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第55話 星解

 蒼銀の光が走る。


 第四層を貫き。


 門の奥。


 “黒い星”――星喰いの心臓へ一直線に突き刺さった。


『――――!!』


 絶叫。


 今までで最も激しい咆哮が、黒冠全域を揺らした。


 轟音。


 黒い星が激しく脈動する。


「効いてる……!」


 セレスティアが息を呑む。


 だが。


 次の瞬間。


 黒い星から、無数の鎖が噴き出した。


「っ!?」


 ヒオリの身体へ向かって一直線に伸びてくる。


『返せ』


 星喰いの声。


『その力は我のものだ』


 避けられない。


 その時だった。


「させるか」


 灰銀の光。


 ペケが前へ出る。


 ――斬。


 一閃。


 無数の黒鎖が空中で断ち切られる。


 だが。


 鎖は止まらない。


 切っても切っても再生していく。


「無限再生……!?」


 セオドアが顔色を変える。


「核から直接生成されてる!」


『灰銀』


 星喰いの黄金眼が細まる。


『また邪魔をするか』


「当然だ」


 低い声。


 ペケは静かに剣を構える。


 その灰銀魔力は、既に第四層全域を侵食するほど膨れ上がっていた。


 だが。


 黒には染まっていない。


 ヒオリが隣にいるから。


「ぺけ」


 ヒオリが小さく呼ぶ。


 すると。


 ペケは一瞬だけ彼女を見る。


「……行け」


「え?」


「心臓を壊すのは、お前の役目だ」


 灰銀の瞳が細まる。


「ここは俺が止める」


 その瞬間。


 ヒオリの胸が強く痛んだ。


 分かる。


 この人はまた、一人で全部背負おうとしている。


「嫌」


 即答だった。


 ペケが目を瞬かせる。


「……ヒオリ」


「一人にしないって言った」


 蒼い瞳が真っ直ぐ彼を見る。


「ぺけも、私を置いていかないで」


 静寂。


 その瞬間。


 灰銀魔力が、少しだけ柔らかく揺れた。


「……参るな」


 掠れた声。


「お前、本当に頑固だ」


「ぺけほどじゃない」


 ヒオリが少しだけ笑う。


 すると。


 ペケも、本当に僅かに笑った。


◇◇◇


『……気に入らない』


 黄金眼の少女が静かに呟く。


 黒翼が揺れる。


『どうして』


『どうして今代だけ、そんな風に並べるの』


 その声は、怒りより。


 寂しさに近かった。


 ヒオリは少女を見る。


「……あなたも、一人だったの?」


 少女の瞳が揺れた。


『……』


「ずっと苦しかったんだよね」


 蒼い声。


 優しい声。


 その瞬間。


 少女の黄金眼から、一筋だけ涙が零れた。


『……やめて』


 掠れた声。


『そんな顔で、わたしを見ないで』


 黒霧が暴走する。


 第四層がさらに崩壊した。


『わたしは失敗作!!』


 少女が叫ぶ。


『誰にも救えない!!』


「違う!!」


 ヒオリも叫ぶ。


 蒼銀の光が広がる。


「あなたは、失敗なんかじゃない!」


『っ――!!』


「ずっと一人で耐えてきたんでしょ!?」


 少女の瞳が大きく揺れる。


 その瞬間。


 黒い星が脈動した。


 ドクン。


 第四層全域へ、巨大な闇が広がる。


『黙れ』


 星喰いの声が低く響く。


『器風情が』


 次の瞬間。


 黄金眼の少女の身体へ、黒鎖が巻き付いた。


「っ!!」


 少女が苦しそうに顔を歪める。


『や、め……』


『嫌……!!』


 星喰いが少女を取り込もうとしていた。


「まずい!!」


 フィアが叫ぶ。


『核が、“器”を再吸収する!!』


 その瞬間。


 ペケの灰銀魔力が爆発した。


「触るな」


 低い声。


 空気が凍る。


 灰銀の瞳が、静かに燃えていた。


「もう誰も」


 剣が、星光を纏う。


「奪わせない」


 次の瞬間。


 ペケが踏み込む。


 蒼銀と灰銀。


 二つの光が螺旋を描き。


 巨大な“星灰剣”へ変わる。


「ヒオリ!」


「うん!!」


 二人は同時に、黒い星へ向かって跳んだ。


 その瞬間。


 星喰いの巨大な口が、ゆっくり開く。


 そして。


 門の奥。


 さらに深い闇の中で。


 “もう一つの黄金眼”が、静かに開いた。

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