第五話:監獄での生活②
時刻は13時。
ここから4時間ほど、自由時間となる。
中庭で運動する者、図書館で本を読む者、囚人同士でチェスをしたり、
たまに天界の家族が面会にくることもあるらしい。
シャム
「カイリくん、キミに見せたいものがあるんです」
カイリ
「僕に…?」
シャム
「中庭に連れて行ってもらえませんか」
シャムの言う通り、カイリ達は中庭にやってきた。
初めて中庭を見たその光景に、カイリは目を奪われる。
四方を高い石壁に囲まれたその空間は、天井を見上げれば、どこまでも澄み渡る青色が広がっている。
天井一面に埋め込まれた石が淡い光を放ち、精巧な幻影を映し出しているのだ。
薄く流れる白いモヤはゆったりと形を変えながらゆったりと流れていく。
陽光を模した柔らかな光が中庭全体に降り注ぎ、石畳や植え込みを明るく照らしている。
カイリ
「こ、これは…何?綺麗だ…」
シャム
「知らないのも無理はありません。本などで見たことはないですか?」
「"空"ですよ」
カイリ
「これが、空…」
カイリは幼いころの思い出を思い浮かべた。
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13年前。
カイリ
「おかーさん、絵本よんで!」
カイリの母
「もう、また?カイリはお空の絵本が好きなのね」
カイリ
「うん、だってここ、お空ないもん」
「お空、いつか見てみたいなー!」
カイリの母
「…そうね、いつか見てみたいわね」
「囚人さんが出獄するときに、一緒に見られると思うわよ」
カイリ
「ほんとー!?なら僕、将来は立派な看守になる!!!」
「それで囚人さんと一緒にお空見る!」
カイリの母
「うふふ、なれるわよ、あなたなら」
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シャム
「忘れてしまったので、たまにこうして中庭にくるんです」
「本物の空を思い出せるように、と」
「お気に入りの場所なんです」
カイリ
「…連れてきてくれて、ありがとう」
シャム
「おや、看守が囚人に感謝するんです?」
「ふふ、どういたしまして」
カイリ
(そうだ、僕はいつか空を見てみたいから看守になったんだ)
(コイツと…外に出られるんだろうか)
(……)
(……?)
(………)
(無理ゲーな気がする…)
シャム
「どうしたんですか?頭を抱えて」
カイリ
「いや、なんか悲しくなってきて」
シャム
「情緒不安定なんですか?」
カイリ
「失礼だな!鞭いきますよ!?」
シャム
「おお怖い」
そんなやり取りをしていれば、「おーい!」と声がした。
そちらを見れば、茶髪の看守…矢車リツが笑顔で走ってくるのが見えた。
リツ
「津島~~!!元気か~!?殺されてないか~!?」
カイリ
「……見ればわかると思うけど」
シャム
「お知り合いですか?」
カイリ
「ああ、同期だよ。今日から看守になった…」
リツ
「矢車リツで~す!ヨロシク!アンタがしゅうまっちゃん!?」
「ヤベー!死ぬ~!!」
シャム
「あはは、愉快な方ですね」
カイリ
「ねえ矢車、あなたの担当囚人はどうしたの?」
リツ
「あれ?あ、あそこにいるぞ!」
そう言って後ろの方を指をさす。
そこには、ピンク髪をした小柄な男の子が一生懸命、こっちに走っているのが見えた。
?
「リ、リツさぁん、まってぇ~~!!!」
リツ
「ナナちん遅い~!」
どうやら囚人を置いて、リツ一人だけ突っ走ってきたようだった。
カイリ
「え、えっと、どっから突っ込んだらいいのか分かんないんだけどさ…」
「まず囚人ほったらかしにしてるのはマズいだろ!」
「あとナナちんって何!?」
リツ
「囚人番号7321って言いづらいから、ナナちん!覚えやすいっしょ!」
ナナ
「はぁ、はぁ……。や、やっと追いつきましたぁ…」
「あ、えっと囚人番号7321、です。す、すみません…ぶたないでください…!」
カイリ
「いや、ぶたないけど…」
リツ
「そーそー、津島!お前に言いたいことがあったんだよ!」
「夜間巡回、俺と一緒になったから!」
「21時の消灯時間過ぎたら合流なー」
カイリ
「あ、そうなんだ。わかったよ」
リツ
「それじゃ!またあとでな!」
リツはそう言うと、ナナの方に向く。
リツ
「よーし、ナナちん!一緒にバスケしようぜ!」
ナナ
「え、ええ?ボクしたことないですし、運動はニガテですしっ…!」
「1対1でどうやってやるんですかっ…!?」
リツ
「やる前から諦めてたら、試合終了だぞ!!」
ナナ
「えぇ~~!?!?」
ナナを小脇に抱えて、嵐のように去っていった。
シャム
「にぎやかでしたね」
カイリ
「頭が痛いよ…」
絶対看守長にドヤされるだろうな…と考えるカイリなのであった。




