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sacrifice –サクリファイス–  作者: 法城院 隼
第一部 『蒼天』
4/5

第三話 「魔を司る法」

 





 この東京国立魔法学校には魔法適正という、いわば検査のようなものがあり、入学して少ししてから受けなければならない。

 この魔法適正で自らの扱える魔法の種類を知り、魔力の量の多さ、魔力値を知ってそれぞれあった授業を受けるのだ。

 使えない魔法の事を教えられても生徒としては困ったことになるためである。


 そして、その魔法適正がようやく明日に行われるのだ。

 それが終わって明後日からようやく魔法を使った授業が行われるのだ。


 だからと言ってこれまでの約一か月なにもしていなかったわけではない。

 ちゃんと普通の高校生通りの授業を受けていた。もちろん実技はないが魔法の知識やら、魔法の基礎も教わっていたのだ。モクレンは寝ていたが。


 明後日から本格的な魔法の授業にはいるにあたって最も危惧すべき問題がこの春間モクレンにはあるのだ。

 そう、授業を寝ていたので魔法の基礎も知識も何も知らないのである。

 これはさすがにまずい、と思い夜村にわかりやすく教えてもらおうと思ったのだ。我ながらよく考えたものである。


「夜村。明日から魔法適正と言っても実はおれ、授業寝ていたから全然魔法のこと知らないんだ。ちょっとわかりやすく教えてくれないか?」


 そう夜村に顔を下げて頼むと、にっこりしながら「構わないよ」と、二つ返事で返ってきたので話を聞く態勢に入る。横でヒイラギが「俺も授業聞いていなかったからたすかったぜ」と言いながら安堵していた。お前も聞いてなかったのかよ。授業はちゃんと受けるものだぞ。まったく。まあ、俺もなんだが。


 夜村がまず、片手を広げ五本の数字を示す。


「まず、魔法には種類があり、それが全部で五種類あるのは知ってるよね」


 もちろん知っている。そのために魔法適正があるのだから。それぐらい誰でも知っている。と、思っていたのだが、横で「へぇー」と驚いているヒイラギを見ると誰でもは知らないようだ。魔法学校に入るからにはそれぐらい知っておけよ。

 夜村がヒイラギを見て少し微笑むと話を続ける。


「まずは、無属性魔法。ほとんどの魔法使いが使える魔法。けれど、上位の無属性魔法を扱えるものは意外と少ない。

 次が、強化魔法。名の通り身体の強化から物の強化までできる便利な魔法だね。これも無属性魔法と一緒でほとんどの人が使えるが上位の強化魔法を扱えるものは少ない。

 そして三つ目が、自然魔法。自然の力を使ったり、生み出せたりもする魔法。

 そして四つ目が、白魔法。この魔法は少し説明しづらいんだけど、自然魔法に近い魔法だね」


「自然魔法に近い魔法?それって分類が分かれているのって変じゃないか?」


 同じ魔法ならわざわざ分ける必要などないからである。


「ん~。近いと言っても全くの別物なんだよ。似て非なるものってところかな」


「似て非なる…か」


「そう、白魔法はいわば、科学に近いね」


 魔法なのに科学に近いのか。よくわからん。


「簡単に言えば、暗闇を無くすためには自然魔法だと火を使うけど、白魔法では光そのものを使えるんだよ。まあでも、この辺は魔法適正からの方がいいかもね」


 まあ、確かに。魔法を使えない状態では魔法のあれこれを教えるのは難しい。白魔法は置いておくとして、次だ。


「そして最後の五つ目が、治癒魔法。体を癒したり、傷を治したりする魔法だね。もっとも使用者はかなり数が少ないらしいけどね」


「まあ、そんな便利な魔法たくさん使える奴がいたら大変だろう」


 フフッと、夜村が「確かにね」と、言うと。


「それと、次が位階だね」


「「位階…」」


 しまった。ヒイラギとハモッてしまった。最悪だ。何故少し照れているのだ。


「そう。魔法には位階と言って、その魔法の強大さを知ることが出来るんだ」


「へぇー。知らなかったな。レベルみたいなものか」


「まあ、わかりやすく言えばそうだね。精確には魔法陣の数だね。魔法を発動した際には魔法陣が出現するらしいのだけど、魔法陣の数が増えるにつれて、一つなら一位階、二つなら二位階という感じで増えていくんだ」


 夜村が苦笑いをしながら「まあ、僕も魔法を使ったことがないからそこらへんはよく知らないんだけどね」とつぶやく。魔法適正前なので、確かにその通りである。


「あとは、そうだ。詠唱は知ってるかい?」


「あれだろ。魔法発動前に必要な台詞だろ」


「そう。でも、鍛錬によって詠唱無しでも魔法を発動できるんだよ」


 なるほど。たしかに、戦いになればいちいち詠唱などやっていてはその間にやられてしまう。


「それを詠唱破棄というんだ。この詠唱破棄では威力は下がるものの、すぐに魔法を発動できるというメリットがでかいね。故に、戦いになればほとんど詠唱破棄になるらしいよ」


「だろうな。ところで、さっき言っていた位階なんだけど、幾つまであんの?」


 夜村が「いいところに気が付いたね」と言いながらこちらにウインクしてくる。やめろ、気持ち悪い。


「本来は七位階だね」


「本来?気になる言い方だな」


「そう、今のところそれ以上の魔法は見つかっていない。ある一人を除いてね」


 ある一人?

 誰だろう。今の技術力でも生み出せないものを生み出せるもの。

 そこまで考えたところですぐに気づく。一人だけいたのだ。


「わかったみたいだね。そう、神来椿だよ。彼は七位階を超える魔法さえ扱えたといわれている」


 マジで何もんなんだよ。化け物過ぎるだろ。


「さすがに神来椿のすごい話ってもうないよな」


 言ってから気付く、フラグだ。完全にフラグを建ててしまった。夜村もどこか嬉しそうだ。


「それがまだあるんだよ。なにせ、すべての魔法を扱え、魔力値はほぼ無限に近かったと、いう話だよ。あ、でも治癒魔法だけはあまり得意ではなかったはずだよ」


 化け物過ぎんだろう(二回目)

 なに、人間やめてんの?魔力無限ってせこくね。すべての魔法使えるって。チートじゃん。


「でも、まだあるんだよね。神来椿の得意とした魔法。黒魔法が」


「ちょっと待てよ。夜村さっき言った五つの魔法の中にないじゃん。後付けじゃん」


「フフッ。この黒魔法は神来椿しか使えるものがいないんだよ。曰く、破壊、消滅、崩壊に特化した魔法だとか」


 あーはい。わかりました、わかりました。

 神来椿はやっぱりチーターだわ。すべての魔法が使えて、魔力は無限、そして極めつけは攻撃特化の神来椿しか使えない黒魔法。そりゃ、世界崩壊(笑)できるわ。

 ていうか、その神来椿を倒した英雄ってなにもんなんだよ。話が長くなりそうだったので今は聞くのをやめておこう。

 これである程度の魔法の基礎は大丈夫だろう。

 そろそろ教室に戻ろうかと思っていると。


「随分と興味深い話をしているね」


 背後から声を掛けられる。

 振り返ると、整った顔立ちをしているが不健康そうな青白い肌がそれを台無しにしている、別のクラスの『村影 リンドウ』がいた。


「村影…」


 村影リンドウがモクレンに話かけてくるのは中々に珍しかったのである。これまでも話したのは、ほんの数回程度だ。

 普段からこの青年はクールであまり喋る方ではなく近寄り難い雰囲気を出しているのだが。

 急にどうしたのだろうか。実は歴史オタなのだろうか。


「いや…別に」


 そういって去ってしまった。


 …は?

 なんだこいつは中二病か。

 お前から話しかけといて「いや…別に」って、まるで俺はその歴史の時にいたから少し気になって喋りかけてみたが、お前達を巻き込みたくないから俺は誰とも関わらないってか。

 常に俺は孤高に凄まじくも儚い過去を送ってますってか。全く訳の分からないやつだ。


 そんな誰に突っ込んでいるかもわからない台詞を吐きながら村影リンドウの背中を見ていると、またしても声を掛けられる。しかも、背後からだ。またしても背後から。

 なんだ、みんな一日に一回は俺に背後から声を掛けないといけないルールでもあるのか?どんだけ俺が好きなんだ。


「モッくん!何してるの?」


 よりによってバカである。ちなみにモッくんというのは俺のことである。昔からやめろと言っているのだが、やめてくれないので今はもう何も言わない。

 少しウェーブがかった茶色い髪を揺らしながらモクレンの前を一人の綺麗な女の子が現れる。

 彼女の名は『星城 あかり』である。魔法学校で幼馴染にしたいランキング1位と言う称号を持っているのだが、本人は知らない。

『あかりさん親衛隊』までいる始末だ。それと同時に幼馴染にしたいランキング一位のあかりが幼馴染の俺はほとんどの男子生徒から恨まれているのだ。

 まったくもって理不尽極まりない。


「あーまたひどい事かんがえてるでしょ」


「考えてねーよ」


「それよりさー、モッくん!明日魔法適性だよ」


 その話は先程に夜村達としたばっかりであった為、あえてスルーをする。


「星城さん、こんにちわ」


「ツワブキくんーこんにちわ」


 本当にこいつは幸せそうな奴だ。


「星城さんも楽しみなのですか?」


「うん!すごーく楽しみ」


「左様ですか。実は僕も随分と待ちわびているのですよ」


 いちいち変な喋り方をする奴である。もっと普通に喋れないのか、この男は。

 漢字が多いんだよ。あと変なポーズつけないと喋れないのか。


「おれもすげーたのしみだぜ」


 ヒイラギ…お前は平仮名が多いぞ。

 漢字が多いといったがそうじゃない…全く困ったものである。


「ねぇねぇモッくんは?」


「すげー楽しみ(棒)」


「なんか適当」


 なんだその顔は、頬を膨らませてちょっと怒ってますよアピールをするんじゃーない。あざとい。クソッ可愛いじゃーねーか。

 まあ本人には言わないが。


「ってそんな事よりもう授業始まるんじゃね?」


「ああ、そうだね。じゃあ僕は教室に戻るとするよ。アドュー」


 は?

 アドュー?

 何それドユコト?

 まあいいや、ほっとこほっとこ。


 幸いな事に夜村とモクレンは横のクラスの為、あまり会う事がないのだ。


「俺たちも戻ろうぜヒイラギ、あかり。」


 そう言って俺たちは教室へ戻った。



 教室に戻ると明日の魔法適正についての話をして学校は終わったので寮へと戻る。

 俺とヒイラギは両親がいないのでこの学校の寮に入っているのだ。だから帰るといっても校舎のすぐ近くの寮棟へと戻るだけなんだが。

 はじめのうちは毎日が修学旅行みたいで楽しかったが一か月もたてば何も思わなくなっていく。


 二人一部屋だったが同じ部屋がヒイラギで助かった。

 実は俺、春間モクレンはヒイラギと夜村とあかりしか友達がいないのだ。

 人見知りではないのだが、例の『あかりさん親衛隊』から狙われているので友達ができないのでいる。

 まったくいい迷惑だ。まあ別にそんなに友達を増やすタイプでもないので特に困りはしないのだが。


 明日の魔法適正にそなえて早めに寝ておくことにしよう。







 魔法解説


 【万全の盾/シールド】

 創作者:黄金の夜明け団 創作年:1888年 (イギリス)


 第二位階 無属性魔法

 魔力で出来た盾を張る。


 ――魔法戦闘においての基礎となる魔法――



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