてません。お洋服は命令して買わせたの。信じられる?あの大手家電メーカーの御曹司が私の奴隷になるなんて。竹田は、こんな私の笑顔が好きで、好きで、たまらないみたい。逆に、私は竹田の泣き顔が、可愛くて仕方ないのよ。ああ、もちろん、本物の奴隷にしたわけではないから、あくまでも、お遊びだけどね。』

『でも、お遊びはほどほどにね。彼の本業に支障をきたしたら、大変だから。』

『ちひろ様、それが面白いのよ。竹田ったら、仕事のストレスを私にいじめられることで発散してるらしく、仕事も順調どころか、業績がうなぎ登りらしいの。株価が高騰してるそうよ。竹田も昇進するみたい。社長室長から、専務になるんだって。全部、ちひろ様と私のおかげだって言ってたわ。そうそう、私もハワイに連れて行くって。今から楽しみだわ。』

白雪姫のテンションは高かった。本当に、毎日が楽しいようで、見ている俺も嬉しくなった。

『良かったわあ。モデルのお仕事も頑張るのよ。今日は、ちょっと、様子を見にきただけなので、もう帰るね。では、またね、バイバイ。』

俺は、別の分身仏を残し、瞬間移動した。

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