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フールの大冒険 ~聖なるマップを手に、異世界でまだ見ぬ両親を探します~  作者: ☆☆アダム☆☆


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第12話 それぞれの得意なこと


オラクルが仲間に加わった翌朝、私たちはアルセウスを出て、アデューへ続く街道を歩いていた。


門を出る直前まで黄色は何度も金貨袋の位置を確認し、そのたびにオラクルから「そんなに触ってるほうが盗人には分かりやすいぞ」と笑われていた。結局、黄色は袋を服の内側へしまったうえで紐を二重に結び、さらにその上から荷物を被せるという方法に落ち着いたらしい。


「これなら絶対に盗られないでぷ」


「歩きにくそうだけど大丈夫?」


「お金を守るためなら平気でぷ」


私が尋ねると、黄色は胸を張った。その少し後ろではオラクルが煙草を咥えながら笑っていたので、黄色はすぐに振り返って睨みつける。


「見ても駄目でぷ」


「見ただけで怒んなよ」


「盗人の視線は信用できないでぷ!」


「仲間になった初日から扱いひでえな」


「自業自得だよ」


私が答えると、赤と緑まで頷いた。


オラクルは不満そうだったけれど、煙草を吸いながら歩く姿を見る限り、本気で気にしているわけではなさそうだった。


アルセウスを離れるにつれ、人通りは少しずつ減っていった。最初は荷馬車や旅人が途切れなかった街道も、昼前には遠くに数人の姿が見える程度になり、左右には草原と低い木々が広がっている。


私は先頭を歩きながら、後ろを振り返った。


赤、緑、黄。


そしてオラクル。


昨日まで四人だったのに、今日から五人になった。


「そういえばさ」


私が声を掛けると、四人がこちらを見る。


「オラクルが何できるのか、ちゃんと聞いてなかったよね」


「何できるって?」


「戦うときとか。私たち、これからも魔物に会うかもしれないでしょ? 誰が何を得意なのか分かってたほうが動きやすいと思う」


グラスウルフと戦ったときも、最初から役割を決めたことで何とか戦えた。これからはオラクルも一緒なのだから、本人が何をできるのか知らないままでは困る。


オラクルは少し意外そうに私を見たあと、煙草を指で摘まんだ。


「なるほどな。じゃあ、お前らは?」


「私たちから?」


「人に聞くなら自分たちからだろ」


言われてみればその通りだった。


私は三匹を見る。


「じゃあ赤からね」


「任せるでぷ!」


赤は待っていましたとばかりに腰の剣へ手を置いた。


「俺は剣で戦うでぷ! 前に出て敵を倒すでぷよ!」


赤が剣を少し抜こうとしたので、私は慌てて止めた。


「歩きながら抜かなくていいから」


「格好よく説明したかったでぷ……」


「昨日まで肩を痛めてたんだから、格好つけなくていいの」


赤は残念そうに剣から手を離した。


TIMEとの戦いで負った傷はかなり良くなっているものの、まだ完全に治ったわけではない。本人はもう平気だと言い張っているけれど、無理をさせるつもりはなかった。


オラクルは赤の剣を見ながら尋ねた。


「剣は誰に習った?」


「誰にも習ってないでぷ!」


「……なるほど」


「今、弱そうって思ったでぷ?」


「思った」


「正直すぎるでぷ!」


赤が怒った。


でも、オラクルの指摘は間違っていない。


赤は剣を持っているし、三匹の中では一番前へ出て戦うことが多い。それでも剣術を誰かから正式に教わったわけではなく、今は力いっぱい振ったり、敵の攻撃を受けたりすることのほうが多かった。


「赤はまだ強くないけど、怖くても前に出てくれるよ。グラスウルフと戦ったときも助けてもらったし」


私が言うと、赤はすぐに機嫌を直した。


「そうでぷ! 俺がフールちゃんを守るでぷ!」


その直後、赤は鞄から骨付き肉を取り出した。


オラクルが怪訝な顔をする。


「なんで肉出した?」


「これも使うでぷ」


「食うのか?」


「戦うでぷ!」


「肉で?」


赤は得意げに骨付き肉を握った。


私は少し恥ずかしくなった。


「……たまに投げたり、叩いたりするんだよ」


「剣持ってんのに?」


「骨付き肉には骨があるでぷ!」


「剣にも刃があるだろ」


「肉は食べられるでぷ!」


「戦闘用としてそこを長所にすんな」


オラクルの言うことが珍しく完全に正しかった。


それでも赤にとって骨付き肉は武器であり、非常食であり、大切な物でもあるらしい。


「まあ、赤は前で戦う担当ってことでいいよね」


「任せるでぷ!」


私は次に緑を見た。


緑はいつもの本を両腕で抱えている。


「緑は魔法だよね」


「そうでぷ」


緑は本を少し持ち上げた。


「この本から魔法を出すでぷよ。攻撃する魔法も使えるし、少しくらいなら相手の動きを邪魔することもできるでぷ」


オラクルが興味を持ったらしく、緑の本へ目を向けた。


「魔導書か?」


「そんなに凄い本じゃないでぷ。俺もまだ弱い魔法しか使えないでぷよ」


緑はそこを誤魔化さなかった。


実際、グラスウルフには十分通用したけれど、TIMEの《1》には魔法を一度も当てられなかった。魔法を続けて使えば疲れるし、一発撃った直後は次の魔法まで少し時間も必要になる。


「でも緑の魔法がなかったら、グラスウルフには勝てなかったと思う」


「もっと強い魔法を使えるようになりたいでぷ」


緑は自分の本を見ながら答えた。


赤が前。


緑が後ろ。


ここまでは分かりやすい。


問題は黄色だった。


私が見ると、黄色も自分を指差した。


「俺でぷ?」


「黄色は……お金?」


「それは戦いじゃないでぷ!」


「じゃあ何が得意なの?」


黄色は腕を組み、真剣に考え始めた。


剣は使わない。


魔法も使えない。


赤のように前へ飛び出すこともなければ、緑のように後ろから大きな攻撃をするわけでもない。


でも、グラスウルフとの戦いを思い返すと、黄色は私が危なくなった瞬間に横から体当たりして助けてくれた。


オラクルから金貨袋を取り戻したときも、最後に相手の懐から革袋を抜いたのは黄色だった。


「黄色って、周りを見るの得意じゃない?」


私が言うと、黄色は首を傾げた。


「そうでぷ?」


「うん。戦ってる相手だけじゃなくて、誰がどこにいるか結構見てると思う。それに、正面から戦うより相手が油断してるときに動くほうが上手いよね」


オラクルが煙草を咥えたまま頷いた。


「それは俺も思ったな。俺の懐を抜いたときも、最初から真正面で取り返す気はなかっただろ」


黄色は少し得意そうになった。


「相手がこっちを弱いと思ってるときは狙い目でぷ!」


「それだよ」


私は頷いた。


黄色は三匹の中でも小さく、武器らしい武器も持っていない。だからこそ相手から真っ先に危険だと思われにくい。


「じゃあ黄色は、周りを見ながら隙を探す担当かな。それと、使えるアイテムがあったら黄色が使うのもいいかも」


「アイテムでぷ?」


「煙が出る物とか、相手の邪魔ができる物とか、この先手に入るかもしれないでしょ。黄色なら、いつ使えばいいか見つけるの上手そう」


黄色は気に入ったらしく、何度も頷いた。


「任せるでぷ! 高いアイテムは大事に使うでぷ!」


「値段じゃなくて必要なときに使ってね」


「もったいないでぷ……」


「命のほうが大事だから!」


そこは今後しっかり教える必要がありそうだった。


三匹の役割が決まったところで、全員の視線がオラクルへ集まる。


オラクルは煙草を咥えたまま、自分を指差した。


「俺か?」


「そうだよ。さっきから人のことばっかり聞いて、自分は何ができるの?」


「いろいろできるぞ」


「すごく怪しい言い方」


「実際、器用なんだよ」


オラクルは少し得意げだった。


「まず、人の物を盗るのが得意だ」


黄色が即座に金貨袋を押さえた。


「仲間の物じゃねえよ!」


オラクルは面倒そうに付け加えた。


「戦ってる最中でも、相手が持ってる物や腰に下げてる道具くらいなら、隙があれば抜ける。それに俺は足が速い。アルセウスで追いかけてきたんだから、お前らも分かってんだろ」


それは嫌というほど分かっている。


四人で必死に追いかけても、オラクルにはずっと余裕があった。


「それと、俺は周りを見るのも得意だ。人が何人いるか、どこから逃げられるか、何が使えそうか、誰が一番警戒してて誰が油断してるか。真正面から殴り合うより、そういうのを見るほうが得意だな」


私は少し驚いた。


黄色と似ている部分がある。


でも、経験が違う。


黄色が感覚的にやっていることを、オラクルはもっと意識して使っているようだった。


「じゃあ、オラクルも後ろ?」


「いや。俺は前にも後ろにも固定しないほうがいい。動ける場所にいたほうが役に立つ」


オラクルは街道の周囲を示した。


「例えば魔物が正面から来たら、赤が止める。緑が後ろから魔法を撃つ。その間に俺は横へ回れるし、相手が何か持ってりゃ盗れる。逃げ道を見つけるのもできる。黄色は俺とは反対側から周りを見てればいい」


思っていたより、ちゃんと考えている。


私は少し感心した。


「オラクルって、本当に戦えるんだ」


「お前、俺をただの財布泥棒だと思ってただろ」


「違うの?」


「違うわ!」


赤と緑が笑った。


黄色だけは真顔だった。


「財布泥棒でぷ」


「お前は一生言うつもりか?」


「お金の恨みは長いでぷ」


また二人が言い合い始める。


私は笑いながら、五人を見た。


赤は剣を持って前へ出る。まだ技術は足りないけれど、誰かを守るためなら怖くても立てる。


緑は本から魔法を使い、後ろから仲間を助ける。今は弱い魔法しか使えなくても、これから強くなれるかもしれない。


黄色は敵だけに集中せず周囲を見て、相手の油断や隙を利用する。これから道具が増えれば、できることも増えていくだろう。


オラクルは素早く動きながら周囲の状況を読み、正面から戦う以外の方法を選べる。


そして私は――まだ、自分が何を得意なのか分からない。


それでも、今すぐ答えを出す必要はないと思った。


三匹だって、最初から役割を決めていたわけではない。旅をし、戦い、失敗しながら少しずつできることが見えてきた。


私もそのうち見つければいい。


「よし。じゃあ次に魔物が出たら、今話したことを意識してみよう」


赤が剣の柄へ手を置き、緑は本を抱え直す。黄色は使えそうな物がないか自分の荷物を確認し、オラクルは煙草を咥えたまま肩を竦めた。


「まあ、俺がいれば少しは楽になるだろ」


「まだ何もしてないのに自信すごいね」


「そのうち分かる」


「役に立たなかったら?」


「そのときは笑え」


「じゃあ遠慮なく笑うね」


オラクルが苦笑した。


五人で再び街道を進む。


まだ新しい並び方には慣れない。


それでも、昨日までとは少し違う旅が始まったのだと思った。


目指すのはアデュー。


《聖なるマップ》がなぜその名前を表示したのかは、今も分からない。


でも、そこへ行けば何かがある。


そして今度は四人ではなく、五人でそれを確かめに行く。


私は遠くへ続く街道を見ながら、少しだけ歩く速度を上げた。

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