第四話「未だ知らずと書いて未知」
朝が訪れる。太陽の陽光に瞼を焼かれモクレンは目を覚ます。
目覚めはいい方なので、すぐに意識は覚醒する。
隣のベットで寝ている金髪のバカ…ヒイラギを叩き目を覚まさせる。
「起きろヒイラギ。朝だぜ」
「いてぇててて」と言いながら頭を押さえながらヒイラギは目覚める。ヒイラギも目覚めはいい方なので叩く必要はないのだが、いつも手が出てしまうのだ。仕方がない。
「いつも助かるけどよぉ、叩かなくてもいいんじゃぁねぇえか」
ヒイラギが腕を伸ばしながら言ってくる。
「今日は待ちに待った魔法適正の日だろ?だから早めに起こす必要があったんだよ。」
適当に言い訳を言いながら俺たちは学校へ行く支度をする。
「そーだったぜ。やっと魔法が使えるぜ」
朝の支度を済ませ、朝食をとってから学校へと向かう。寮のいいところは学校までがすぐというところだな。
教室へ着くと体育館で集合との張り紙があったので俺とヒイラギは体育館へと向かう。「モッくん、おはよう」とあかりが無邪気な笑顔で手を振ってくる。
まったく、朝から元気な奴だ。可愛いな、おい。
体育館に着くと、夜村と目があった…あってしまった。
「モクレン君。おはよう、今日はようやく魔法適正の日だね」
「おはよう、夜村」
時間になると、生徒たちも集まり先生達が集まり始める。
「あれは見たことない人だな。」
目の前に先生達が並ぶが、真ん中にいる女の人を見たことがない。
ポニーテールで気が強そうな印象の人だ。
「あの服装は…」
夜村がそうつぶやく。
確か、どこかで見た覚えのある服なのだが全く思い出せない。
学ランのような真っ黒の長ランに裾から腰まである白いだんだら模様。左腕には漢字で「二」と書かれたワッペンが縫ってある。
何より日本刀を帯刀している。この国では武器の所持は禁じられているのだ。ある組織を除いて。
「初めまして、東京国立魔法学校の生徒たち。私は魔導騎士団の二番隊を任せられている二番隊騎士長…下崎 美優だ」
魔導騎士団。
神来椿が起こした悲劇…通称「史上最悪の大事件」時に活躍した英雄、水月アヤメにより創られて警察同等の権力を持つ組織である。
この組織は唯一、日本刀の帯刀を認められているのだ。
なんでも、魔法戦闘において魔法は遠距離攻撃が得意な反面、近接攻撃に弱いのだ。近接魔法もあるのだが。ともあれ、それを補うために日本刀を帯刀しているんだとか。騎士というより武士だな。
「騎士団の公務員みたいだね。あの制服から見てそうかと思ったんだけど、やはり騎士長だったね」
夜村はわかっていたようだ。
夜村曰く、魔導騎士団の一般騎士は腰までの制服らしいのだが、騎士長はだんだら模様がはいった長ランみたいな制服らしい。ちなみに、同じ長ランでもだんだら模様がなければ副騎士長らしい。
そして、二と書かれたワッペンが所属している隊なんだとか。
でも、なぜわざわざ騎士長が学校にいるのだろう。
「最近、魔法を悪用したテロリストたちが増加している。だが、戦うにもこの世界ではまだ魔法使えるものが少ないのだ。そこで我ら魔導騎士団は才能ある学生たちを引き抜くことにしたのだ。とは言え、いきなり前衛には出さない。それに、学業などは続けれるようにもしよう」
この魔法適正で才能あるものはそのまま魔導騎士団に入れるというわけである。
生徒たちは驚いていたが、みんな喜んでいた。それもそのはず、この学校に入った時点で魔導騎士団に入りたいっと言っているようなものだからである。
この学校は別名「魔導騎士団育成所」と呼ばれているぐらいである。俺は違うが。ただ単に施設から魔力があるといわれ、追い出された感じだ。
まあ、ともあれ。先生の説明が終え、いよいよ魔法適正が始まる。
「魔法適正って、もっとロマンがあると思っていたよ」
現実は残酷である。
大きな機械の中に入り体を機械で調べ、あとは病院などの検査のようなものだ。
もっと、魔法で調べるものとばかり思っていた。
こう、水晶に手をかざすだとか。魔道具とかで調べるとか。そもそも魔道具なんてものはないのだが。せめてでっかい喋る帽子ぐらい被りたかったぜ。
とくに面白いことも起こらず魔法適正は終わった。
一つ言えば、俺の時に機械が壊れたぐらいである。
魔法適正も終わり教室で待機する。
「モクレンなんか壊してたな」
ヒイラギがにやにやしながら話しかけてくる。
「知らねーよ。勝手に先生たちが騒ぎ出したからこっちまで焦ったぜ」
本当に焦った。今まで順調だった機械が、俺が入った途端に異常音が出て先生たちも大パニック。意味も分からず、機械が治るまで晒しものにされている気分だった。
「もっくん。どうだった?」
あかりも魔法適正が終わったようである。
女子と男子は別々の為、ほとんど会う機会がなかったのである。
「とくに…フツーだったよ」
そんな話をしていると先生が教室に入ってきて何人かを呼び出す。
俺とヒイラギとあかりが呼び出される。
「一体何なんだよ」
俺たちは先生に言われ職員室へと向かう。
「モクレンが機械壊したからじゃね?」
「だったらヒイラギたちまで呼ばれないだろ」
始めに呼ばれた際は、機械のことだと思っていたが、ヒイラギ達が呼ばれてホッとしたものだ。
そんな会話をしていると見知った顔の奴が近づいてくる。
「モクレンくん達も呼び出しかい?」
夜村と見たことがない生徒がいた。制服を着崩した不良と整った顔立ちをしてとてもきれいな女の子だ、でも無表情なのでそれが台無しにしている。
「夜村たちも?」
「そうなんだ。彼は春間モクレンくん、そして星城あかりさんと川崎ヒイラギくんだ。」
夜村は隣にいた女の子と不良に俺たちの事を紹介する。
「俺は白石 桔梗だ。よろしくな」
そういうと不良…もとい白石は右手を差し出して握手を求めてくる。意外にも礼儀正しい、と感心しながら「よろしく」と言い、握手に応じる。
「……島崎……秋…」」
島崎は見た目通り不愛想だった。
そこにもう一人やってくる。
「村影も?」
前に声をかけときながらどっかにいった、やつである。
「そう」
相変わらず不愛想である。そんなこんなで俺たちは職員室へと向かった。
職員室に着くと、待合室へと移される。
待合室には先ほどいた魔導騎士団の下崎がいた。
「よく集まってくれた。予想はついていると思うが君たちには魔導騎士団に入ってもらいたい。保護者にはもう連絡はとってある。強制ではない」
「なるほど、先ほど言っていた引き抜きですね」
夜村が訪ねる。
「そうだ。もし、入ってくれるのならクラスはここにいる者たちだけの特別クラスになる。それと、これからはこの学校ではなく、近くの魔導騎士団の詰め所での生活となる。授業も住むところもだ」
たしかに。騎士団の仕事もしつつ学業も両立となると、俺たちだけのクラスがいる。
この学校の寮に入ったばかりなのにまた引っ越しか。
「入ってくれるのなら、この紙にサインをもらおう」
みんなの前に魔導騎士団について書かれた用紙が渡される。
「あれ?俺だけないんだけど」
みんなは紙を受け取っていたが、モクレンだけ紙が渡されなかった。なに、いじめ?俺泣くよ?
「君の場合、騎士団には強制的に入ってもらう。」
「は?」
どうゆうことだ。訳が分からない。いじめか。やはり、いじめなのか。
「なぜですか?」
「魔法適正とは何を調べるかわかるか?」
「魔力値と魔法属性です。」
今回行われた魔法適正では魔法を使う上で必要となる魔力値とどんな魔法が使えるかを調べるものだ。
「春間モクレン。君の魔力値は平均値だった。むしろ、川崎ヒイラギの方が異常の数値であった。」
「そーなのか」
ヒイラギの方を見てささやくと、なぜか得意げだ。むかつくな。
「それよりも…魔法属性だ。君の魔法属性が少し変わっていてな」
「かわっている?」
かわっている、とはどういう事だろう。
魔法属性が変わっていると、いうことは普通とは違うということだ。普通とは違うということは五つの属性ではないということだ。
「まさか…」
一つの可能性におもいあたり尋ねる。
「そう…。未知の属性が現れたのだよ」
未知の属性。
見つかっていない属性ということになる。
この世界において未知の属性というのはある一つを覗いてないはずだ。そう、今までに使用者が一人しかいない魔法属性なら未知になるだろう。
しかも、それが百年も前となれば…
「春間 モクレン。君の持つ属性が黒魔法の可能性が出てきた。故に君は重要監視対象として騎士団に強制的に加入してもらう」
黒魔法。
歴史上一人しか扱えず、世界を絶望へと追い込んだ魔法。俺はとうとう世界からもいじめられているようだった。
「うそだろ…」
みんなが驚き、どこか不安のまなざしで見てくる。でも、その中でヒイラギは――
「やっぱモクレンはすげーな」
ヒイラギはモクレンの肩に手を置き、褒めてきた。相変わらず何も考えていないようだ。
「まあ、でも助かる」
ヒイラギに励まされていると、下崎が微笑みながら近づいてくる。やばい、この人近くで見たらめちゃくちゃ美人じゃないか。
「そうだ、落ち込む必要はない。むしろ、その黒魔法が扱えれば君は騎士団にとって大きな戦力となる」
黒魔法を扱えることが出来れば、強大な力を手にできるだろう。世界を救うことだって、滅ぼすことも。
モクレンは強制加入となり、他の者たちも用紙を書き終えて魔法適正の結果の報告をしあった。
ヒイラギは強化魔法が得意であり、魔力値が異常に高いのだ。
夜村は白魔法が得意だが、ほとんどの魔法を使える。そのためか、魔力値が低いらしい。
あかりは珍しい治癒魔法が得意であり、魔力値は普通。
不良の見た目をした白石は自然魔法が得意で、魔力値はすこし高いぐらい。
無口な村影はほとんどが得意魔法で、魔力値も高い。
そして俺、春間 モクレンは黒魔法?が得意で、魔力値は普通。
一番驚いたのが、下崎に絶賛されていた島崎だ。
無属性魔法が得意、本来無属性魔法とはだれもが使える魔法なのだが、無属性魔法が得意なものは珍しいのだ。そして、魔力値はヒイラギに劣るも、それでも十分に高いらしい。
だが、俺が最も驚いたのは――
――島崎秋が男だったことだ。
魔法解説
【改・森羅万象の盾/シールド】
創作者:神来椿 創作年:1984年(日本)
第六位階 無属性魔法
使用者の全面に強力な魔力の盾を張る。
【万全の盾/シールド】を神来椿の手で改良されたもの。




