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フールの大冒険 ~聖なるマップを手に、異世界でまだ見ぬ両親を探します~  作者: ☆☆アダム☆☆


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第67話 王様への報告

結局、私まで説明に参加することになった。


赤、緑、黄色だけに任せていたら、「雪山へ行ったでぷ」「女神様がいたでぷ」「すごく強い奴が来たでぷ」で終わりかねない。オラクルは胸と背中を治療されたばかりで長く話せる状態ではなく、メリーに至ってはパンを抱えたまま、すでに半分眠っている。


私は固定された右足を伸ばしたまま、ゴブリン王とピンク、チェック、白銀へグラティスで起きたことを順番に話した。


《古の目覚めの笛》を探して雪山へ入り、魔物や雪男と戦いながら奥へ進んだこと。途中からメリーの失われていた記憶が少しずつ戻り、八つの円が刻まれた場所を発見したこと。その先で氷に閉じ込められていた女神セレスティアを見つけ、私たちが氷を溶かしたことで目覚めた彼女から、二つの願いを叶えると言われたこと。


そして、一つ目の願いで《古の目覚めの笛》を出してもらった。


そこまでは、うまくいっていた。


「でも、笛が完成する直前に……TIMEが来たの」


その言葉を口にすると、ゴブリン王だけでなく、ピンク、チェック、白銀の表情まで変わった。


「TIMEでぷか?」


「うん。左手に《10》があったから、No.10で間違いないと思う」


私は雪の中に立っていた男を思い出した。


白い剣を持ち、こちらが何を聞いてもほとんど答えなかった男。


「名前も聞いたけど答えなかった。何で笛が欲しいのか聞いても何も言わないし、TIMEが何なのか聞いても無視された。必要なこと以外、ほとんど一言も喋らなかったの」


思い返してみると、それは戦いの最中だけではなかった。


最初に姿を現したときから、ずっとそうだった。私たちが驚いても、怒っても、必死に笛を守ろうとしても表情はほとんど変わらない。挑発することも、自分の強さを見せつけて喜ぶこともなく、こちらを憎んでいるようにさえ見えなかった。


ただ《古の目覚めの笛》だけを見ていた。


「なんていうか……変だった。強いから怖かっただけじゃなくて、普通の人と戦ってる感じがしなかったの」


ピンクが眉を寄せる。


「普通の人と違うでぷ?」


「うん。私たちが何を言ってもほとんど反応しないし、怒りもしない。赤が向かっていっても、メリーが炎をぶつけても、オラクルが邪魔しても、必要な分だけ動いたらすぐ笛を見るの。人と話してるっていうより、最初からやることが決まってて、それ以外は全部どうでもいいみたいだった」


赤も思い出したように頷いた。


「怖かったでぷ。俺が何言っても全然返事しなかったでぷ」


「戦ってるのに、怒ってる感じもしなかったでぷ」


緑が続けると、黄色は少し考えてから言った。


「俺たちのこと、敵とも思ってなかった感じしたでぷ」


その言葉が、一番近い気がした。


私たちはNo.10を敵だと思って必死に戦っていた。でも向こうからすれば、目的は《古の目覚めの笛》で、私たちはその前に立っていただけなのかもしれない。


オラクルが寝台から口を開いた。


「まあ、TIMEだからな」


「TIMEだから?」


「普通の奴らが集まってる組織なら、そもそも世界中で名前を知られるような連中にはならねえだろ。何考えてるか分からねえ奴や、俺たちの常識が通じねえ奴が混じってても不思議じゃない」


「じゃあ、No.10も……」


「何かあるのかもしれねえし、単にそういう性格なのかもしれねえ。今の俺たちには分からん。ただ、《普通じゃなかった》って感覚は覚えとけ。理由が分からねえからって、なかったことにする必要はねえ」


私は小さく頷いた。


No.10が何者なのかは分からない。なぜあれほど感情を見せなかったのかも、必要以上に私たちを傷つけなかった理由も分からない。


ただ、あの人には何かがある。


そんな気がした。


チェックが静かに尋ねた。


「戦い方はどうだったでぷ?」


私は気持ちを切り替え、あの白い剣を思い出した。


「剣と……光を使ってた」


そこから私は、No.10が雪面を切り崩したこと、離れた場所まで光の斬撃を飛ばしたこと、メリーの炎を斬り開いたことを説明した。


雪男と戦ったときには、相手を観察して弱点を作り、みんなで攻撃を重ねることで倒せた。でもNo.10には、そのやり方さえ通じなかった。


こちらが一つ方法を考えるたび、向こうは次の瞬間には別の方法で崩してくる。メリーの炎で雪面を隠し、反射した光から影を読ませないようにすれば、雪そのものを斬って足場を崩された。炎の壁を斬られてもメリーが塞ぎ直せば、今度は雪を巻き上げて火を弱めてから突破された。


「こっちが考えてる間に、向こうも考えてた。たぶん……私たちよりずっと早く」


赤が悔しそうに腹を押さえる。


「俺たち、まともに一発も当てられなかったでぷ」


「何やっても、すぐ変えられたでぷ」


緑も俯き、黄色は少し黙ってから小さく続けた。


「みんないたのに、止められなかったでぷ」


私は左手へ刻まれていた《10》を思い出した。


ただの番号のはずなのに、今ではその数字を見るだけで、雪の中に立つ無表情な男と白い光が頭に浮かぶ。


それに、あの男が《10》なら、TIMEには他の番号もいるはずだ。


「あの人が《10》なら……他にもいるんだよね」


誰もすぐには答えなかった。


番号が何を意味するのかは分からない。強さの順なのか、加入した順なのか、それともまったく別の意味なのか。


ただ、グラティスで出会った《10》は、私がこれまで旅の中で出会ってきた誰とも違っていた。


少しして、白銀がオラクルへ視線を向ける。


「あなたも、まともに攻撃を受けたでぷ?」


「ああ。剣の柄で胸をやられて、そのまま岩まで飛ばされた」


「殺そうと思えば?」


白銀の問いに、オラクルは少し考えてから答えた。


「できただろうな」


治療室が静かになった。


No.10は赤を斬らなかった。私にも直接刃を当てず、足元を崩した。緑と黄色にも、笛までの道を開けるために必要な攻撃しかしていない。


それは優しかったからではない。


私たちを殺す必要がなかっただけだ。


「あいつが欲しかったのは、最初から《古の目覚めの笛》だけだ」


オラクルは寝台へ身体を預けたまま続ける。


「俺たちを倒す必要すらなかった。邪魔ならどかす。道を塞げば崩す。それでも邪魔なら、その分だけ痛めつける。最初から最後まで、それしかしてねえ」


「……一番怖かったのは、それかもしれない」


もし笛を奪うために私たちを殺す必要があったら、あの男はどうしていたのだろう。


考えても答えは出なかった。


ピンクは弟たちの怪我を改めて確認しながら、表情を険しくした。


「そのNo.10っていう相手は、覚えておくでぷ」


チェックも頷く。


「一人でこれだけの人数を相手にして、目的まで果たしたなら普通の相手じゃないでぷ」


ゴブリン王はしばらく考えたあと、私たちへ静かに言った。


「今は、それ以上追わなくていいでぷ」


「でも、笛が――」


「取り返すなとは言ってないでぷ。顔も、剣も、光も、左手の数字も覚えておくでぷ。でも今の状態でもう一度ぶつかれば、また同じことになるでぷ。相手がどれほど強かったか分かったのなら、何も変えずに追いかけるのは勇気とは違うでぷ」


言い返せなかった。


《古の目覚めの笛》を取り返したい気持ちは消えていない。でも今の私たちがNo.10を追いかけても、また同じことになる。しかも次は、セレスティアの二つ目の願いもない。


「……うん。今は追わない」


笛を諦めるわけではない。


次に会ったとき、同じように何もできないまま終わらないために、今はできることを増やす。


そう考えると、少しだけ悔しさの形が変わった。


ゴブリン王は私の返事を聞いて頷くと、治療役へ全員の状態を確認した。幸い命に関わる怪我はなく、私の右足、赤の腹、緑の肩、黄色の膝はいずれも休めば回復する見込みらしい。一番重いオラクルも骨に大きな異常はなかったものの、胸と背中を強く打っているため、しばらく激しい運動は禁止された。


メリーも怪我ではなく魔力を使い切ったことが原因で、よく眠って食べれば自然に戻るという。


その説明を聞いた王は、ようやく少し表情を緩めた。


「今日は何も考えず休むでぷ。笛のこともTIMEのことも、身体が治ってからでいいでぷ」


「分かった」


今度は素直に頷いた。


ピンクたちも治療室を出ようとしたけれど、ピンクだけは最後まで弟たちへ「勝手に外へ出たら駄目でぷ」と何度も念を押していた。


「お姉ちゃん、心配しすぎでぷ」


赤が不満そうに言う。


「三人とも担架で帰ってきたからでぷ!」


「それ言われると何も言えないでぷ……」


赤が大人しくなると、治療室に小さな笑いが広がった。


その日の夜、私は久しぶりに雪の冷たさも魔物の気配も気にせず眠ることができた。


目を閉じる直前、一度だけNo.10の姿が頭に浮かんだ。


何を聞いても答えなかった男。


左手の《10》。


そして、私たちを敵とさえ思っていなかったような目。


次に会うときも、私は何もできないままなのだろうか。


そう考えたけれど、答えを出す前に眠りへ落ちた。


今はまだ、身体を治すしかない。


その先で何をするのかは――明日から考えればいい。

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