表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/121

第71話 深海航路

 翌朝。


 マレフィス王国、第一海軍港。


「……大きい」


 ヒオリが呆然と呟く。


 目の前には、巨大な白蒼色の魔導船が停泊していた。


 流線型船体。


 水晶帆。


 側面へ刻まれた古代海洋術式。


 そして。


 船体全域を流れる、淡い蒼光。


「これが……」


王国第一級深海巡航艦ルミナス・アークです」


 セレスティアが静かに説明する。


「深海観測用に作られた特殊艦ですね」


「戦艦っていうより神殿みたい……」


「実際、半分神殿です」


 セオドアが食い気味に反応した。


「この術式構造、古代海洋文明式じゃないですか!?」


「よく分かりましたね」


「いや見れば分かりますよ!?」


 完全に研究者モードだった。


◇◇◇


 港は慌ただしかった。


「深海圧対策術式、再確認!」


「第三区画封鎖!」


「海霊石搬入急げ!!」


 海兵達が忙しなく動く。


 その空気は、完全に“戦場前”だった。


「そんな危険なの?」


 ヒオリが少し不安そうに呟く。


 すると。


 セレスティアが静かに頷く。


「深海領域は、普通のダンジョンとは別物です」


「海洋魔力圏は常時変動型」


「さらに今回は、“門”が反応しています」


 海青の瞳が遠い海を見る。


「正直、何が起きるか分かりません」


 その時だった。


「ヒオリ様ー!」


 元気な声。


 振り返ると、小さな港町少女達が駆け寄ってくる。


「これあげる!!」


「お守り!」


「深海行くなら必要だよ!」


 差し出されたのは、青い貝殻紐。


 星みたいに光っている。


「……可愛い」


「“星貝”だって!」


「帰ってこれるようにって!」


 ヒオリは少し目を丸くして。


 そして。


 優しく笑った。


「ありがとう」


 その瞬間。


 少女達が一斉に顔を赤くする。


「うわぁ……」


「やっぱり蒼星様可愛い……」


「本当に星みたい……」


 ヒオリが困ったように笑う。


 すると。


 後ろからペケが静かに現れる。


「準備は終わった」


「あ、ぺけ」


 その瞬間。


 少女達がさらにざわついた。


「銀髪だ……!」


「灰銀の王子……」


「え、並ぶとやば……」


 完全に見世物だった。


 ヒオリが少し照れる。


「……見られてる」


「諦めろ」


 即答だった。


◇◇◇


 その頃。


 艦内後部甲板。


 リツは海を眺めながら、小さく歌っていた。


 静かな旋律。


 波へ溶けるような歌。


 だが。


 その瞬間だった。


 海面が、“揺れた”。


「……?」


 リツが歌を止める。


 すると。


 船下深海側から、“歌い返す声”が聞こえた。


『――還して』


「っ!?」


 リツが一気に立ち上がる。


 今の声。


 間違いなく“返ってきた”。


「……何だよ今の」


 その時。


 後方からセレスティアが現れる。


「……聞こえましたか」


「セレス?」


 海王姫の表情は重かった。


「やはり始まっています」


「何が」


 海風が吹く。


 その向こう。


 遥か沖合。


 海面下で、“巨大な影”が動いていた。


「深海は、“歌”へ反応するんです」


「……は?」


「正確には、“星霊波長”ですね」


 セレスティアが静かに言う。


「リツさんの歌は、何故かそれに近い」


 リツが眉を寄せる。


「意味分かんねぇぞ」


「私もです」


 だが。


 セレスティアの瞳は真剣だった。


「でも、“海”があなたへ反応している」


 その瞬間。


 海底側から、再び“歌声”が響く。


『見つけた』


 低い。


 でも。


 どこか嬉しそうな声。


 そして。


 船全体が、大きく揺れた。


「っ!?」


「何だ!?」


 海兵達がざわめく。


 次の瞬間。


 深海側から、“巨大な蒼い瞳”が一瞬だけ姿を現した。


 それは。


 船より遥かに巨大だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ