表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/121

第58話 星の終わり、願いの先

 最後の光。


 蒼銀。


 灰銀。


 そして。


 歴代封星巫女たちの願い。


 その全てが、一つの刃へ重なっていた。


「――終わらせる」


「――もう誰も泣かせない」


 次の瞬間。


 星灰剣が、“黒い星”を完全に貫いた。


 ――轟。


 世界が、止まる。


『――――――――』


 声にならない絶叫。


 原初の黄金眼が大きく見開かれる。


 黒い星へ、無数の亀裂が走った。


 ドクン。


 ドクン。


 脈動が崩れる。


 そして。


 星喰いの巨大な身体そのものが、崩壊を始めた。


『やめろ』


 低い声。


 だが。


 そこにはもう、圧倒的な恐怖しかなかった。


『我は終わらぬ』


『何度でも蘇る』


「終わるよ」


 ヒオリが静かに言う。


 蒼い瞳が揺れる。


「もう、誰も一人にしないから」


 その瞬間。


 歴代封星巫女たちの光が、一斉に輝いた。


『ありがとう』


『やっと終われる』


『やっと、眠れる』


 涙みたいな声。


 ヒオリの瞳から、静かに涙が零れる。


「……うん」


 小さく頷く。


「おやすみ」


 その瞬間。


 黒い星が、完全に砕け散った。


 轟ォォォォォォォン――!!


 第四層全域へ、蒼銀の光が広がる。


 黒霧が消えていく。


 空間断裂が閉じていく。


 巨大な門が崩壊する。


『ぁ……』


 原初の黄金眼が揺れる。


『何故だ』


『何故、お前たちは』


 ペケが静かに前へ出た。


 灰銀魔力が静かに揺れる。


「決まってる」


 灰銀の瞳が細まる。


「俺たちは、お前みたいに諦めなかった」


 その瞬間。


 原初の黄金眼へ、最後の亀裂が走る。


『――――』


 声が消えていく。


 巨大な存在そのものが、崩れていく。


 そして。


 最後に。


 星喰いは、ほんの少しだけ寂しそうに笑った。


『……そうか』


 次の瞬間。


 原初の黄金眼が、完全に消滅した。


◇◇◇


 静寂。


 第四層を覆っていた黒霧は、もうない。


 代わりに。


 柔らかな星光だけが降っていた。


「……終わった?」


 レートが呆然と呟く。


 誰もすぐには答えられない。


 すると。


 フィアが静かに笑った。


『ええ』


 白銀髪の少女。


 その身体は、少しずつ透け始めていた。


「フィア!」


 ヒオリが駆け寄る。


 だが。


 フィアは優しく首を振った。


『大丈夫』


『わたしたちは、やっと解放されたから』


 その瞬間。


 歴代封星巫女たちの残滓が、一斉に空へ昇っていく。


 星みたいに。


 美しく。


 儚く。


「……」


 ヒオリの瞳から涙が零れる。


 すると。


 フィアが、そっと彼女の頬へ触れた。


『ありがとう』


 蒼い瞳が、今度はペケを見る。


『灰銀』


 ペケは静かに彼女を見る。


『今度は』


 フィアが、小さく笑った。


『一人じゃなくて、良かったね』


 その瞬間。


 ペケの瞳が、ほんの少しだけ揺れた。


 そして。


 彼は静かに答える。


「……ああ」


 短い返事。


 でも。


 今までで一番、柔らかい声だった。


 フィアは満足そうに微笑む。


 そして。


『幸せになって』


 最後の言葉を残し。


 白銀髪の少女は、星光となって消えていった。


◇◇◇


 崩壊しかけていた第四層。


 だが。


 黒霧が消えたことで、空間は少しずつ安定を取り戻していた。


「……帰れる、のか?」


 レートが呟く。


「どうにか、な」


 ガルドが深く息を吐く。


 北方軍総司令ですら、疲弊していた。


「まさか本当に、黒冠を止めるとは……」


 その時だった。


 ヒオリの身体が、ふらりと揺れる。


「っ……」


「ヒオリ!」


 ペケが即座に支える。


 蒼銀魔力が消耗しすぎている。


 第二位階。


 さらにその先まで踏み込んだ反動。


 意識が霞む。


「……ぺけ」


「喋るな」


 低い声。


 でも。


 その手は、とても優しかった。


 ヒオリは少しだけ笑う。


「……終わったね」


「ああ」


「みんな、助けられたかな」


 数秒の沈黙。


 そして。


 ペケは静かに答えた。


「助けた」


 灰銀の瞳が細まる。


「お前が」


 その言葉を聞いた瞬間。


 ヒオリの瞼が、ゆっくり閉じる。


「ヒオリ!?」


 ペケが彼女を抱き寄せる。


 だが。


 呼吸はある。


 ただ、限界だった。


 眠るように意識を失ったヒオリを見て。


 ペケは静かに息を吐く。


 そして。


 彼は誰にも見えないくらい小さく、ヒオリの髪へ触れた。


「……馬鹿」


 掠れた声。


 でも。


 その灰銀の瞳は、どこまでも優しかった。


 黒冠の奈落。


 世界を揺るがした災厄は、今ここに終わりを迎えた。


 だが。


 誰もまだ知らない。


 この戦いが。


 大陸全土を巻き込む“始まり”になることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ