桃太郎②
『2代目桃太郎は、ひ弱すぎる。あれでは、戦いなど無理だ。』
『鳥居さんよ、確かにその通りだが、優しさは先代より上ですぞ。』
『戦いに優しさなど無用じゃ。優しさが致命傷にもなる。犬飼もまだ甘い。』
『猿橋はどうした。約束の時間は、とうに過ぎている。』
『あんたより早く来て、すでにミッションのため、動いているよ。相変わらずの、せっかちだ。』
『そうか。ならば、我らも作戦を決行せねば。行くぞ、鳥居。』
『了解だ、犬飼。』
彩先生の捜索に向かった分身仏を全員、引き揚げさせた。
『何か手がかりは掴めたか。』
『それが何一つ。彩様の護衛に当たっている我らの仲間も一体、連絡がつきません。テレパシーを阻止している何か強力なバリア見たいのがあるのかしれません。』
『そうか。引き続き捜索に当たれ。ただし、もしも、そのバリアのようなものが分ったなら、そのエリアに入らぬよう。いいな。』
『御意。』
分身仏は、捜索に向かった。敵がどうであれ、彩先生が簡単に倒されるとは思えない。分身仏もいるのだから。
俺はMr.Tにメールを入れた。
『北野哲也、カレン・ヨハンソンの2人について、調べて欲しい。よろしく。』
この2人の居場所を突き止め、護衛せねば。
何だか、忙しい。こういう時こそ、彩先生がいると助かるのだが、仕方ない。俺1人で何とかしなければならない。
次に、俺が行ったのは、念を入れること。強い念で、阿修羅大王を呼び出すためだ。俺の念が弱くなっていれば、彩先生とコンタクト取れなくて当たり前だ。阿修羅大王が来てくれれば、念の強さに問題ないと証明できる。5分ほど、念を送り続けたところ、空間が歪んできたの分かった。やってくるぞ。歪んだ空間に裂け目ができ、中から大男の登場だ。
『ちひろ殿、いったいどうした。』
『阿修羅大王よ、毎度毎度、呼び出して申し訳ない。この前も、とんだ茶番劇に付き合わせてしまって、すまなかった。』
『なんのなんの、退屈しのぎに、ちょうど良かったわい。それで、今回も何か、手伝って欲しいのかな。』
『いいえ、お知恵を拝借したいのです。』
『なんと、わしの知恵じゃと。わしは、この風体。たいがいは、戦いの加勢を頼まれる。知恵というのは、ほとんどないぞ。しかし、わしも神の端くれ。そこそこは、切れる頭をしてますぞ。何なりと、聞いて下され。』
『オーラについて、教えて欲しい。紫色のオーラについて。』
『紫色のオーラか。位の高い坊さんなど、極めて人徳の優れた人にしか纏わることのないオーラじゃ。凡人には無縁だ。』
『うーん。そうですか。』
『どうやら期待と違う答えだったようじゃのう。』
『人徳の優れた人が、レイちゃん暗殺を考えるというのが、納得ができない。』
『何。レイ姫の暗殺計画じゃと。それは、何としても阻止せねば。わしは全力で協力するぞ。そのオーラ、ひょっとすると紫色のオーラではないのかもしれないな。』
『私も一度、紫色のオーラを見たことがあります。シェリーさん。阿修羅大王様もご存知のシェリーさんです。』
『なるほどな。それなら頷ける。その紫色のオーラだが、そいつは、紫色ではない。おそらく、黒だ。黒く輝くため、濃い紫色に見えてしまうことがある。シェリーのオーラも紫色ではないぞ。あいつのオーラも黒じゃ。』
『そうすると、紫と黒では、意味合いが違ってくるのですね。』
『その通りだ。黒は文字通り暗黒を意味する。死を表すのじゃ。そのオーラは冷たく、一切の情を持たぬ。危険な相手と見てよい。しかし、人間界に黒のオーラを身に纏った者など会ったことないがの。』
『人間ではない可能性が有るのね。阿修羅大王様が、仰っていたカショーキの部下なのです。やはり、魔界の者と考えるべきなのですね。』
『ついに奴が動き出したか。ちひろ殿、油断するべからず。』
『はい、もちろんです。』
『確かに、カショーキは魔界の者だが、その手下が魔界の者かどうかは、決めつけるのは早い。黒のオーラを身に纏うのは、魔界の者だけではない。世界は、ちひろ殿が思っている以上に広いのじゃ。ちひろ殿は、人間界。カショーキは魔界。わしは天界。その他にも、数々の世界があるわ。』
『ひょっとして、竜宮も別世界ですか。』
『さよう。竜宮は、龍王と乙姫が司る龍の世界じゃ。ちひろ殿は、招かれたのだな。』
『はい、瑞獣の霊亀が迎えに来てくれました。まさに、龍の住処でした。そこで、龍王と対面致しました。』
『なるほど。ならば、龍王から秘密をお聞きになられたのですな。乙姫さん。』
『流石だわ、何でもご存知なのね。龍王からそのように告げられました。』
『自分探しの謎の解明に一歩近づいたな。じゃが、乙姫という身分は、あなた様の、ほんの一部に過ぎない。まだ、本当の姿には気づいていないようだの。竜宮に行かれたのであれば、何か土産を貰っただろう。』
『はい、頂いてまいりました。如意棒を。』
『よいか、ちひろ殿。龍王が、あなたに渡したのではなく、如意棒自らの意志で、あなたの元に現れたのじゃ。それは、今、あるか。』
『はい、こちらでございます。』
俺は、テーブルの上に如意棒を置いた。




