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リライト・デッドエンド  作者: 未確定ログ
第1部 欠けた世界編 -崩壊-
31/56

第三十一話 空のない世界

空が消えた。


上を見ても、何もない。


青も。


黒も。


星も。


月も。


存在しない。


ただ、“終わりのない白”だけが広がっていた。


神崎悠真は、その白の中へ落ちていた。


感覚がない。


上下も分からない。


音も遠い。


「……兄貴」


声。


結衣だ。


悠真は手を伸ばす。


だが掴めない。


世界そのものが不安定だった。


景色が切り替わる。


教室。


病院。


雨の交差点。


崩壊した街。


全部が混ざっている。


【観測装置 崩壊進行】

【世界整合性 消失】


スマホの文字すらノイズ混じりになる。


悠真は息を呑む。


人がいた。


だが。


顔がない。


通行人たちの輪郭が崩れている。


声だけが響く。


「誰だっけ」


「思い出せない」


「空って何?」


世界から、“概念”が落ち始めていた。


先行保持者が現れる。


崩れたビルの上。


白い空間の中で、静かにこちらを見下ろしている。


「始まったな」


悠真が叫ぶ。


「何がだよ!」


先行保持者は空のない世界を見上げる。


「観測崩壊だ」


その瞬間。


遠くの建物が、突然“消える”。


崩壊じゃない。


最初から存在しなかったみたいに。


悠真の背筋が冷える。


「観測装置が壊れると、世界は固定できなくなる」


先行保持者の声は静かだった。


「今までは“空”が世界を定義してた」


悠真は白を見上げる。


空がない。


つまり。


世界の“上限”が消えた。


その時。


結衣が悠真の腕を掴む。


「兄貴」


振り返る。


結衣の姿も少し揺らいでいる。


だがまだ消えていない。


悠真は強く手を握る。


「離さない」


結衣は少しだけ困ったように笑う。


「……うん」


その瞬間。


遠くで悲鳴が上がる。


人々の身体が、ノイズみたいに崩れていく。


顔が消える。


腕が消える。


存在そのものが欠け落ちていく。


【観測脱落者 増加】

【世界維持率 38%】


先行保持者が目を細める。


「始まったな」


悠真が睨む。


「だから何なんだよ!」


先行保持者は静かに言う。


「“覚えられてない存在”から消える」


空気が凍る。


結衣の指先が震えた。


悠真は理解する。


観測が壊れた今。


世界を固定するものは。


“誰かの記憶”しかない。


その時。


悠真のスマホが黒く染まる。


【新規世界法則 適用】

【存在条件:記憶】


次の瞬間。


通行人の一人が突然、完全に消えた。


誰も気づかない。


消えたことすら、“記録されていない”。


悠真の呼吸が乱れる。


結衣が小さく呟く。


「兄貴……」


「私、多分もう長くない」

読んでいただきありがとうございます。

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