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宗円剣友会

 “宗円剣友会"は地図で見る限りはそう遠い距離というわけでは無いのだが、山奥なだけあって辿り着くのに予想以上の時間がかかった。視界を遮るようなことは無いが霧深い土地のようで、霧のかかっていない山は見かけなかった。乗り合わせた人たちは皆、目的地が同じであり、道場の割に名前が趣味っぽいという話をする人もいれば、師範は高名な人だと言う人もいた。大半は面白半分で来ているようだ。かくいう俺も、どの程度役に立つのか半信半疑だ。

 「着いたぞー!」

 御者の声がしてすぐに辺りを見回すが、建物が無い。代わりに山の上方へ向かう石階段があった。…ここへ来るまでもかなり登ってきていたはずだが。戸惑いつつも順に降りていく人たちを横目に御者に確認する。

 「この上なんですか?」

 「そうだ。俺は夕方にもう一回ここへ来るから、諦めるなら夕方までに戻って来い。」

 俺も降りて、他と同じように見上げる。霧に阻まれて見えないゴールが気力を削ぐ。どうやらこれが洗礼のようだ。

 「…最悪、野宿だな。」

 「そこまでじゃ無いだろー…多分。」

 他の面々に釣られるように、俺たちは長い階段を登り始めた。


 「あれ?建物じゃね?」

 カイルの声に顔を上げると、確かに建物らしき片鱗が見える。遂に見えて来たゴールに気力を少し取り戻し、テンポ良く登っていくと建物の輪郭が鮮明になっていく。が、それは道場と呼ぶにはあまりにも小さい。というか、小屋だった。その奥にはまだ階段が見える。どうやら中継地点のようだ。息を切らしたまま近づくと、その小屋が店であることがわかった。

 「…高いな。」

 「ああ…」

 品物、といっても水と軽食しか無いが、その全てが相場の3倍ほどだった。いい商売してやがる。とは言え、先の見えないこの状況では買わざるを得ない。俺たちは第2の洗礼として水を購入して少し休んだ後、再び階段に向き合い始めた。


 「なんか、あるな。」

 日が傾き、茜色が背中を照らす中、再びカイルの声に顔を上げると、門らしき片鱗が見える。祈るような気持ちで登っていくと、遂に階段の奥から大きな建物が姿を現した。ようやく辿り着いたようだ。馬車を降りたのが昼頃だったとは言え、本当に日が暮れかかるとは思わなかった。最上段にへたり込んだ俺たちは息が整うのを待つように夕日を眺めていた。

 「誰だお前ら?」

 突然、声をかけられた。内心驚いたが、息が切れていたおかげで声を上げることは無かった。

 「体験、入門、で。」

 「おぉ、登って来たのか。金は?」

 「あります。」

 いきなり金の話から入るとは思わなかったが、道場の人のようだ。おじいさん、と呼ぶ方が相応しそうな風貌の男は金を数え終えると部屋に案内すると言って歩き始めた。軸のある確かな歩みで心得があるとわかる。

 「あの、あなたは事務の担当者か何かですか?」

 「俺はソウエン。一応、ここの代表だ。」

 代表、ということは師範というやつだろうか。…金の話から入る師範なんているのか?がめつさを思わせる会話と強さを示す歩みが、俺の不安と期待をそのまま残した。

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