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道場に賭ける

 剣の練習をしようと誘われた俺は、カイルと一緒に朝の澄んだ空気の中を馬車で移動していた。こうして人気の少ない山へ度々来るが、カイルの剣の相手をするのは正直、気が重い。俺にはカイルほどの剣才が無いらしく、素振りやちょっとした打ち合いならともかく、実践さながらの立会いをすると歯が立たない。それに加えて、カイルは実質的に怪我をしないので戦い方に躊躇が無い。今日も今日とて、突進を軸にした動きで地面に倒され、木剣を向けられた俺は両手を挙げて降参を示していた。

 「最近、重大な事実に気づいちまったんだ。」

 「どんな?」

 俺は立ち上がり、砂埃を払いながら聞く。普段は勝ちは勝ちだといって笑顔を見せるところだが、今のカイルは喜ぶ素振りを見せない。

 「俺たち、弱くね?」

 「…まー、騎士団とかよりは弱いよなー。」

 俺の脳裏に東の国での一件が蘇る。こうして生き残ってはいるが、あの時はボコボコにされたという表現がお似合いだった。それを抜きにしても俺が近距離の戦いで勝ったことは一度も無いけど。

 「と、いうわけで!体験入門に行こーぜ!」

 「入門?」

 カイルが取り出した紙切れは、とある武道場の体験入門案内の広告だった。金を払えば1週間、住み込みで指導が受けられるらしい。剣だけでなく槍や弓、護身術なんてものまで書かれている。こういうのは大抵、1道場につき1つでは無いのか?間口の広さが、得も知れない怪しさを醸し出している。

 「なんか、俗っぽいな…」

 「だいじょーぶだって!ギルドの掲示板にも貼ってあったし!」

 「信用出来ねー。あいつらチェック甘いだろ、絶対。」

 あのギルドが厳選して掲示板に載せているとは思えない。まー何も無いよりはマシだが。

 「1週間だけだし、いいだろ?もうまともな指導を受けられる方に賭けちゃったんだよー。」

 「そんな賭けすんなよ!」

 「確かめに行くのは俺なんだから絶対勝つ賭けなんだぜ?乗らない手は無いだろ?」

 やたら推してくると思ったらそういうことか。掲示板で遊ぶのはギルドでは珍しく無いことなんだろう。俺はやったことないけど。

 「…それに、気にならないか?ガイリってやつのこと。カイエル達は今も絡まれてる可能性が高いし、今のうちに少しでも強くなるヒントが欲しい。」

 確かに俺もあの動きは気になる。様々な力が集まる西の国で護衛同士の戦いなんてことになったら、足手纏いになりかねない。俺も、強くなりたい。

 「…勝った金でなんか奢れよ?」

 「決まり!」

 数日後、俺たちは東の山奥にあるという道場に向けて出発した。

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