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第七話:始まりの夜

時刻は18時、夕食の時間だ。

夕食のメニューは豪華で、ハンバーグと多めに盛られた米、具だくさんのスープだった。


カイリ

(夜は肉も出るのか…)

(というか僕の普段の食事より豪華じゃないか…?)


シャム

「どうかしましたか?」


カイリ

「いや、随分豪華なんだなと…」


シャム

「そうなんですか?」

「夜はいつもこんな感じですよ」

「少々量が多いので、残さないようにするのが大変です」


いただきます、と丁寧に手を合わせてから、料理を頬張り始める。

そして、時間をかけてゆっくりと食べ終えた。


シャム

「ごちそうさまでした」

「この後夜間巡回ですよね」


カイリ

「そう、21時から矢車と巡回があります」


シャム

「気をつけてくださいね」


カイリ

「気をつけてって…別に大丈…」


シャム

「あなたが思うより、この監獄は…この国は危険です」


カイリの言葉を遮るようにして、シャムが言葉を発した。


シャム

「この刑務所では、囚人ではなく看守がよく死にます」

「暴動や脱獄の際に、囚人に殺されるなんてこともありますし…」

「僕と関わった看守は、僕に殺される、なんて噂もありますから」

「事実、看守の死体は処理しきれずに遺体安置所に半ば放置されているとの噂です」

「遺体安置所からは、夜な夜な看守の幽霊の声が聞こえてくるそうですよ」


カイリ

「こ、怖いこと言わないでよ」


シャム

「すみません、ちょっと怖がらせちゃいました?」

「ふふ、冗談です」

「まあ、なんにせよ危険な仕事に就いているという意識は持っておいた方がいいですよ」


カイリ

「分かってます」


シャム

「では、時間になるまで、この監獄の七不思議を教えてあげましょう!」


カイリ

「い、いい!いらないから!!!」


ーーーーーーーーーーーーーーー

現在時刻21時前


シャム

「おっと、そろそろ時間ですね」


カイリ

「そうですね、消灯の時間なので寝る体制に入ってください」


シャム

「わかりました」


シャムは薄いベッドの上に寝ころんだ。

長い髪で表情はよく見えない。


シャム

「…カイリくん」


カイリ

「何ですか?」


シャム

「また明日」


カイリ

「……」

「また明日」


シャムは、ふ、と小さな笑みを漏らすと「おやすみなさい」と一言。

カイリは牢屋の照明を消し、部屋の外に出る。

ーーーーーーーーーーーーーー

現在時刻21時。


カイリは矢車と巡回の為に合流していた。


リツ

「よっす、津島!巡回よろしくな」


カイリ

「こちらこそ」


流石に夜は静かにしないといけないのが分かっているのだろう、リツは控えめに話しかけてくる。

コツコツ、と小さな靴音だけが耳に入ってくるだろう。


リツ

「疲れてないか?」


カイリ

「あ~、結構疲れてるかも」


リツ

「まあ、あの終末の堕天使が相手だもんな」

「色々周りの視線とかもしんどそうだもんなー」

「もしなんかあったら言えよ」

「同期のよしみってやつだ!」


リツはニカッと笑う。


カイリ

(コイツ、結構良い奴なのかもな…)


カイリ

「ありがとう矢車」


リツ

「ああ、リツでいーよ」


カイリ

「リツ」

「じゃあ、僕のことはカイリでいいよ」


リツ

「りょ~!」


カイリ

「リツの方はどうなの?」

「あの小さい男の子、えっとナナ、だっけ」


リツ

「そう、ナナちん」

「めっちゃ良い子なんだよなー」

「囚人ってさ、怖いイメージあるけどさ、ああいう子もいるんだってビックリした」


カイリ

「"囚人なのに良い子"って、看守長に聞かれたら ぶん殴られるね、きっと」


リツ

「だな」

「…なんかさー」


カイリ

「ん?」


リツ

「囚人は天界で悪いことしたからココに落とされてくるんだろ?」

「でもさ、たとえばさ、冤罪だったらどうすんだろうな」


カイリ

「冤罪?」


リツ

「そ。ホントは悪いことなんかしてないのに、誰かに罪をなすりつけられたとかさ」

「それでも、ココに落とされて、ずーっと囚人扱いされんのかな」

「だって、ナナちん見てたらさ」

「あんな子が、天界でとんでもない悪事を働いたとは思えねーんだよな」


カイリ

「……罪人が、みんな悪人とは限らないってこと?」


リツ

「そうそう。そもそも、誰がそいつを悪人だって決めんのかなーって」

「一回、悪人って決められたらさ。もう、何したって悪人のままなのかな」


リツは納得のいかない様子で首を傾げた。

罪人だから悪人。

そんな単純な話で片づけてしまって、本当にいいのだろうか。


カイリ

「難しい話だよね…」


リツ

「だな」


しばらく沈黙が続く。


リツ

「…っと、この部屋で最後だな」


そう言いながらリツは扉に手をかけようとする。

その扉の札には「遺体安置所」の名前が。


カイリ

「ちょ、ちょっと待ってリツ」

「ここは巡回しなくていいって地図に書いてあるよ」


リツ

「あれ?そうなのか?」

「それじゃあ戻って寝るか~」


カイリは内心ホッとしながら、扉から背を向けた。


   ヵ"リ


カイリ

(!?)


カイリ

「い、今、音がしなかった?」


リツ

「え?音?どこから」


カイリ

「遺体安置所から…」


リツ

「うーわ最悪。異変があったら見なきゃいけないよな、コレって」


カイリ

「で、でも僕の気のせいかもしれないし…」


リツ

「囚人が死体漁りとかしてたらどーすんだよ」

「俺、明日ドヤされるのイヤだぞ」


カイリ

「そ、そうだよね…」


リツ

「嫌なのは俺も同じ!」

「ほら、新人看守さん、勇気出してファイト!」


リツはそう言ってカイリの背中をポン、と叩く。


カイリ

「え、ええ~。僕が開けるの?」


リツ

「(⌒∇⌒)b」


カイリ

「はぁあ~……」


溜息をつきながら、カイリは遺体安置所の扉を開けた。

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