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フールの大冒険 ~聖なるマップを手に、異世界でまだ見ぬ両親を探します~  作者: ☆☆アダム☆☆


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第27話 また会う約束

それからしばらくして、私たちは王宮を出ることにした。


王子とマリーさんの話は無事にまとまり、弟と妹も少しずつ王宮の雰囲気に慣れてきたようだった。最初は姉の服から手を離そうとしなかった二人も、今では王妃に王宮の中を案内してもらう約束までしている。


私たちが帰ることを伝えると、王子たちも部屋の外まで見送りに来てくれた。


「もう行くのか?」


「はい。私たちは旅の途中だから」


アデューへ来た本当の目的は両親を探すことだった。《聖なるマップ》に導かれて王宮へ来て、気づけばオラクルを助けるために侵入までし、最後には王子の恋を手伝うことになった。


予定していたことなんて一つもなかったけれど、それも旅なのかもしれない。


王子は少し名残惜しそうにしながらも頷いた。


「そうか。なら引き止めるわけにはいかないな。今回のことは本当に感謝している。君たちがいなければ、マリーがもう一度私と話してくれることもなかっただろう」


「私たちは家まで行って話しただけですよ」


「その『話しただけ』を、私にはできなかったんだ」


王子は苦笑すると、私たち四人を見回した。


「またアデューへ来ることがあれば、王宮へ顔を見せてくれ。今度は忍び込まず、正門からな」


「もう《透明化》のカード使えないから、忍び込めません」


「そういう問題ではない」


王子が呆れ、赤たちが笑った。私もつられて笑いながら、「分かりました。また来ます」と約束した。


王子と話し終えたところで、今度はマリーさんが私の前へ来た。


「フール」


「はい?」


返事をした直後、身体を優しく抱きしめられた。


突然だったので驚いたけれど、すぐに私もマリーさんの背中へ腕を回した。昨日初めて会ったばかりなのに、不思議とずっと前から知っている人のような気がする。


「本当にありがとう。あなたが家まで来てくれなかったら、私はきっと王子様ともう一度話そうとは思わなかった。怖いことから逃げたままだったと思う」


「でも、最後に決めたのはマリーさんですよ」


「そうね。それでも、あなたがきっかけをくれたの」


マリーさんは身体を離すと、私の両肩へ手を置いた。


「ご両親を探して旅をしているんでしょう?」


「はい」


「見つかるといいわね。私、応援してるから」


その言葉が素直に嬉しかった。


「ありがとうございます」


「次に会ったとき、どんな旅をしてきたのか聞かせてね」


「いっぱい話せるようにしておきます」


マリーさんは優しく笑った。


また会う。


いつになるかは分からないけれど、その約束があるだけで別れは少し寂しくなくなった。


――少なくとも、私とマリーさんは。


少し離れたところでは、別れがまったく進んでいなかった。


「嫌!」


幼い弟が赤の足へしがみついている。赤が一歩動こうとすると、男の子も抱きついたまま一緒に動き、「俺たちは旅に行くでぷ」と説明されても「ぼくも行く!」と離れようとしない。


「危ないでぷよ」


「赤と行く!」


昨日の食事ですっかり仲良くなったらしい。赤も困った顔をしているけれど、無理やり引き離そうとはしなかった。


妹が「お兄ちゃん、赤困ってるよ」と声を掛けても、男の子は首を横へ振った。


「だって、もう会えないかもしれない!」


その言葉を聞いた赤の表情が少し変わった。


しばらく男の子を見つめたあと、何かを決めたように腰へ手を伸ばし、これまで使ってきた剣を鞘ごと外した。


「赤?」


私が驚いている間に、赤は男の子の前へしゃがみ込んだ。


「これ、あげるでぷ」


男の子は泣くのも忘れたように目を丸くした。


「いいの? 赤の剣でしょ?」


「そうでぷ。だから大切にするでぷよ」


男の子は恐る恐る両手を伸ばし、剣を受け取った。幼い子には少し大きかったけれど、そんなことは気にならないらしい。赤からもらった剣を胸へ抱え、さっきまで泣いていた顔が一気に明るくなった。


「大切にする!」


「約束でぷ」


「うん!」


赤も満足そうに頷いた。


いい別れだと思った。


ところが、その光景を見ていた黄色だけは、感動より先に別の問題へ気づいたらしい。ものすごく真面目な顔で赤の腰を見ると、ゆっくり口を開いた。


「赤。剣あげちゃったら、これからどうやって戦うのでぷ?」


その一言で、全員が赤を見た。


言われてみれば、その通りだった。赤は私たちの中で前へ出て戦う役目で、最近は剣を使った戦い方にも慣れてきた。その大事な武器を、今自分からあげてしまったのだ。


赤はしばらく黄色を見つめ、何をそんなに心配しているのか分からないような顔をした。


そして、ものすごく真面目に答えた。


「骨付き肉があるでぷ」


私も緑も何も言えなかった。


黄色だけが頭を抱える。


「それは武器じゃないでぷ!」


「武器にもなるでぷ」


「食べ物でぷ!」


「食べてからでも使えるでぷ」


「もっと駄目でぷ!」


せっかく感動していたのに、一瞬ですべて赤らしい話になってしまった。


マリーさんは口元へ手を当てて笑い、王子も堪えきれないように顔を背けている。付き人たちまで肩を震わせていた。


私はため息をつきながら赤を見る。


「次の街で剣買おうね」


「お肉も買うでぷ」


「剣が先」


「お肉も大事でぷ」


「分かったから」


そんな私たちの横で、男の子だけは赤からもらった剣を大切そうに抱え、嬉しそうに何度も眺めていた。


やがて本当に王宮を出ようとしたところで、男の子がもう一度赤を呼んだ。


「赤!」


赤が振り返る。


「また来てね!」


赤は少しも迷わず笑った。


「もちろんでぷ!」


今度は男の子も追いかけてこなかった。剣を胸に抱いたまま大きく手を振り、その隣では妹も両手を振っている。


マリーさんと王子も私たちを見送ってくれた。


「またね!」


私も何度も振り返りながら手を振った。


こうして、私たちは王宮をあとにした。


◇


正門を抜けると、アデューの賑やかな街並みが目の前に広がった。


王宮の中にいた時間はそれほど長くないはずなのに、店から聞こえる商人たちの声や、大通りを行き交う人々の喧騒が少し懐かしく感じられる。


私は大きく息を吐いた。


「終わったね」


「いろいろありすぎたでぷ」


緑の言葉に頷きながら、今回の出来事を思い返す。


「最初はオラクルを助けに行っただけだったのにね」


そこまで言ったところで、私は足を止めた。


そうだ。


オラクル。


王子が解放すると言っていたけれど、まだ本人に会っていない。


「オラクル、どこにいるんだろう?」


辺りを見回そうとしたものの、その必要はなかった。


正門から少し離れた石壁のそばに、煙草を咥えた男が一人立っていた。壁へ背中を預け、こちらをじっと見ている。


見慣れた服に、見慣れた顔。


そして、明らかに機嫌の悪そうな表情。


オラクルだった。


私たちが気づいたのを見ると、オラクルは煙草を指で挟み、ゆっくりと壁から身体を起こした。


「……随分楽しそうだったな、お前ら」


私は赤、緑、黄色と顔を見合わせた。


どうやら――ちゃんと解放されたらしい。

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