七王国の起こり
ハカーマニシュ王国及びその属国には、次のような伝説が伝わる。
数百年前、ハカーマニシュ王国は外敵の侵攻により滅亡の危機に陥っていた。王国軍の敗北、王都スーサの陥落、そして国王をはじめとする王族の壊滅。ハカーマニシュ王国は恐ろしくそして邪悪な王によって支配されることとなった。
蛇王ザッハーク。身の丈2ザル(約2メートル)を超える筋骨隆々とした体つきに、残忍な顔。優れた指揮官であるとともに、一人の戦士としても優秀だった。だが、何よりも恐ろしいのはその両肩から生える2匹の蛇だった。この蛇たちは人間の脳をその糧とした。また、蛇王配下の蛇頭人身の怪物たちも人間や動物を生きたままに喰らった。毎日、罪のない男女が苦痛のうちに殺されていった。まさに地獄のような時代だった。
だがそんな中、微かな希望となる噂が流れてきた。殺された国王の娘ファルナーズ姫が北方の騎馬の民サカ族の下に落ち延び、若き指導者イーラジに保護されているというのだ。さらに生き残った大貴族マウソロスが反乱軍を組織し、各地で蛇王軍を打ち破った。やがてファルナーズ姫はマウソロス軍に合流し、人間たちは彼女をハカーマニシュ王国復活の象徴として団結した。そして遂にパライタケネの地での一大決戦でイーラジがザッハークを倒し、蛇王軍は敗走した。
「パライタケネの会戦」の後、王都に入ったファルナーズ姫は戴冠式を行った。勝利の立役者マウソロスがその夫にして共同統治者となり、ファルナーズ姫とともに即位した。ファルナーズ姫はサカ族の英雄イーラジと愛し合っていたが、唯一生き残った王族としての役割を自覚し、マウソロスとの結婚を選んだのだという。
一連の戦いと蛇王の圧政により大きな被害を受けたハカーマニシュ王国だったが、優れた政治家であるマウソロス王の下、国力を回復させていった。その一環として、蛇王ザッハークとの戦いで活躍した英雄たちには新たな任務が与えられた。辺境の開拓あるいはザッハークにより権力が空白となった地への進出である。彼らには平定した地の王位を与えた。これは英雄たちへの褒美であるとともに、平時においては不安要因となりうる英雄や軍人たちを隔離するという意味もあった。ハカーマニシュ王国にとっては、直接支配をしては広大すぎる土地を属国を介して間接的に統治することで効率よく領土を広げ、また国土防衛に用いることができるという利点もあった。これら属国は軍役とともに、賦役や納税の義務も課せられていた。ハカーマニシュ本国との差は成立当初から明確であった。
こうして、サカ族の英雄イーラジはパルティア、勇者ロスタムはハマト、マウソロスの股肱の臣にして名将の誉れ高いダーリューシュはアレイヴァ、マウソロスの異母兄オロントバテスはカリアの王に封ぜられた。後にカリアとパルティアの国力が特に強くなったため、カリアからダルダニアを独立させ、騎馬の民ヒュルカン族を支援してヒュルカニアを建国させてパルティアの対抗馬とし、その弱体化を図った。このようにして成立した七王国体制はハカーマニシュの繁栄の礎となった。
そして今、一部において歴史が繰り返されようとしていた。だが全てが繰り返される訳ではない。これから先どのような動きが起こるかは、神ならぬ人の身では、誰一人として知るよしもないのであった。




