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第四話:監獄での生活①

現在時刻は8時半。

ここから囚人達は3時間程度の刑務作業を行う。

刑務作業の内容は、畑仕事、理髪、軽作業、清掃、洋裁などが主となる。


囚人達が生み出すものは、みなこの監獄の糧になり、国の維持や運営に充てられるのだ。

11時半になれば、作業の終了を告げる鐘が鳴る。

それまでは、誰一人として勝手に持ち場を離れることは許されない。


このシャムに至っても同じこと。


聖堂の清掃と修復。

それが、彼に与えられた特別な刑務だった。

床を磨いたり、破損した聖具の修復がメインとなる。

神に背いた堕天使が、毎日聖なる場所を磨かされるという、なんとも皮肉なものを感じる。

…といっても、彼は記憶がないので、何も感じないかもしれないが。


この聖堂は、17時の"祈りの時間"に使われる。

神に祈り、許しを請うための時間だ。

神に許されたものは、刑期が早まり、外の世界に出られるようになるらしい。

もっとも噂程度でしかないが…。


カイリ

「これより刑務作業を始めます」

「囚人番号0、準備をし、取り組み始めてください」


シャム

「……」


カイリ

「囚人番号0?」


カイリがシャムの方を見れば、神の像に向かって熱心に祈りを捧げていた。


シャム

「ここでは、罪人であろうと、等しく膝をつくことを求められ…」

「等しく祈ることを許される」


「私が神に祈るのは、変でしょうか?」


カイリ

「……いや、ちょっとビックリはしたけど、」

「真面目に祈りに取り組むのは、いいことだと思います」

「ただ、今は刑務作業の時間なので、そちらに集中してください」


シャム

「すみません、これが私の日課でして」

「では、仕事に取り組みます」


そう言って、シャムは長い髪の毛を引きずりながら床を懸命に磨く。

他の囚人は誰もいない。

どうやらシャム1人でこの聖堂を綺麗にしているらしい。


カイリ

(大変そうだなぁ…)

(いつもかかさず磨いているんだろうな)


床を磨き終えたシャム。

次は聖杯の修復作業に取り組む。

杯の縁には細かな傷が幾筋も走り、脚部に施された蔦の模様には、黒ずんだ汚れがこびりついている。

まずは柔らかな布で表面の埃を払い、専用の研磨剤を少量つける。

円を描くように磨いていけば、くすんでいた銀の表面が、少しずつ本来の輝きを取り戻していった。


ステンドグラスから差し込む光が、シャムを照らす。


カイリ

(綺麗だな…)

(って、聖具がね、聖具が…!!)

(何を考えているんだ僕は…)


シャムは愛おしそうに聖具を見つめる。

その瞳の色には、懐かしさが宿っているような気がした。


カイリ

(なんでそんな顔ができるんだろう)

(この人は、いったいどんな罪を犯したのだろうか…)


ーーーーーーーーーーーー

3時間後。


カイリ

「刑務作業終了。片づけをしてください」


シャム

「おや、もうそんな時間ですか」


シャムはどこか名残惜しそうに片付けを始める。

片づけが終われば、この後は12時から昼食となる。

独房に戻る為に、聖堂を後にした。


長い廊下と螺旋階段。

その最中、何人かの囚人と看守達とすれ違うだろう。


"好奇の目"


"恐怖の目"


色んな意味をはらんだ視線が、シャムとカイリを突き刺す。


カイリ

(気にしないようにしないと…)


看守A

「おい、あれ新人と、例の終末の堕天使じゃねぇか」

「この間一人殺されたばっかだよな」


看守B

「ああ、遺体はまだ保管されてるらしいぜ」

「処理が追い付いてないんだとさ」


看守A

「今度の新人は何日もつかねェ」


看守B

「俺は3日に賭けるぜ!どうせすぐ殺されるだろう」


看守A

「じゃあ俺は2日だ!勝った方今度おごりな!」


ギャハハ、と下品に笑いながら看守達は遠ざかっていく。


カイリ

(アイツら、人をなんだと…!)


シャム

「ここでは、これが普通です」


怒りを我慢していたカイリに対し、シャムが小さな声でつぶやいた。


シャム

「この監獄は、常に刺激を求めている」

「人が一人死んだところで、それは彼らにとっての娯楽でしかない」

「私のバディになったのなら、慣れるしかありません」


カイリ

「…わかりました」

「なんとなくですけど、あなたは看守を殺してないと思うんです」

「なんとなく、ですけど」


シャム

「どうしてそう思うんです?まだ会って間もないのに、私のことを理解できるとは思えません」

「本当に殺しているかもしれませんよ」


カイリは、聖堂でのシャムを思い浮かべた。


カイリ

「そうは、どうしても思えないんです」


シャム

「…そうですか」


12時のチャイムが鳴る。

昼食の時間は、静寂に包まれていた。

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